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ロストユースに青を知る  作者: 志結
エピローグ
79/83

エピローグ《それでも》


更に一年後



都会の交差点に立ち並ぶ、大型ビジョン。

そこに映し出される、七人組ダンスボーカルユニット、BLUE BIRTH+。

街には彼らの歌声が響き、行き交う人々の会話も、それで溢れていた。


「ブルバ、海外公演決定だって! 遂に世界かー!」

「ねぇ、前は六人組だったんでしょ? 私その時代知らないんだよねー」


街頭ビルに掲げられた彼らのアーティスト写真の真ん中には、十五歳を迎えた葵瑞の姿があった。

あれからぐんと背が伸び、堂々としたその姿は、センターの風格そのものだ。


「ブルバって今、寮生活してるんでしょ? 仲良すぎじゃない?」

「そうなの! AZUが加入したタイミングからずっと!」


老若男女、世代を超えて愛されるグループになっていることは、彼らの会話を聞いていれば伝わることだろう。


「REIの曲さ、AZUが入ったくらいからなんか変わったよね! 歌詞もめちゃくちゃ良くなったっていうか!」

「分かる! SHIKI様がバッサリ髪切ったのもその辺りじゃない!? んもうイケメンすぎて、男子メンよりもかっこ良すぎる!」


彼らの変化を、彼らの進化を、ファンも確かに感じ取っていた。


「HI7SEさ、今度ハリウッドデビューするって聞いた!? この前出てた映画、世界中で評価されてたもんね!」

「まじ? すげぇじゃん! UMIもこの前、海外の有名アーティストとデュエットしてたよな! 活躍の場が世界に広がっててすげぇよ!」


それぞれの夢を掴み取る為、BLUE BIRTH+という居場所を選んだ、七人の物語。


「今度始まる新番組、YUIが単独MCに大抜擢だって! みんな個人の仕事も順調で、本当に売れたなーってかんじだよね!」

「それなー! MIOも今度、モデルとしてランウェイ歩くんだって! 女の私から見ても、超絶可愛くて憧れちゃう!」


少女達の会話を聞いた一人の女が、ハッと息を呑んで振り返る。


「……ゆーい……?」


彼女の視線の先には、大型ビジョンで歌って踊る彼らの姿が映し出されていた。


「AZUもさ、だいぶ顔つき大人になったよな。入った時は、本当に子供ってかんじだったのに」

「でも、きっとまだまだ大きくなるよな! どんなふうに成長して、どんな大人になるのか、今から楽しみだよ!」


彼の成長を見届けているのは、決してメンバーだけではない。

日本中が、世界中が、彼を見守っていた。


「あー、やっぱ羨ましいよなぁ。美人に囲まれて、世間からチヤホヤされてさ」

「でもさ、裏で相当努力してないと、ここまで来れないって。みんなのことずっと見てきたから、分かるよ」


ファン達も、想像した。

彼らが自らの口で語らなかった、苦労や葛藤の日々を。

ハッピーエンドの向こう側を──。

時に傷付き、葛藤し、それでも立ち止まることなく、存在感を放ち続ける、彼らの物語を。

今も遠い島に佇む、あの青い鳥居のように──。


「ねぇ、ブルバって知ってる?」

「知ってるよ! ブルーバード、青い鳥だろ?」

「違うよ、BLUE BIRTH+だって! 青の始まり!」

「そうなの? 青く生きる、じゃなくて?」

「んー……どっちでもいい! 解釈は、人それぞれでいいんじゃない?」


遠い空の下、海に浮かぶ孤島、ロストユース。

その青い鳥居に、青い翼を持つ鳥が止まる。

彼らにとってそれが、宿り木のようなものでありますように。

羽を休めようと立ち止まり、そっと振り返った時に、幾夜越えたあの数々の日々を、ちゃんと思い出せますように──。



──青い鳥居を、子供達は今日も潜るだろう。

毎夜、試されるようにして。

しかし、試されているのは、子供だけではない。

大人達もまた、毎夜試されている。

今に繋がる今日というこの日は、紛れも無く、彼らが自らの手で選び取ってきたものだ。


朝目が覚めると、忘れてしまう記憶。

現世に持ち帰ることができない、消えてしまう記憶。


それでも──



『忘れないで。憶えていて』


その聲に、耳を傾けることができたのなら。

その聲が、もし届いたのなら──。


「憶えてるよ」


どうか、返事をしてあげて欲しい。

名前を呼ぶ聲に応えるように、手紙の返事を書くように、そっと手を差し伸べてあげて欲しい。


弱く未熟で、それでも必死にもがき、生きることをやめなかった。


今もきっと、ロストユースで待つ

青の時代の貴方を

どうか、憶えていて──



【ロストユースに青を知る】



挿絵(By みてみん)



こちらのエピソードで完結でございます

最後まで読んでいただきありがとうございました


明日、同じ時間にとあるものが上がります

是非ともそちらもお楽しみください


※物語の感想をいただけると飛び跳ねて喜びます

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