第16話 「姫様は味噌に興味津々なようです」
「もう豚汁でいいや。これも美味いし」
ご機嫌伺いとしてミルクティーを差し出した俺には、豚汁しか残されていない。
今度から、飲み物は同じ種類を2本ずつ買おうと思う。
「味噌も気になるんだったか?」
「うむ。そうなのだが……、それが味噌か?」
「あー、無理か?」
「いや、香辛料をペーストにする文化は私の世界にもある。問題ない」
味噌は見た目に忌避感を抱かれやすい。
目の前で作るのは失敗だったかと思いつつ、さっさとお湯を注いでかき混ぜる。
「香りは良いな。豚肉、人参、大根、ジャガイモ……、具材も豊富なのだな!」
「熱いから気を付けろよ」
「心得たのだ。ふーふー、はふっ!!」
おぉ、スプーンを持つ姿が美しい。
流石は姫様、だが、スプーンを吹いて冷ますのはマナー違反じゃないのか?
「別にそれで良いんだが、そっちのマナーは日本とは違うんだな」
「吹き冷ましのことか?大人がやるのはマナー違反だが、私たちは推奨されているぞ」
「なんでだ?普通、子供にこそマナーを教えるだろ」
「そっちの方が微笑ましく見えるであろう?端的に言うと、映えるというやつだ」
何だこの姫様、配信者としての意識がプロ過ぎる。
つーか、リアクションが大きいのは狙ってやってるのかよ。
「しょっぱいな。だが……、一言では表せない複雑な味がする!」
「色んな出汁を混ぜてるだろうしな」
「昆布と茸、これは椎茸か?唐辛子に、魚の旨味もあるな」
「で、どうだ?味噌はあっちの世界でも受け入れられそうか?」
味噌はあるが流通していない。
だからこそ、根本的に味が嫌われている可能性がある。
ルートルインも慎重に吟味しているようで、スープだけを飲んだり、具材と一緒に食べたりして色々と試している。
スプーンが止まらないから、全く受け入れられないって事もないんだろうが……あ。完食。
「うーむ、疑問しかないな!!」
「疑問?」
「こんなに美味しい調味料が、なぜ、流通しない?絶対に国益を損ねているぞ!!」
国益と来たか。
マヨと味噌で文化侵略、あ、醤油も添えれば鉄壁の布陣だ。
「なんとしてでも確保したい。最優先事項に設定しておこう」
「そんなにか?」
「口が幸せになるほどの塩味と旨味だぞ。先に見つければ、お茶会で自慢しまくれるのだ!!」
「ミルクティーに続き、味噌にまで完堕ち」
「実際、味噌の用途は幅広いだろう?スープ、おにぎりの具、肉や野菜を炒めても美味しいのではないか?」
すげぇ、味噌の万能性を見抜いていやがる。
味噌汁、サバの味噌煮、味噌漬け肉、味噌ラーメン、ゴマ味噌ダレ、なんなら、生野菜に付けただけで美味い。
醤油と双対を成す日本の最強調味料、それが味噌だ。
「とても夢が広がるな!なんと楽しい世界なのだ、この日本は!!」
「だな。という事で次に行こうぜ。俺もそろそろ我慢の限界だし」
美味そうな食レポ+豚汁の食欲をそそる味と香りだぞ。
マジで失敗したな。
おにぎりも二つずつ買っておくべきだった。




