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ロストユースに青を知る  作者: 志結
第七章
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第六十六話《選択》


飛ばされたその先には、メンバーの六人全員がいた。

そして目の前に佇むのは、冊子で見た、大きな青い鳥居だ。


「……綺麗……」


この世の全ての青を溶かして混ぜたような、そんな濃い青色をしていた。

朝を迎え、白み出した空に、その青がよく映える。

頑丈そうな太い柱に、威厳と風格のあるその佇まいに圧倒され、思わず感嘆を零した。


その瞬間、うみなの姿が、白く薄くなっていった。

今にも消えてしまいそうに、透き通っていく。


「え!? どうして!?」


周りを見回すと、他のメンバーも同じ現象に狼狽えていた。

そこに姿を現したのは、葵瑞だった。


「時間だ。この鳥居を潜って、こいつらは成仏する。空に還るんだよ」


全てを知っているかのような口振りで、葵瑞は促すように彼らを見やった。

その途端、鳥居の下に光の扉のようなものが現れる。

光の先の景色は、見ることができない。


「……成仏? もう、一緒にいられないの?」

「呪いを解いたんだ。この鳥居を潜れば、無事儀式は終わる。成仏して、ここでの記憶も消える」


その言葉に、反論するように陽七星と美生が声を上げた。


「は!? 消えるってなんでだよ!」

「また、忘れちゃうってこと?」

「……そうだな」


無情に答える葵瑞に、堪らず勇為も口を挟んだ。


「なにそれ……! 成仏しないとどうなるの? 今みたいに、このまま傍にいるのじゃダメなの?」

「……本来生きてる人間が、子供の魂に会うのは御法度なんだ。あの5000本の鳥居を潜って対峙した時点で、この鳥居の門が開く。誰かがここを潜って扉を閉めないと、魂は行き場を失って、この世を彷徨い続けることになる。こいつらは、また一人ぼっちだ」

「……そんな……!」


容赦なく突き付けられた選択に、織は絶望し口を押さえた。

──こんな選択しかないのか。

こんな結末しかないのか。

ようやく大事なものを取り戻せたのに、また、忘れてしまうのか。

あの日の誓いを、綺麗さっぱり忘れてしまえたように──。


困窮し立ち尽くすことしかできない彼らの中で、伶が一人前に出た。


「……誰かが潜ればいいんだろ? 俺が行く」


伶の言葉に、全員が驚き彼を見た。

それは、子供を庇う大人の姿だ。

その様子に、皆も希望の出口を見つけたように、目を光らせた。


「俺もだ! ひなの代わりに俺が通る!」

「あたしも行く! この子を護る為に、なんだってするって決めたの!」


陽七星と海も、伶と同じように前に出た。


「美生も! 忘れるなんてもう嫌!」

「私も!」

「僕だって行くよ! もう、間違えない!」


全員が覚悟を決めて、鳥居に向かって前に出た。

その様子に驚きながらも、葵瑞は冷笑して言い放つ。


「……馬鹿か。この鳥居を潜れるのは魂だけだ。おまえらみたいな生きてる人間が通ったところで、なんの意味もない」

「……でも……! だって……!」


葵瑞に再び絶望を突き付けられ、彼らは拳を握って項垂れた。

──本当に、何もできないのか。

何もできずに、また繰り返すのか。

あの地獄のような日々を。

また忘れて、また馬鹿な真似をして、また絶望を繰り返すのか──。


「……だからな……」


漂う絶望の中、今度は葵瑞が、鳥居の正面に一歩踏み出した。


「俺が行く」

「「……!?」」


葵瑞の不可解な発言と行動に、一同はわけが分からず黙り込んだ。

彼らの提案を意味が無いと言い放ったくせに、自分も同じことをしようとしているのだ。

苛立ちと困惑が混ざったような表情で、陽七星が葵瑞に噛み付く。


「は? 何言ってんだよ。おまえが言ったんじゃねえか。生きてる人間じゃ意味が無いって……」

「そうよ! 潜れるのは魂だけだって……あんた……が……っ……」


そう口にしながら、海の頭に、ある疑念が過った。


まさか、いや、でも──


ゆっくりと、葵瑞の足元に、視線をずらす。

そこには、伸びている筈の影が無かった。


「……まさか……!」


──今まで、どうして気が付かなかったのだろう。

不可解な現象を、全て見透かしたように、冷静に説明する少年。

突如現れた、歳の離れた新メンバー。


「……そうだよ。俺は、魂の方の、湊葵瑞だ」


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