表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロストユースに青を知る  作者: 志結
第七章
61/83

第六十話《ヒーロー》


「本当はずっと、助けて欲しかった!!」


ちょうど同じ頃、他のメンバー達も、過去の自分と対峙しその言葉を言い当て、本当の姿の彼らと再会していた。

ここにいる、彼らも──。


陽七星は本当の姿のひなと対峙し、今まで自分が見ていたその姿は、自らが作り出した幻影だと気付いた。


「……ひな、忘れててごめん。一人にしてごめん。……そうだよな、怖かったよな……本当はずっと、助けて欲しかったんだよな……」


陽七星は膝を折って、ひなをぎゅっと抱き締めた。

体温が高い子供の温もりが、肌からしっかりと伝わってくる。

爽やかな笑顔が似合う少年は、優しく穏やかに、陽七星を抱き返した。


「大丈夫。僕は、一人じゃなかったよ。僕の傍にいてくれる人は、助けてくれる人は、ちゃんと近くにいたよ」


天才子役と呼ばれたひなは、天使のように笑っていた。

人が好きで、人の期待に応えることが好きで、いつだって、誰かの為にと直向きに頑張る少年だった。

きっと陽七星も、その本質は変わらないのだろう。

誰かに見ていてもらいたい、誰かの心に残る存在で在りたい──。

そんな寂しがりやな陽七星の本質を見透かすように、ひなは笑顔で囁いた。


「陽七星のこと、ずっと見てたよ。僕の夢を、叶えてくれてありがとう。歌を歌ってくれて、ありがとう。僕の声に気付いてくれて、助けてくれてありがとう。陽七星は、僕のヒーローだね。今度は僕が、陽七星を助けるからね」


ひなの言葉に、陽七星は言葉を失くして、もう一度強く抱き締めた。

目から涙が溢れ出して、止まることなく頬を伝う。


泣きの芝居が上手いと、ひなは世間からそう評されていた。

しかしそれは、決して芝居のスキルが高いというものではない。

彼は、感情を想像するのが上手かった。

どんなことがあったら悲しいのか、どんなことを言われたら自然と涙が出るのか、そんな想像力を働かせながら、その物語を常に自分の人生に置き換えていたのだ。


だから陽七星は、ハッピーエンドの続きを欲しがった。

皆が表面上だけを見て、物語の登場人物達を幸せだと決め付けるのは、何か納得がいかなかったのだ。

ある時点でだけは、いっときの幸せを手に入れた勇者も、ハッピーエンドの後には、死にたいほどの絶望が待ち受けていたかもしれない。

それが仮初のハッピーエンドだと気付かされてしまった時、その幸福の形がより一層、地獄へと誘う鍵になってしまったかもしれない。


そして見る角度を変えれば、また違う捉え方があったかもしれない。

誰もが幸せだと思っていた勇者は、皆にそのレッテルを勝手に貼られただけの勇者は、実は誰よりも孤独で、誰よりも寂しい想いを抱えていたのかもしれない。


人間の想像力は、きっと、とても大事な能力だ。

自分の未来を想像して、相手の感情を想像して、そうして傷付かないように、傷付けないようにと手を差し伸べていく。

それを、今の陽七星ならできる筈だ。

本当の弱さを知って、本当の強さの意味を知った、今の彼なら──。


「……ありがとう、ひな……。俺、もっと強くなるから……。力や権力だけじゃなくて、本当の意味で……もっと強くなりたい……。おまえのことも、自分のことも、大切な人のことも、ちゃんと護れるように……」


彼の強がりな態度は、寂しさの裏返しだ。

その寂しさに気付かれないように、もしくは自分で気付かないように、強く在らなければならないと言い聞かせてきた。

──だけど、違っていたんだ。

誰よりも近くで、見てくれている人はいたんだ。

そう思えたら、もう何も怖くない。

あの頃の憧れを手にした今、ひなに恥ずかしくないように、誇れる自分で在りたいと願った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ