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狼騎士団長をモフりたい!〜モフモフ大好きなのに動物がいない異世界に召喚されました〜  作者: 咲田陽


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9. 魔物


「あの、あそこの……生きてる子に浄化の魔力を流し込んだらどうなりますか?」

 私が聞いたら、一度室内が静かになった。


「そうか、そこのポイズンマウスも見たんだね」

 そう言ってヴィクトルは壁際まで歩いて行く。


「分からないから、やってみようか」

 ポイズンマウスの入ったケージを手に、ヴィクトルが帰ってくる。


「チュ?ヂュッ!ヂーッ!」

 ケージを動かされ、ガタガタと中から暴れている音が聞こえた。


 ことりと、ヴィクトルが私の前にケージを置く。


「蓋は危険だから開けない。このケージ越しにやってくれるか」

「分かりました」


 頷いて、ケージに手をつけた。

 中にいるポイズンマウスが、一層激しく暴れる。


 一度深呼吸をした後、覚悟を決めると、私は目を閉じて、お願い、正気に戻って!という願いも込めて、魔力を注ぎ込んだ。ケージが、ガタリと揺れた。


 数秒後、そっと目を開けると、そこにはプルプルと角に身体を丸めて縮こまっているポイズンマウスがいた。

 相変わらず背中の3つの目は健在だが、その目が見ている方向は統一されている。また全身に浮き出ていた血管が見えなくなっている。


「成功した……?」

 私は安堵に目を閉じ、胸を撫で下ろした。


「良かった〜!あなたもお疲れ様」

 そう言って指をケージ越しにポイズンマウスに向かって伸ばす。

 その指目掛けて、ポイズンマウスが飛びかかってきた。

 噛みつこうと、ガチガチ小さな牙を鳴らして威嚇している。


「きゃあ!」

「大丈夫!?」

 ヴィクトルが慌ててケージを私から離した。中身をまじまじと観察しながら、再び壁際に持っていく。


 残されて呆然としている私に向かって、マリスがフン!と鼻から息を吐いた。


「あなたバカ?魔物に手を伸ばしたら襲ってくるに決まってるじゃないの」

 私は数度瞬きした。


 ふと脳内でヴィクトルの言葉が蘇る。

 

――例え魔物の理性を取り戻せたとしても、魔物は、君の言う“どうぶつ”みたいに、人には懐かない――……


「本当だ……動物と魔物、全然違うや」


 目からじんわり浮かんできた涙を隠すように私はそっと自分の顔を覆った。


 ――――――



 ヴィクトルが私が何をできるのかを確認したあと。

 ギルバートへの報告や色々な申請等をやってくれたらしい。


 ありがたいことに、私は魔術研究所の職員として働くことになった。

 あれだけ嬉々として準備していたくせに、いざ働く当日となったときに、ヴィクトルが「本当に仕事して大丈夫か……?その、メンタルケアとか」と声をひそめて言ってきたときには思わず笑ってしまいそうになった。

 

「異世界に来てしまったことはショックなままですが、元々社畜なので、何か仕事していた方があれこれ考えずに済むので大丈夫です」

 そう言うと、ヴィクトルは「シャチク?」と首を傾げていた。

 ないのね、社畜って言葉。まあ畜産業がないなら当然なのかもしれない。


「いえ、なんでもありません。お世話になる以上、頑張って働くのでよろしくお願いします!」

 私は頭を下げた。


 この職場で唯一心配事があるとしたら、今も睨んでくるマリスの存在なのだが……過去にも他の女性社員から謎の敵視をされたことあるし、耐えられるだろう。


 それに、マリスはマリスで私を睨む理由は十分すぎるくらいにあるのだ。

 私のせいではないのだが、ヴィクトルが身寄りのない私の身柄引き受け人になった以上、色々世話を焼いてくれたからである。

 

 今の私が使っている、私室として当てがわれた部屋はヴィクトルの私室の隣だし、服や生活に必要な物一式はヴィクトルが用意してくれたものだ。

 また私はまだお金をもらっていないので、ご飯も毎回ヴィクトルに奢ってもらって一緒に食べている。


 いくらお互いに下心はありません、といえども、ここまで世話を焼かれていると、嫉妬されるのも仕方ないと思う。


 早く給料もらって独り立ちできるように頑張りますんで!すみません!と突き刺さるマリスの視線に、脳内で返事する。


 もう異世界に召喚されてから、約1週間。そして働きだしてから5日経つ。その為、既に私の1日のルーティンのようなものができていた。

 今日も、私は魔術研究所の自分のデスクに山積みになっている、目の前の薬草を掴み、大きめの籠にバサバサ入れると、マリスの視線から逃げるようにそそくさと部屋を移動した。


「ヴィクトル、今日もポーション作ります」

「了解、大丈夫だと思うけど、魔力切れには十分気をつけてね」

「はい!」


 途中、所長室に寄り、今日の行動を報告してから、私は自分用に当てがわれた椅子に座る。

 

 目の前には大きな鍋。

 ここに薬草を入れて、魔力を注ぎながら煮ればポーションの完成だ。

 やってることは聖女よりも、魔女のイメージに近いけど、このポーションが戦場にいる人たちにとって、どれだけ役に立つか想像に難くないので、ここに働き出してからはほぼ毎日ポーション作りに勤しんでいる。


 私が1日に作れるポーションの量は、100〜120本程度。

 もう少し慣れてきたら、もっと増やせる気がする。

 他の浄化魔力の持ち主たちは、1日5本も作れたら良い方なんだそう。

 これはそもそも体内に保有している浄化の魔力の量による差らしい。


 初日、ヴィクトルに見守られながら作ったポーションは約70本で、それでもヴィクトルが唸るように感心していた理由が、この私の作れる量の多さだった。

 魔力の出力の加減もよくわかっていなかった私は、ヴィクトルが言う「浄化の魔力が溢れんばかりに込められているハイポーション」とやらを作りまくり、彼を心配させてしまった。


 ヴィクトルが言うには、人は魔力が減ってくると、倦怠感に悩まされるようになる。そして残量が0に近くなってしまうと、回復するスピードも遅くなってしまうそうだ。

 その上、人の持てる魔力量には上限があり、それも決して多くない。

 その為魔力を使うときは、必ず自分の体調と相談しながら使用しなければならないらしい。


 今のところ身体に倦怠感等の不調を感じることはないが、私も気をつけようと思う。

 ただ、鍋でポーションを煮たあとは、瓶詰めする前に必ず試し飲みしているので、なんだか地球にいた頃より体調が良く感じる。自分から出た魔力のはずなのに、不思議なものだが、効果があるのは純粋に嬉しい。

 

 役得ってやつなのかもしれない!


 10代の頃を彷彿させる、モチっとしたお肌になってきた頬を触り、私はにこりと笑った。

 基礎化粧品代が浮かせるぞ〜!

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