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ロストユースに青を知る  作者: 志結
第五章
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第四十九話《禁断の果実》


「わりぃ、待たせた」


伶と別れ、喫煙所を後にした燈夜の元に、メンバーの晟斗が現れる。


「大丈夫だよ。ちょうど今、ブルバの伶と話しててさ。いつもと様子が違う感じだったから」

「まじか。俺も昨日勇為に会ってさ、あいつもなんかおかしかったんだよな。なんつーか、らしくないってかんじ?」

「新メンバーが入って、いろいろ大変な時期なのかもね。できれば力になってあげたいけど……。難しいね、人に言葉を伝えるのって」


燈夜の言葉に、晟斗は物珍しそうな顔をした。

燈夜は控えめな雰囲気と性格ではあるが、曲作りや創作に対しては自信家である為、こんなふうに自信無さげな物言いをするのは珍しかった。


「なんだよ今更。普段から歌詞書いてる奴が」

「音楽も言葉も、各々感じるものは、受け取り手の自由だからさ。俺が伝えたい言葉と、相手が欲しい言葉が一致しない時は、どうやって寄り添えばいいのかなぁ」


伶が何を求めて言葉を零したのか、燈夜には分からなかった。

助けを求めていることは分かっても、何が救いになるかまでは分からない。

自分の発した言葉は、間違いではなかっただろうか。

そんなことを、後からクヨクヨと考えてしまう。

口から出た言葉は、二度と取り消すことができないと、誰よりも知っているから──。


「また難しそうなことを……。俺に聞くなよ。馬鹿だからさ、おまえら創作者の頭ん中なんて、分かりゃしねぇよ」

「ははっ。それをリズムで表現するのが、ジョウの仕事だしね。さて、俺も新曲のデモ作んなきゃ」


歩き出す燈夜の背中を、晟斗は追いかけることができずに立ち止まった。

昨夜の、勇為の言葉が蘇る。


『親愛と恋愛の区別もつかなくなって、赦されない恋に堕ちた馬鹿な男なんです。普通の人生を送ってきたあなたには、到底分かり得ないでしょうね』


それは晟斗の胸の奥深くに、痛々しく突き刺さっていた。


(赦されない恋……ね……)


真っ先に思い浮かんだ、その愛おしい声。


『ジョウ』


彼の人生を彩り、そして狂わせもした、一人の幼い少年の笑顔。

子供に似つかわない、哀愁を漂わせながら笑うその顔は、今でも変わらず脳裏に焼きついている。


「ジョウ」


燈夜が振り返り、名前を呼ぶ。

思い出と重なったその笑顔は、あの頃から、何一つ変わっていなかった。


「行こう」


その声に、晟斗は諦めたように、溜息を吐きながら笑った。

人の気も知らないで、と零したくなるのを、そっと胸の奥に閉じ込めて──。


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