第10話 「姫様はおにぎりに夢中なようです」
「この唐揚げマヨとやらはなんだ?」
「唐揚げの説明からだよなぁ。っと、これだよ」
そういえばと思ってさっきのおにぎりセットを見てみると、そこにあったのは小さめのから揚げ。
衣がしっとりしているタイプで、味付けも甘めの奴だ。
「そもそも揚げ料理ってあるのか?」
「上げ?知らぬぞ」
「揚げ物もなしっと、こりゃ、夢が広がるな」
米の炊飯が与える影響は限定的だが、揚げ物が無いとなると、一気に料理の種類が減る。
唐揚げにポテトフライ、ドーナッツ、スナック菓子の大半も揚げ料理に近い。
作り方も簡単だし、揚げ物を異世界で再現できたら神様扱いされると思う。
「揚げ料理ってのは、温めた油に食材を入れる調理法だ。食感がさくっ!てしてて美味い」
「パンみたいな感じか?」
「似てるというか、パンを材料に使うが……、揚げた料理にソースを絡めると食感が変わったりもする。この唐揚げマヨはオススメだぞ、無難に美味いし、子供にも人気だし」
「ならば最優先に設定しておこう!あ、ここから下は見えるから降ろしてくれていいのだ」
ふぅ。
こう言っちゃあれだが、お姫様って結構、重いんだな。
軽々しく抱き上げた天罰が下ったかもしれん。腰が痛い。
「色付きのお米もあるのだな。茶色はともかく、ピンク?」
「炊き込みご飯と赤飯な。具や出汁と一緒に炊いて味を付ける」
「なるほど、そして、こっちがおかず付きのセットメニューと」
「めんどくさい時とか便利で良いぞ」
「うむ、今は無しだ。私は色んなおにぎりを食べたいぞ!」
そういって真剣に棚を見つめ、おにぎりを選ぶルートルイン。
時間が掛かりそうだし、付け合わせでも買っておこう。
「なぁ、飲み物は何がいい。紅茶とかか?」
「紅茶があるならそれで。本当に何でも売っているのだな」
お茶会をやるなら紅茶は知ってると思ったが、大正解。
今はおにぎりに夢中らしく、適当に選んでくれって態度に滲み出ていらっしゃる。
よし、『ここは紅茶』のミルクティーにしよう。
知っているから余裕という甘ーい考えを塗りつぶしてやるぜ。
「イナト、この『大葉唐辛子みそ』はどう思う?」
「やめとけ、それめっちゃ辛いぞ」
「だよな……、でも、みそ味のはこれしかないのだ」
どうやら、自分の世界にある味噌を試しておきたいらしい。
だが、そのおにぎりはガチで辛い。
多分、巻き添えを食らった味噌を嫌いになると思う。
「味噌を試したいのなら、ほれ、豚汁。スープもあった方が良いだろ」
「……これのどこが汁なのだ?」
「お湯を入れて自分で作るんだよ。レトルト食品ってのはそういうもんだ」
「おおこれが。是非とも食べてみたいのだ!!」
夕食の一品目は豚汁に決定。
籠に二つ入れて、後はおにぎりを選ぶだけ。
「決まったか?」
「うぅむ……。イナト、ちょっと相談がある」
何事かと思って振り返ると……、そこにいたのは上目遣いのお姫様。
キラキラしている目には、真剣な決意が宿っている。
「相談?」
「あの、その……、選んだおにぎりを……、半分こにして欲しいのだ」
……。
………。
……………おにぎりのシェアとか初めて聞いた。
「あまり良いマナーじゃないのは分かっている。だが、配膳前に切り分けるならケーキと同じであろう!?」
「要するに、色んな種類を食べ比べしたいから、俺にも付き合えと?」
「だってこんなにあるのだぞ!?全部、味が違うなんてズルいのだーー!!」
なんだその、切羽詰まった表情は。
暴漢に出会ってしまったお姫様みてぇな顔しやがって……、誰が暴漢だよ。
「俺に食えないものは無いから、好きに選べ」
「いいのか!?」
「こんな所でケチるなら初めから連れてきたりしない。あ、一応言っておくけど、全部は無しだからな」
「勿論なのだ!!」
コンビニおにぎりなら5個は食えるし、余ったら明日の朝飯にすればいい。
最初から出し惜しみするなんて、俺の趣味じゃないしな。
「じゃあ、これと、これと、これと……!」
ルートルインの指示に従い、おにぎりをカゴに入れていく。
それなりな会計金額になったが、喜んでくれるなら安いもんだぜ。
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