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狼騎士団長をモフりたい!〜モフモフ大好きなのに動物がいない異世界に召喚されました〜  作者: 咲田陽


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32. グレイの帰城


 マリスめあのクソ女〜!!!


 脳内で思いつく限りの罵声をマリスに浴びせていく。

 しかし目は目の前の魔物に固定させたままだ。

 少しでもこちらが隙を見せたら、飛びかかってくるだろうことは容易に予想できる。


 と、まだケージの中で暴れ回っていた魔物たちの方から、バキリという音が聞こえる。

 もしかしてまた何かのケージが割れたのだろうか、そう思って目線をそちらに向けたのがいけなかった。


 リス猿型の魔物がとんでもない速さでこちらに牙を向けて飛びかかってきた。


「ウッ……ッ!」

 ガブリと、身を庇うために咄嗟に前に出した腕に噛みつかれる。

 私はその腕を振り、魔物を落とす。


 ギァッ!

 私の予想に反し、魔物は素直に地面に落ちると、着地の体制も取れないまま、ビクビクと震え始めた。

 その口には、赤い私の血がついている。


「け、ケージ!ケージ!」

 私は壊れていないケージを探すと、慌てて魔物の上に被せ、下から蓋を締めた。

 ガチャンとケージの鍵を閉める、と同時に中にいた魔物が飛びかかってきた。


「うわぁっ」

 元気が回復したのだろうか、狭いケージの中をバタバタと暴れ回っている。


「危なかった〜!」

 もう大丈夫だろう。ホッとした私はケージを置いて、中を覗き込んだ。


「……あれ?」

 魔物から、紫色のオーラが消えていた。と、噛まれて出血している腕の痛みが再び感じられるようになってきた。

 赤く染まった自分の腕と、魔物を交互に見やる。


「私の血ってもしかして……?」

「ティア!!!」

 大きな声が聞こえて振り向く。


 そこには顔面蒼白でこちらに走ってくるヴィクトルがいた。


「大丈夫か!?その腕……なんてことだ」

そのヴィクトルの後ろには、同じく顔から色の失せているマリスが震えながら顔を覗かせた。


 ヴィクトルに渡されたポーションを飲みながら、私は大丈夫だとジェスチャーで伝える。

 ヴィクトルはため息をついた。

 

「まさか魔物用のケージが事故で割れるとはな……マリスが気づいてすぐに報告しに来てくれて助かったよ」

 ん?

 違和感を感じ、マリスの方を見る。

 マリスは無言のまま、首を思い切り左右に振っていた。私にヴィクトルにマリスのしたことを言うな、ということなんだろう。

 私は深くため息を吐いた。


 あとでマリスに言わない代わりに、もう嫌がらせはやめてもらうように言おう。

 こんな事故が起きれば、流石のマリスも、懲りただろう。


 グレイが狂暴化している魔物の巣窟に向かったというのに、色んなことが起こる日だ。

 ヴィクトルもきっと何事もないように振る舞ってはいるが、内心グレイのことが心配で気が気じゃないだろう。


 私はパッと元気よく立つと、「怪我人が私だけで良かったです!体調も問題ないので、早く仕事が再開できるように、お片付け手伝いますね!」と元気よく力こぶを作った。


 ――――――――


 グレイのいない、しかし相変わらず目まぐるしく忙しい灰色の日々が続いた。マリスの嫌がらせは、あの日以降ピタリと収まっていたので、多少の心の安寧はあれど、心配ごとが一つ減ったと言うだけだ。グレイのことをいつも心の片隅で想う私の胃は、いつも痛かった。

 

 そして1週間後の昼のことだった。


「きたぞ!騎士団だ!」

 誰かが窓を見て叫び、周りの人は皆外を見ようと我先にと窓へ駆け寄る。

 一方私はそれまで真剣に取り組んでいたはずの仕事ことなどすっかり頭から抜け落ちてしまい、後処理もそこそこに訓練場へと駆け出した。

 段々とただの黒い点の塊だったそれらは次第に大きくなっていき、やがて箒に跨っている人だと分かるくらいになった。


「あ!……グレイ」

 先頭を飛んでいる大きな人影の頭部にちょろりと狼耳が見えた気がする。

 そのまま上を見上げていると、その黒い人影は段々近づいてきて……違和感を覚える。

 グレイ、こっちに向かってきてないか?


 いや、ここは訓練場だ。普段から騎士団の離着陸に使われている場である。

 だから大まかにこちらへ向かってくること自体はなんらおかしくないのだ。

 しかしグレイはまっすぐ“私”を目指してきている気がする。

 そう、このまま行けば衝突し、私が病院送りになりそうなレベルでの、まっすぐ。


「えっちょ、ちょっと待って」

 私はソワソワと慌てだしたが、時既に遅し。

 まだあんなに遠くにいると思っていたグレイは、1度人だと視認できるレベルまで近づいてしまえば、あっという間に私の元へと近づいてきた。

 グレイの綺麗な顔が見えた、と思った次の瞬間には、着地するという行程をすっ飛ばして、まだ飛んでいる箒から飛び降りたグレイに思い切り抱きしめられた。


「ティア!!!」

 グレイのスライディングに合わせ、ぐるりとそのまま何回転かさせられて目が回る。


「グレイ……!げ、元気そうで……!」

「ああ、ティア」

 グレイが私の肩に頭を擦り付けた。


「約束通り帰ってきた……竜を倒してね」

 

 ――――――


 その日の昼は大変なお祭り騒ぎだった。なんとグレイたちは、被害が殆どない状態で、竜の討伐を成功させたのだ。

恐らくそのめでたいお祭り騒ぎは夜まで続いたのだと思う。

 しかし私は本当にその騒ぎが夜まで続いたのかは知らない。

 何故なら、竜討伐の報告のすぐ後で、グレイに真剣な表情でこう告げられたからだ。


「ティア……瘴気の発生源が分かった。今日の午後に出発し、俺と一緒にその浄化にあたってほしい」、と。


 当然、私は即座に了承した。


 だからその日の夜、私はグレイと共に上空を箒に跨って飛んでいた。

 

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