第四話《陽七星の夜》
高級ビルが聳え立つ、六本木の地下一階。
ミラーボールが輝き、大音量のパーティーミュージックが耳を突く。
そんな輝きと暗闇が入り混じるVIP席に、陽七星は長い脚を組んで座っていた。
「HI7SE、今日も会えて嬉しい」
「ねぇねぇ、お酒もいいけどあたしと踊ろうよ」
露出の高いセクシーな女性を両手に侍らせて、陽七星は気分良く酒を浴びる。
「さっき生放送で踊って疲れてんだよ。踊りたきゃ勝手に踊んな」
「えー、連れないんだからぁ」
女に囲まれるのは当たり前。
芸能活動での日々の疲れを、陽七星はこうして癒していた。
するとDJの前に、音楽に合わせて体を揺らす華奢で若い女を見つけた。
何回か男が声を掛けるが、笑顔で何かやり取りをして男達は苦い表情で離れて行った。
出会いを求めてクラブに来た軽い女では無さそうだ。
こういう女こそ落としたくなる。
「おい、あの女を連れて来い」
近くのボーイに声をかけ、万札を握らせる。
このVIP席は、陽七星が金を出して買っているものだ。
彼に選ばれた人間しか、ここに座ることは許されない。
金と権力で、彼の思い通りにならないものは無かった。
ボーイに声をかけられた女が、話を聞いてこちらを振り向く。
そして陽七星の姿に気が付いた瞬間、あっと驚いたように顔を赤らめ、駆け足で寄って来た。
「こんばんは。ブルバのHI7SEさんですよね?」
「あぁ。あんた、名前は?」
「りかです。お会いできて光栄です」
「そうか、俺もだ。今日は俺の奢りだ。遠慮なく飲めよ」
そこいらの男に簡単に靡かない女が、自分には好意的な反応をする。
優越感で気分が良くなる。
自分は、選ばれた人間なんだと。
「テレビで見るのとイメージ違いますね」
「こんな俺は嫌か?」
「いえ、カッコいいです」
「そうか。こんな姿を見せるのはおまえの前だけだぜ」
耳元で囁く。
普段好青年をやってるから、少し悪い強引な男の部分を見せれば、ギャップで女は落ちる。
女という生き物は、自分だけに見せてくれる素顔が好きなものだろう。
そんな良い雰囲気になってきたところで、目の前で若いボーイが派手に転んで酒を溢した。
「おい、俺様の靴が汚れたらどうしてくれるんだ?」
「すみません! すみません!」
少し凄んだだけで怯えるその青年の容姿は、童顔で子供そのものだった。
「なんでてめぇみてぇなガキがこんなとこにいるんだ?」
「あの、一応十八歳なんです」
「十八は充分ガキだろ。俺はガキが嫌いなんだ。てめぇのせいで気分が最悪だ。責任取れよ」
「えぇと、一体何をしたら……」
「服を脱げ」
「……え?」
「裸でお立ち台に立って腹踊りをしろ。俺様の気分を害したんだ。貧相な体を晒して俺を楽しませてみせろよ」
震えながらも言われた通りに必死に腹踊りをする少年を見て、陽七星は周りの女達と笑った。
「ははっ、貧相な体で必死になって、惨めなもんだな!」
ここでは、陽七星は間違いなく強者だった。
自分の思い通りに人を従え動かせる。
このVIP席こそが、ステージ上とはまた違った優越感と快感を得られる場所だった。
弱い者を淘汰し、自分は強者だと実感できる。
それこそが、彼の矜持の満たし方だった。
全ては、強者で在る為に──。




