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第1話 「家に帰ったら幼女がいた」


『未成年者誘拐罪、及び、略取罪』

 日本の刑法第224条に記載されている、未成年者を生活環境から不法に離脱させ、自分や第三者の支配下に置く行為。

 3か月以上7年以下の懲役とかググると出てくるが、よく調べると余罪によっては無期懲役にすら発展するトンデモネェ大犯罪だ。

 ……で、俺は今、それに抵触するかもしれない危機に陥っている。



「えーと?なぜ??俺のベッドに座っている???」

「理解しがたい状況なのは分かっている。まずは私の弁明と謝罪、それと、これからについて建設的な意見を交わしたいと思っているぞ!」



 1LDKのマンションに帰宅すると、信じられないものが居た。

 ……見知らぬ、ロリ。

 当然、妹でもなければ、母さんでもない。

 完全に見ず知らずの女の子であるその子は、あろうことか俺のベッドに座って、上目遣いでこちらを見ている。


 まず、目についたのは、金と銀が混じった様なプラチナブロンドの長い髪。

 立ち上がれば腰ぐらいになるか?

 日本じゃあまり見ない長さの髪だが……、そんなことが霞むくらいに問題が山積みだ。


 彼女の外見は小学校高学年、10~12歳程度。

 ぱっちりした目に、自信がありげな眉、無邪気に微笑む口、輪郭は日本人っぽい丸めだが、鼻立ちとかは外人と言われれば納得する感じ。

 日本人が描いた漫画やアニメの外人ロリキャラクター、そんな評価がしっくりくる可愛らしい顔立ちだ。


 ……で、なぜかドレスを着ていらっしゃる。

 それも見事でゴージャスな感じのガチドレス。

 高級ドールが着ているような煌びやかな感じ、色は薄いピンク。

 あ、宝石とかも付いてる。髪飾り一つでウン百万とかしそう。


 そんな幼女が、俺のベッドに座っている。

 なぜか。

 全く身に覚えがないが。

 会社から帰宅したら居た。なぜだ??



「弁明と謝罪?」

「うむ!なぜベッドに座っているのかという疑問については、座り心地が良いからだ。床は冷たいぞ」


「部屋にいる理由は?」

「それについては今から説明するが……、怒らないで聞いてくれると嬉しい。場合によっては、返し切れぬ損失を出している可能性がある」



 なるほど、この子は几帳面な性格の秀才タイプ。

 冴えない成人男性を相手に気遣うような口調でしゃべる、礼儀正しい子らしい。



「結論から言うと、私がここに居るのは魔法の効果によるものだ」

「……。続きを聞こう」


「おそらくだが、この世界には魔法技術が無い、もしくは、貴族に独占されているなどの限定的な使用しかできない。違うか?」

「ソウダネ、魔法とかファンタジーの産物だ」



 帽子から鳩を飛び出させ、『イッツ ア イリュージョーン!』とかいうマジシャンは存在す……、してるかな?

 そんなコッテコテな奴は絶滅している気もする。

 じゃなくて、魔法ってなんだよ。

 俺が知ってるのは、豚箱にぶち込まれる刑法だけだ。



「ふむ、こちらには魔法という概念は無い、そういう認識で良いだろうか?」

「ねぇよ魔法なんて。機械文明100%」


「魔法という言葉があるようだが?」

「ファンタジー、空想上にはあるんだよ。火を出すとか、傷を治すとか、ドラゴンを召喚するとかな」


「絵空事か。なるほど、なるほど、異世界という概念については?」

「あーそれは……、広義で言えばあるかもな。天国や地獄があるならそうだろうし、文化の違う外国も異世界と言えなくもない」



 そういう意味じゃ、刑務所も異世界だな?

 今までの常識が通用しないし、簡単には戻って来られない。



「――理解したぞ。そちらが空想としている魔法と私達が魔法と呼んでいる現象は一致している。無論、細部は異なるが」

「ってことは、魔法がある世界から転移してきたって事で良いのか?」



 Q、魔法について答えよ。

 A、自然現象、もしくは、超常的な現象を人の意志によって引き起こす行為。


 Q、魔法はどのような場面で使用するか?

 A、人によって異なる。魔法は理論が解明されていて誰でも使える『汎用』と、個人が一つだけ持つ『個別』がある。


 Q、汎用魔法とは?

 A、おおよそ、空気中で発生する現象を任意で起こす行為。火、水、風、光の生成など。


 Q、個別魔法とは?

 A、それこそ千差万別だ。個別魔法を人は必ず一つ持つが、それが汎用魔法と同じ属性生成魔法である場合も多い。私のような、とてつもなくレアな魔法を持っている者もいる。


 こんな感じの質問を交わした結果、どうやら、この子は魔法がある世界からやって来たらしい。

 最近じゃ、日本に来る異世界転生モノもそれなりに流行っているが……?



「じゃあ、魔法によってワープしてきたって事か?」

「あぁ、少しややこしいんだが、転移というより転生に近いぞ。初回は」


「初回?」

「この肉体は、こちらの世界の物質を用いて錬成されている。さっそく一つ目の損害の話になるんだが、この部屋の物品が幾つか消えているはずだ。具体的には私の体重32kg分」


「え”っ……?いや、消えているもんなんて」



 ……。

 …………。

 ………………明日捨てる予定だったゴミ袋が無いな?

 そういえば、なんか、棚に違和感が……、ガン●ムの頭がねぇ!?!?



「あー、消えてるわ、ずっと前に作ったプラモの頭」

「これか。こういうデザインの妖精の像かと思ったぞ」


「首無しガン●ムが群れを成して飛んでる妖精郷とか嫌すぎる。ジ●ングも足を生やして逃げ出すわ」



 それから部屋を検分。

 消えた物のリストはこちら。


 ・近日中に捨てる予定だったゴミ袋、3袋(可燃、衣服、生ごみ)。

 ・飾ってあったガン●ムの首と腰のパーツ。

 ・同じく飾ってあったフィギュアの服と土台。

 ・冷蔵庫の中にあった食品の大多数。

 ・買い置きのジュースの缶(アルミ缶のみ、中身のジュースは残っていた。段ボールと床がエライことになってた)



「申し訳ないが、それらを取り戻す手段はない。私の肉体になってしまったからな」

「それは、まぁ、良いけど……」


「いいのか?だが、無くなった物の解説はして欲しい。私のせいで失われた価値を知らぬで押し通すなど、王族として恥じる行いだ」



 俺の部屋にある貴重品と言ったら、せいぜいタブレットとパソコン、生活家電ぐらいだ。

 貴金属を贈る相手も、贈ってくれる相手もいねぇよ、ちくしょう。


 まぁ、それはいったん置いといて……、なんか罪悪感が凄い。

 キミの身体の成分、殆どゴミなんだけど。

 しかも、一人暮らしの成人男性が出したゴミだぞ。

 それを教えるのはセクハラどころか、凶悪犯罪と言っても過言ではない。



「基本的には捨てる予定だったものばかりだ。気にする必要はないよ」

「捨てる予定……ゴミって事か?」


「あっ」

「そうか、私の身体……、ゴミかぁ……」



 しまった!!

 見知らぬロリがガチヘコみしている!!

 頼む、通報は勘弁してくれ!!



「あっ、いや……、食品も含まれてるぞ!値段にして5万円くらい!?」

「5万、円?そうか、私の体の値段は5万円か……」



 やべぇ、軌道修正しようとしたら悪化した!!

 フォローのつもりがトンデモネェ意味に!?



「まぁ、考え方を変えれば良かったとも言える。私が出来る償いなど、たかが知れているからな。とりあえず5万円を目標値にしておこう」

「いや、払わなくていいって。というか、どうやってって話だし」



 この少女の話が本当ならば、5万円を支払って貰うのは無理だ。

 金を得るには働く必要がある。

 だが、10歳で働ける場所は無い、最低でも16歳にならないと不可能だ。


 魔法で金を生み出す?

 そんなことをしてみろ。

 刑務所転生しちまうぞ、俺が。



「なるほど、金銭を得るには仕事をするのが筋だ。だが、常識を知らぬ私にできる仕事など無いに等しい」

「法律で禁じられてるからな」


「そういう方向か。ならば非合法の仕事……、あなた専属の侍従メイドとして、なんでも言う事を聞くのはどうだ?」



 何でも言う事を聞くメイドになる、だとぉ……。


『未成年者誘拐罪、及び、略取罪』

 日本の刑法第224条に記載されている、未成年者を生活環境から不法に離脱させ、自分や第三者の支配下に置く行為。

 3か月以上7年以下の懲役とかググると出てくるが、よく調べると余罪によっては無期懲役にすら発展するトンデモネェ大犯罪だ。



「却下で」

「えーー」


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