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狼騎士団長をモフりたい!〜モフモフ大好きなのに動物がいない異世界に召喚されました〜  作者: 咲田陽


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18. 舞踏会スタート!


 ヴィクトルのあとに続き、城の大広間に足を踏み入れる。私がこの大広間に来るのは、初めてだ。

 どうしても気になってしまい、辺りをキョロキョロ眺め回してしまう。

 普段の城の大広間の状態を私は知らない。しかし今日は明らかに舞踏会用に煌びやかに飾りつけられているのだろうことは予想がつく。

 頭を上に向けて見上げないと見れない天井からは、キラキラと金色に光る小さな球を繋げたような装飾品が至る所に吊り下げられており、城内にいるのに、まるで満天の星空の下にいるみたいに感じる。というか、そうみせるように工夫されているのだろう。

 天井辺りは仄かに暗い闇の色をしているのに、私たちのいる場所は何故か普通に明るいのだから、不思議なものだ。


 ザワザワと人の話す音が大きくなり、私は正面を向いた。

 大広間の中心はダンス用に空けられているが、窓際などには食べ物の並べられたテーブルが配置してあり、自由に食事ができるようになっている。

 また別の場所には、座って休める用の椅子とテーブルも並べられていた。疲れてしまったらあそこで休めばいいのだろう。

 大広間では、既に数十人の人々が思い思いに楽しみながら過ごしていた。

 結構な人が、こちらを向いてヒソヒソ熱心に話している。女性はもちろん、結構な数の男性も顔を赤らめてこっちに視線を向けている。

 私はちらりと、隣にいる、周りの人々の反応などまるで気にしていない風に堂々としているヴィクトルの方を見た。

 女性だけでなく男性まで虜にしてしまうとは、恐るべき男、ヴィクトル……!


「じゃ、僕はワインでももらってこようかな。またねティア」と言い残し、スマートな動きで話しかけたそうに近づいてくる男女をかわしながらヴィクトルが去っていく。


 ヴィクトルの後ろ姿を見送りながら、これがギャップ萌えってやつか?と考えていたら、「ティアさん!」と鈴の転がるような声で呼ばれた。

 

「リリー!わっ、すごくかわいい!いつもかわいいけど、今日はもっともっとかわいい!」

「えへへ、ティアさんがあのポーション分けてくださったからですよ。ティアさんもとっても素敵です!」


 声の主は、リリーだった。

 昨日の青いポーションを半分あげたのだが、しっかり使ってくれたみたいだ。

 最初からサラサラだった薄い茶色の長い髪が、更に滑らかさを増しており、キラキラとお星さまが散ったみたいになっている。着ている薄いクリーム色のかわいらしいドレスも大変良く似合っており、天界から落っこってきちゃった天使のようだ。

 

「えへへ!ありがとう!最高にかわいいリリーに褒めてもらえるなんて、それだけで数時間のお着替えに耐えて来て良かったって思えるよ〜!」

 私はデレデレと顔を緩めてリリーを眺めまわした。


 なんだかリリーって小さくてかわいいし、小動物感あるのよね!モフモフ不足すぎて、小さくかわいいリリーをつい抱きしめたくなっちゃうな!


 私が危ない思考に走っていると、再び声をかけられた。


「まさか……あなた……ティア……?それにリリー?」

「あっ」

「マリスさん!こんばんは」

 声の正体はマリスだった。

 マリスは真っ赤でド派手な、背中が大きく開いているドレスを着ていた。今日はメガネはかけていないみたいだ。


「あなたたちの、髪と肌……何よそれ?」

 マリスが明らかに不機嫌そうに顔を歪めた。口の端が引き攣っており、ピクピクと動く唇の下からは白い犬歯がすがを見せている。


「あ!実はこれ、聞いてください!」

「ちょ、リリー……!」

 止める間もなく、リリーはマリスに昨日あったことを包み隠さず話してしまった。

 リリーには、どのようにして私が失敗してしまったかは伏せてあるので、元凶はマリスだとは知らない。

 だが、失敗作の青色のポーションという単語で、マリスは自分がワザと失敗させたポーションのことだと思い至ったらしい。


「へええ……」

 と大人しく呟いているが、このこめかみには青筋がありありと浮き上がっていて、大変恐ろしい。


「そーんなポーションができたなら私にも分けてくれれば良かったのに〜!ティアってケチくさいのね〜!」

「なっ」

 突然、マリスが辺りに響き渡るような大きな猫撫で声を出した。ついでに周りに見せつけるようにクネクネもしている。

 この女〜!と私のこめかみにも青筋が浮かびそうになったが、頑張って耐える。

 なんだなんだ?と周りがザワザワしだした。

 先程のマリスのせいで、私たち3人は注目を浴びてしまっている。

 私は軽く1回ため息を吐くと、真っ直ぐマリスと向き合った。


「ポーション、あげようとしたんですが、もうマリスさんは明日の舞踏会に控えるためとかで、早退してたあとだったんですよ」

「は……?えっ」

 嘘ではない。失敗作のポーションをヴィクトルに見せたあと、マリスから渡された書類をこなし、マリスの机の上に置きに行ったら、マリスは既に帰宅した後だった。

 これではいくら分けようと思ってても……(まあ認めよう、初めから分けようとはあまり思ってはいなかったが)、無理である。


 私はいつもよりも断然濃いマリスの化粧を見て言った。


「でもお化粧する時間はたっぷり作れたみたいで良かったです」

 マリスの手がぎゅうと音がするほど握りしめられた。


「なら部屋に届けに来なさいよっ!使えない子!リリーもティアみたいな腹黒とは一緒にいない方がいいわよ、あなたまで下に見られてしまうわよ」

 マリスが半ば叫ぶように吐き捨てた。


「マリスの部屋の場所なんて知りませんし……「待ってください」」

 私が話し始めた言葉を、リリーが遮った。


「ティ、ティアさんは、私とお兄ちゃんのポーションを作ってくれたり、命がけで助けてくれようとしたり、ッそれこそ大きな魔物にだって立ち向かえちゃうような、とても素敵でかっこいい人です!例え上司のマリスさんでも、そのようにティアさんを侮辱しないでください!」

 大きな目を潤ませながら、小さい身体をプルプルと震わせ、リリーが私の為に怒ってくれている。


「リリー……!」

 なんだかとても美化されている気がするが、私の為にマリスに怒ってくれているのが嬉しくて、私は口をおさえた。


「〜ッなによ!使えない部下ね!」

 マリスは捨て台詞を吐くと、フン!と鼻を鳴らしながら去っていった。

 本当に嵐のような人である。


「リリー……それに、貴女がティアさん」

 穏やかな声が聞こえ、振り返ると、リリーに似た雰囲気を持つ、優しそうな茶髪の青年が立っていた。


「お兄ちゃん!」

 リリーの顔がぱあっと明るくなった。

 リリーのお兄さん、ってことは、腕が落ちてしまった人じゃないか!

 私はリリーのお兄さんについて思い出し、ハッと息を呑んだ。


「あの、腕について聞きました。その後体調などは大丈夫でしょうか!?」

 慌ててリリーのお兄さんに詰め寄る。

 その腕は、当然洋服で隠れていて見えないが、手はしっかりついているように見える。

 私が一生懸命お兄さんの腕を観察していたら、お兄さんはおかしそうに笑った。


「おかげさまで、自分でも一度取れたのが信じられないくらいに健康です。上司からは、前よりも力が強くなったとまで言われたんですよ?」

「そんな!」

 私が眉を顰めると、お兄さんは私の手を取り、深々とお辞儀した。


「リリーから、最近の高品質なポーションに、浄化の付与武器はティアさんが作ってくださっていると聞きました。今日はそのお礼を言いに来たんです」

 私の手を掴むお兄さんの手に、くっと力が篭る。


「あなたがいてくれなかったら、私は職を無くして……いや、生きてすらいなかったかもしれない。本当にありがとうございます。騎士団の皆も、日々ティアさんの物に助けられています!」

 私は一瞬、あまりの深い感謝にぽかんとしてしまったが、グッとお兄さんに手を握り返した。


「いえ!私は私にできることをしたまでですので。魔術研究所の一員として、騎士団の皆さんのお役に立てて良かったです!」

 にっこり笑うと、リリーのお兄さんは、薄ら涙ぐみながら何かを言おうとした。だがその瞬間、他の騎士団の人々だろう方々に私は囲まれてしまい、聞き取ることが出来なかった。


「僕もお礼が言いたかったんだ!」

「俺も……あなたのポーションは素晴らしい!」

 顔も知らないような人々に取り囲まれ、私は目を回してしまいそうになった。


「あ、ありがとうございます〜!私も、仕事をしてるだけなので……!本当に……!えっと、あの……ちょっと休みますね!」

 私の周りに詰めかけてきたのが、筋骨隆々な面々なこともあり、私は隙間を縫ってささっと逃げ出した。

 残された人々は残念そうな顔をしていたが、許してもらいたい。

 私は赤くなってしまった顔を冷やすために、1人でこっそりバルコニーへと向かった。

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