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狼騎士団長をモフりたい!〜モフモフ大好きなのに動物がいない異世界に召喚されました〜  作者: 咲田陽


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6. 付与魔法成功


「……はい」

 私はしょぼくれながらそっと剣を握った。


「僕が手を離したら、剣に向かって、魔力を流すつもりで力を入れて見て。それから、この剣は短いけど十分重いから、気をつけて。両手で持った方がいい」


 ヴィクトルの忠告に従い、私はクッションをヴィクトルに返すと、剣を両手で掴む。

 ヴィクトルが手を離すと、サイズに見合わないずっしりとした重さが両腕にかかる。


「……ッ!」

 私は目を閉じて、祈るような気持ちで、剣に力を込めた。


「…………」

「…………」

 何も起こらない。


 また失敗だろうか?やっぱり私に魔力なんてないんじゃないの?


 色々なことが積み重なって、現在涙腺がゆるゆるな私は再び泣きかけた。しかし。


「よし、じゃ確認するから貸して」とヴィクトルが手を差し出してきた。そんなヴィクトルをぱちくりと見つめる。


「ん?」

 最初、すぐに剣を渡さなかった私に、ヴィクトルも戸惑ったようだったが、すぐに自分の説明不足だと気がついたのか、慌てて追加で説明しだす。


「あ、この剣の鞘は特殊でね。ほら、火魔法とか、そのまま腰にさすと危ないだろう?だから魔力を通さない特殊な素材で作っているんだ。だから、鞘から抜かないと、付与が成功しているかどうか分からない」

「先に言ってくださいよ……!」

 うるうるしながら言ったら、「ごめんごめん」と困ったように苦笑いされた。くそう、こちとらこの世界に来て数時間の異世界人なんだぞ〜!


「じゃ、抜くよ」

 ヴィクトルはそう言うと、そっと、鞘から剣を抜いた。


「おお……!すごい、大成功だよ!」


 鞘から抜かれ、剥き出しになった刀身は、金色の光をその身に纏って、キラキラと煌めいていた。


「よ、良かった〜」

 私がホッとして胸を撫で下ろしている隣で、ヴィクトルが、うーん!と大きな声で唸った。


「いやすごい!正直すごすぎるよ!浄化属性の魔力付与なんて初めて見た!」

 新しいおもちゃを手に入れた小さな男の子を彷彿とさせる感じで、ヴィクトルは腕をふるふると振った。


「浄化の魔力が付与されてる剣で斬られるとどうなってしまうんだ?」

 何かないか……とヴィクトルは辺りをキョロキョロしだした。


 ふと気づくと、私たちの様子に気がついた訓練場にいた騎士たちがワラワラと集まってきている。


「なになに?」

「浄化の魔力で属性付与したんだと」

「え?そんなこと可能なのか?」

「すげえ!金色だぞ!?」

「あの女の子がやったのか?え?可愛くないか?もっとよく見たいぞ、どけ」


 あれよあれよと大量の人に囲まれてしまい、私は肩を窄めた。特に最後の言葉が聞こえた方には顔を向けないように、頑張った。

 残念ながら、犬に一直線だった私は、美容にそこまで気を使うことができておらず、正直自分にあまり自信がない。


「おい、見せ物じゃないぞ!持ち場に戻れ!」

 試し斬りするものが見当たらず、イライラしてきたヴィクトルが不機嫌そうに低い声を出す。


 これは多少の効果があったようだ。あれだけ前のめりに詰め寄ってきていた騎士たちの殆どが、そそくさと後ずさった。


 しかし、中には効かなかった者もいるようで……。


「浄化属性の剣で斬られたらどうなるか、気になるんで、俺がやってみてもいいっすか?」

 と腕を上げながら、若い騎士が近づいてきた。

 ヴィクトルは興味深そうに、その騎士の方を向く。


「なにか斬れる物があるのか?あるならいいぞ、ただし終わったらすぐ返せよ」

「分かりましたっす!」

 ヴィクトルから金色の剣を若い騎士が受け取った。


 一体何を試し斬りするつもりなのだろう?

 私やヴィクトルを含めた、大勢のギャラリーが見守る中、なんとその騎士は自分の剥き出しの手のひらに刀身を当てた。


「キャア!」

 私は思わず目を両手で覆った。


「何してる!」

 ヴィクトルが慌てて若い騎士から剣を取り上げて、鞘の中に戻した。


「いや、斬れないんじゃないかなって!思ったんすよ!」

 目を塞いでる私の耳に、若い騎士の声が聞こえてきた。


 あれ?無事そうか?そう思い、そっと手を下ろす。

 

「や〜普通に斬れたっすねえ」

 しかし私の視界に飛び込んできたのは、若い騎士の手から滴り落ちる真っ赤な鮮血だった。


「あダメかも」

 フラッと足元の力が抜ける。


「おい、しっかりしろ。大丈夫、ちょっと斬れただけだ!」

「そうっす!これくらい日常茶飯なんで!」

「お前は黙ってろ!」

 私の背中を支えてくれたヴィクトルが、若い騎士をギロリと睨みつけた。

 

「ヒッ!」

 防衛本能からか、若い騎士が手を顔の前に持ってきてしまったせいで、より生々しい傷口が見えてしまう。


「嫌ぁああ」

「あーもう、おい、お前来い!飲め!」

 私の目に涙が浮かんできたのを確認したヴィクトルが、何かを自分の服の中から取り出すと、若い騎士の口に突っ込んだ。


「んぐ!?んっ」

 それはエナジードリンクくらいの大きさの小瓶だった。

 中の液体を、若い騎士が飲み干す。

 すると、みるみるうちに、若い騎士の手の傷が癒えていくのが分かった。


「……ポーションだ。これを飲むと、大抵の傷は治る」

 はあーとヴィクトルがため息を吐きながら説明してくれる。


「貴重な物で、お高いけどな!」

 最後の台詞は、若い騎士に向かって吐き捨てるように言った。若い騎士はしょんぼりと縮こまる。


「ほら、外野は散れ散れ!グレイに言いつけられたいのか!?」

 今度こそヴィクトルの脅しは全ての騎士に効いたようだ。

 

「すみませんでした〜!」と集まってきていた全員が、蜘蛛の子散らすように逃げていく。すごい効果なので、グレイさんという……騎士団長さんだったっけ?は余程怖い人なのだろう。


「大丈夫か?立てる?」

 ヴィクトルが私の前に手を差し伸べてくれたので、ありがたく掴ませてもらう。

 自分の足で立ち上がった私に、ヴィクトルがそっとクッションを再び手渡してくれた。


 えーん私の精神安定剤〜!


 ヴィクトルは、周りの目から私を隠すように自分の着ていた白衣をかけてくれた。

 

「少し座って休めるところに行こうか」

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