第20話「姫様はチャーハンでマウントを取る様です」
「ほら、タブレットを置け。残りのおにぎりを食うぞ」
「あっ……、そ、そうだな!!冷めてしまうものな!!」
『5分でわかる!かんたんごはん炊飯~中級者編~』 が終わった後も、ルートルインは固まったままだ。
このままって訳にもいかないので、感情が振り切れ過ぎてフリーズしているお姫様の前におにぎりを持って行って現実に戻す。
残っているのはチャーハンとオムライス。
さて、どんな反応をしてくれるか楽しみだ。
「香ばしい香りだ。炒飯、名前はそのままだが、どれ……、はむ」
「へぇ、少し崩れやすいな。指で摘まんで食うとこんな感じか」
「ん、これも甘いのか!?油との相性もいいのだな、ご飯は!!」
コンビニ炒飯は油感が強めで、好き嫌いが分かれると思うが……、ルートルイン的には好評っぽい。
久々に食ったけど卵がいい感じで、俺的にもそれなりに満足。
「油と米、そして卵。系統の違う甘味が押し寄せてくる。ネギやお肉の塩味も良いアクセントだ」
「好評で何よりだぜ。向こうの世界でも作れるだろうし」
「うむ、醤油が無くとも香辛料ベースの塩味で十分に美味しいだろう。カニなどの魚介を具にするという手もある」
「……カニ?」
「広めの皿に盛り、とろみの付いた餡を掛けるのも良いかもしれぬ。本当に夢が広がる、凄いぞ!!」
餡掛けカニ炒飯 ~王宮風~ だと……?
ちくしょう、文明力で殴ったら、財力で殴り返してきやがった。
この姫様、強い。
「炒飯は手軽に作れる庶民の食事だ。王族とは合わないんじゃないか?」
「そんなことは無かろう。具材を盛ることで、どこまでも豪華にできるからな」
「……例えば?」
「国産最高級牛のソテーとか、ロブスターのほぐし身、秋シャケ、焼きマツタケ、私が願って揃わぬ食材はない!!」
どうやら、食材の豪華さでマウントを取れる事に気が付いたらしい。
くっ、悪かったな、198円のチャーハンおにぎりで満足できる安い舌で!!
「さて、最後はオムライスだが……」
「ケチャップは食べ慣れているんだったか?」
「週に7~10回はトマト味の料理が出てくる。私の国の定番だ」
7日×3食=21回。
半分くらいがトマト料理なら、そりゃ、慣れもするか。
必然的にオムライスに対する期待と評価も厳しいものになるだろうが……、反応は?
「はむっ。ん……」
「どうだ?」
「んっ、んっ……、これはダメだな」
「!」
「そっちの3分の2も私が食べるから、イナトは手を付けてはダメだぞ!!」
「……。うるせっ、3分の1は俺のだろうが!!はぐっ」
「うわーーっ!!私のオムライスがーー!!」
ルートルインが手元に引き寄せた皿から、オムライスを強奪。
文句を言われる前に口の中に叩き込み、う?想像してた味と違う。
美味いな、これ!?
「なんだこれ……、ホワイトクリーム入り、だと……?」
「煮込んだミルクと酸味の利いたトマトソースが、甘い米と卵を包み込んだ。こんな濃厚な食事はそうそう無いぞ」
「あぁ、濃いな。びっくりするほど味が濃いから、もう一口食いたくなる」
「!? ふっ、例え保護者であるイナトでも、オムライスおにぎりは譲れないのだ!!はむぅ!」
「うわーー、俺のオムライスがーー」
そう言って、大慌てでオムライスを口に放り込むルートルイン。
いや、いいんだけどな。
先に強奪したの俺だし?全然悔しくないし?
……まだ売ってたよな?
後でこっそり買いに行こう。




