エピローグ《それでも》
更に一年後
都会の交差点に立ち並ぶ、大型ビジョン。
そこに映し出される、七人組ダンスボーカルユニット、BLUE BIRTH+。
街には彼らの歌声が響き、行き交う人々の会話も、それで溢れていた。
「ブルバ、海外公演決定だって! 遂に世界かー!」
「ねぇ、前は六人組だったんでしょ? 私その時代知らないんだよねー」
街頭ビルに掲げられた彼らのアーティスト写真の真ん中には、十五歳を迎えた葵瑞の姿があった。
あれからぐんと背が伸び、堂々としたその姿は、センターの風格そのものだ。
「ブルバって今、寮生活してるんでしょ? 仲良すぎじゃない?」
「そうなの! AZUが加入したタイミングからずっと!」
老若男女、世代を超えて愛されるグループになっていることは、彼らの会話を聞いていれば伝わることだろう。
「REIの曲さ、AZUが入ったくらいからなんか変わったよね! 歌詞もめちゃくちゃ良くなったっていうか!」
「分かる! SHIKI様がバッサリ髪切ったのもその辺りじゃない!? んもうイケメンすぎて、男子メンよりもかっこ良すぎる!」
彼らの変化を、彼らの進化を、ファンも確かに感じ取っていた。
「HI7SEさ、今度ハリウッドデビューするって聞いた!? この前出てた映画、世界中で評価されてたもんね!」
「まじ? すげぇじゃん! UMIもこの前、海外の有名アーティストとデュエットしてたよな! 活躍の場が世界に広がっててすげぇよ!」
それぞれの夢を掴み取る為、BLUE BIRTH+という居場所を選んだ、七人の物語。
「今度始まる新番組、YUIが単独MCに大抜擢だって! みんな個人の仕事も順調で、本当に売れたなーってかんじだよね!」
「それなー! MIOも今度、モデルとしてランウェイ歩くんだって! 女の私から見ても、超絶可愛くて憧れちゃう!」
少女達の会話を聞いた一人の女が、ハッと息を呑んで振り返る。
「……ゆーい……?」
彼女の視線の先には、大型ビジョンで歌って踊る彼らの姿が映し出されていた。
「AZUもさ、だいぶ顔つき大人になったよな。入った時は、本当に子供ってかんじだったのに」
「でも、きっとまだまだ大きくなるよな! どんなふうに成長して、どんな大人になるのか、今から楽しみだよ!」
彼の成長を見届けているのは、決してメンバーだけではない。
日本中が、世界中が、彼を見守っていた。
「あー、やっぱ羨ましいよなぁ。美人に囲まれて、世間からチヤホヤされてさ」
「でもさ、裏で相当努力してないと、ここまで来れないって。みんなのことずっと見てきたから、分かるよ」
ファン達も、想像した。
彼らが自らの口で語らなかった、苦労や葛藤の日々を。
ハッピーエンドの向こう側を──。
時に傷付き、葛藤し、それでも立ち止まることなく、存在感を放ち続ける、彼らの物語を。
今も遠い島に佇む、あの青い鳥居のように──。
「ねぇ、ブルバって知ってる?」
「知ってるよ! ブルーバード、青い鳥だろ?」
「違うよ、BLUE BIRTH+だって! 青の始まり!」
「そうなの? 青く生きる、じゃなくて?」
「んー……どっちでもいい! 解釈は、人それぞれでいいんじゃない?」
遠い空の下、海に浮かぶ孤島、ロストユース。
その青い鳥居に、青い翼を持つ鳥が止まる。
彼らにとってそれが、宿り木のようなものでありますように。
羽を休めようと立ち止まり、そっと振り返った時に、幾夜越えたあの数々の日々を、ちゃんと思い出せますように──。
──青い鳥居を、子供達は今日も潜るだろう。
毎夜、試されるようにして。
しかし、試されているのは、子供だけではない。
大人達もまた、毎夜試されている。
今に繋がる今日というこの日は、紛れも無く、彼らが自らの手で選び取ってきたものだ。
朝目が覚めると、忘れてしまう記憶。
現世に持ち帰ることができない、消えてしまう記憶。
それでも──
『忘れないで。憶えていて』
その聲に、耳を傾けることができたのなら。
その聲が、もし届いたのなら──。
「憶えてるよ」
どうか、返事をしてあげて欲しい。
名前を呼ぶ聲に応えるように、手紙の返事を書くように、そっと手を差し伸べてあげて欲しい。
弱く未熟で、それでも必死にもがき、生きることをやめなかった。
今もきっと、ロストユースで待つ
青の時代の貴方を
どうか、憶えていて──
【ロストユースに青を知る】
こちらのエピソードで完結でございます
最後まで読んでいただきありがとうございました
明日、同じ時間にとあるものが上がります
是非ともそちらもお楽しみください
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