第18話 「姫様は文明格差を思い知る様です」
「残るは焼きおにぎり、チャーハン、オムライス。こいつらは温めた方が美味いな。ちょっと待ってろ」
一人暮らしの最大の相棒、その名は電子レンジ。
冷え切った孤独の中で一時の温もりを与えてくれる、無くてはならない存在だ。
そんな文明の利器をルートルインが興味深そうに眺めている。
「イナト。これはなんだ?」
「食品を温める機械だ。あ、使い方は後で教えてやるから、それまで触るんじゃないぞ」
「心得たのだ」
「他の機械もだぞ。特に、今から言う奴は俺が居ない時には絶対に触るな。危ないから」
温める時間を使って、キッチンにある危険な調理器具を説明していく。
電子レンジ、ガスコンロ、給湯器、トースターなどの熱関係の家電。
包丁、カミソリ、洗剤、の刃物薬品系。
あと、パソコン、タブレットなどの電子系。
「殆どダメではないか!!」
「実演して見せただろ。火が出たり、指が切れる刃物が危ないのは言わなくても分かるだろ」
「そこは納得してるのだ。だが、こっちの面白そうな魔道具は?」
「タブレットか……。明日になったら教えてもいい。だが、ちゃんと俺の話を聞いて約束を守れるなら、だぞ」
「心得たのだ!!」
俺には二つの懸念がある。
一つ目は、ルートルインはガチの上流階級。
家事を全くしたことがないであろう姫に調理器具を触らせるのは怖すぎる。
もう一つは、ネット環境自体が怖すぎる。
俺のタブレットはゲームや動画専用。
電子決済は携帯でしているから、金銭的な不安はない。
だが……、インターネットは魔境だ。
やろうと思えば、いや、思わなくても広告からトンデモネェ場所に飛ばされることがある。
妹が高校生時代にはセーフティーを掛けてたが、関係ないサイトも検閲に引っかかったりが面倒で解除してある。
そんな状態で、この賢いルートルインを無制限でネットを泳がせるのは危険だ。
早急に、セキュリティーレベルをMAXにしなければならない。
「……ん?おい待て、面白そうな魔道具って言ったか?」
「言ったぞ」
「なぜこれが娯楽に使うものだと知っている?」
「配信を見る為の道具じゃないのか?私の国にあるのと形状が似ているぞ」
うわ、バレてーら。
パスワードを掛けるタイプのセキュリティが必須だな。
――ピロレロリーーン!!
「うわっ!?びっくりした!!」
「電子レンジは温め終わると鳴るんだよ、めんどくさいからおにぎり全部一気に切るぞ」
俺は温めたおにぎりのビニールの中に付く結露が苦手だ。
水浸しになって食感が悪くなるし、味も薄く感じる。
切る手間もあるし、三つとも皿に移して切り分けちまおう。
「ほう!いい匂いなのだ!!」
「あんまり時間を掛けるなよ。温め直した奴が冷めると不味くなるから」
「うむ、では三等分にして、イナトも一緒に食べよう」
仮に残りも半分こした場合、ルートルインはおにぎり4つ分に豚汁を食ったことになるが……、推定小学生ではここら辺が限界のはず。
2分の1から3分の1にして、残してあるおにぎりを食う余力を残す。
伊達に配信者してねぇな?堅実な判断だぜ。




