第17話 「姫様はMVPに詳しいようです」
「これが調理おにぎりとやらか……、イナトのおすすめはどれなのだ?」
ルートルインが選んだ調理おにぎりは4種類。
五目おにぎり、焼きおにぎり、チャーハン、オムライス。
それぞれ違う調理法の、炊き・焼き・炒め。
そして味が想像できるオムライスって所だろうな。
「俺は五目おにぎりかな。炊き込みご飯つって、最初から味付けした具材を米に混ぜて炊く」
「ふむ、リゾットとは違うのだな?」
「リゾットは水分多めだろ?炊き込みご飯はスープの旨味を米に閉じ込める料理だ」
「旨味の凝縮だと……。そんなの間違いないに決まっているではないか!!」
ここでオムライス推しから路線変更。
ルートルインの思惑に乗って、味が薄いものから勧めようと思う。
って言ったって、五目おにぎりもしっかりした味付けだ。
甘めの具材は白米おにぎりとは違う旨みがあるし、気分転換にも丁度いい。
「お米自体が茶色いな。どれ……、はむーーー?」
「あー、油揚げが」
「はむっ、まむっ……、んっ、んっ、んっ……」
伸びた油揚げを指で口に押し込みつつ、ゆっくり噛みしめる。
目をつぶって約一分、ルートルインの口の動きがようやく止まった。
「ふぅ。イナト」
「また甘すぎるとか言わないよな?」
「それ以前の話だ。ここまでしっかりと砂糖の甘味が分かる料理など初めて食べた。美味い・不味いを論じる前に、新しい」
「で、味は?」
「美味いに決まっておろう!!今日一番のMVPなのだーー!!」
なにっ……。
マヨを超えた、だと……!?
「まさしく神の発想だぞ!!甘い、確かに甘いっ!!だが、しょっぱさも旨味もある、新感覚なのだーー!!」
「MVPってことは唐揚げマヨよりも上って事か」
「単純な味の話なら甲乙つけがたい。だが、イナトも言っていたではないか、可能性が広がると」
「調理法を含めてってことか?」
「MVPには、『最も優れた者』と、『即時販売可能な水準の製品』という二つの意味があるのは知っているだろう?つまり、実現性を備えた優れた発想ということになる」
MVPにそんな意味がッ!?
凄いスポーツ選手ってだけじゃないのか!?
「そうだな?そういう観点じゃ間違いなくMVPだ??」
「だろう。そもそも炊飯が素晴らしい発想なのだが……、スープで炊くというのは、そのうち誰かが思いつくだろう。だが、砂糖はどうだ!?」
「そっちの世界だと、砂糖は菓子専用って感じか?」
「甘いパンを塩辛い料理に添える事はある。だが、煮込み料理を甘くするとは恐れ入ったぞ」
「砂糖の件は分かった。で、五目おにぎり自体の食レポは?」
「鶏肉、人参、椎茸……、単体で旨味が強い食材を調味料がまとめている。そして、それを米とこの黄色いのが吸っている!!」
「油揚げな」
「この油揚げがずるい!!噛んだ瞬間、全部の旨味を出すなんて卑怯だ!!」
興奮して話すルートルインの顔を見ていると、俺も五目おにぎりが食べたくなる。
なんだかんだ買う頻度が高い、俺定番の品なんだよ。




