第11話 「姫様はご立腹なようです」
「ただいま、なのだー!!」
家に帰ったときの挨拶は「ただいま」、そしてそのまま手洗い・うがいをする。
そんな日本式マナーに速攻で適応するとか、流石に異世界慣れしてるだけのことはあるな。
買い物に出かけたことで、いくつか判明したことがある。
それは、ルートルイン用の生活雑貨不足。
外用のサンダルなんて俺用だからブカブカ、服だって着ているものしかない。
妹がいるせいで何が必要か分かるのは救いだが……、後でネット通販でまとめ買いしておこう。
「なぁ、ルートルイン。異世界に水道はあるのか?」
「……そういえば変だな。魔法の基本は変換だ。空気から水を生成する魔道具はあるが……、これはどうやって出しているのだ?」
「水が詰まった管が国中に張り巡らせてある。で、蛇口をひねると水が出る」
「ほう、光ファイバーケーブルのような物か。それを国中とか、びっくりな技術なのだ!!」
俺的には、光ファイバーケーブルが出てきたことがびっくりだよ。
察するに、光魔法を伝達するケーブルなんだろうけど……、なるほど、それで映像を配信してるんだな?
「テーブルの上に皿と箸、まな板と……、包丁はかなり切れるからな、触るなよ」
「心得たのだ」
「あと、給湯ポット。準備はこんなもんだな」
購入したのは、おにぎり8つと豚汁を2個。
ここは紅茶ミルクティーと、こぉおいお茶が1本ずつ。
そして、筆記用具一式……、合計2700円になります。
「食前の挨拶ってそっちでもするのか?」
「するぞ。いただきます、なーのだ!」
「よし。どれから行く?」
「ご飯の味そのものを確かめたい。一番手はシャケからだ!!」
既に待ちきれなくなっているルートルインが手を伸ばしたのは、何年たっても変わらぬ美味しさ、シャケおにぎり。
白米、シャケのほぐし身、そしてパリッパリの海苔という非常にシンプルな構成こそ、至高。
……それはそれとして、開け方が分からなくて、お姫様が途方に暮れている。
「……なんだこれは?」
「紐を下に引っ張って、右側、左側の順な。それで袋が取れるぞ」
「いや、そこは理解しているのだが……、なぁ、イナト?この裏の細かい文字は材料表示だな?」
「そうだぞ?」
「……ひっ、酷いのだ!!先に教えてくれたら、参考に出来たのに!!」
先に教えたらおにぎりを触りまくって、店と俺に迷惑が掛かるだろ。
子供のしでかしたことの責任は、こっち持ちだぞ。
「お前は賢いだろ。なら、材料を見ただけで味の想像ができるんじゃないか?」
「無論だ。なんなら、食べただけで食材を当てることも出来るぞ!!」
「じゃ、せっかくの異世界飯の感動が薄れるだろ。つべこべ言わず、前情報なしで楽しんどけ」
ふぅ、こんな感じの言い訳でどう……、成功したみたいだな。
ネズミに馬鹿にされた猫みてぇな顔しやがって。誰がドブネズミだ。
「下に引いて~~、右に引いて~~、左に引く!できたのだ!!」
てーってててー!って効果音が聞こえそうな満面の笑み。
138円のシャケおにぎりでここまで喜んでくれるとか、コスパ良いお姫様だぜ。
「海苔……、随分とバリバリしているな?私の知る海藻とは大違いだ」
「ほら、貸せ。半分こするんだろ?」
怪我でもされたら面倒なので、調理担当は俺がやる。
と言っても、包丁で切るだけの簡単なお仕事だ。
おにぎり一刀両断は地味に人生初経験だが、よし、成功だぜ。
「ほぉお!綺麗な粒でふわふわなのだ!!」
「よく噛んで食えよ。おにぎりは食感が命だぞ」
「そうなのか、では、いただきます!!」




