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ロストユースに青を知る  作者: 志結
第二章
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第二十二話《革命の狼煙》


新メンバー加入の発表から一ヶ月が経ち、世間の注目が集まる中、彼らは生放送の音楽番組に呼ばれていた。

七人体制に不満を抱いている人達へ、少しでも早く新曲と新パフォーマンスを見て欲しいという頼人の思惑だった。

伶は締め切りに急かされながらも状況的に難しい新曲をなんとか書き上げ、レコーディングもCD制作もまだ未定の状態の新曲を、この初披露の為に準備をしてきたのだ。

振り付け制作と練習時間も決して多いとは言えなかったが、この状況を脱する為とは言え、中途半端なパフォーマンスを世間に晒すわけにはいかない。

そこはさすがにプロとしての意識が勝り、遂に今日、万全の準備の元新曲の初披露を番組にて行うのだ。


「BLUE BIRTH+は新メンバーが入ったんだよね? 自己紹介してくれる?」

「はい。新メンバーのAZU、13歳です。よろしくお願いします」


リハーサル通りに、葵瑞はカメラに向かって自己紹介をした。

決して愛想が良いとは言えないが、それでも自信に満ち溢れたその表情は、初々しさよりベテランの風格さえあった。


「十歳も下の子が入ってきちゃって、みんな戸惑ってるんじゃないの?」

「あはは。最初はやっぱりビックリしましたね。でもこっちも負けてられないって、いい刺激にもなってますよ」


あくまでいつもの好青年を装いながら、陽七星があえてたどたどしく答える。


「AZUくんはどう? 凄い先輩達に囲まれて」


司会者の質問に、六人は心中穏やかではなくなる。

先程同じ流れでリハーサルをしていたとはいえ、何か爆弾発言をされたら堪ったもんじゃない。


「……負けないように頑張ってます」


あまりに短いコメントにメンバーも司会者も驚きながらも、決して問題発言をしたわけではない為胸を撫で下ろした。


リハーサルの時には『先輩方みんな優しく教えてくださるので、早く追いつけるよう、負けないように頑張ってます』と指示が出ていたコメントを、葵瑞は本番で独自の判断で省いたのだ。

優しく教えてくれる先輩など居ない。

早く追いつけるも何も、自分が一番上手い。

そう自負している葵瑞は、嘘を吐くまいと自分が噛み砕ける部分だけを口にした。


「そ、そっかぁ。これからも負けないように頑張ってね。今日は六人のメンバーから見た新メンバーのイメージを、フリップに書いてもらいました」


ジャンッというSEと共に、六人がフリップを裏返す。


「一人ずつ見ていっこっか。HI7SEくんは『ハイトーンボイスの少年』って。そっかぁ、まだ声変わり前だもんね」

「やっぱりまだこの年齢ってこともあって、高音が出せるのが羨ましいなって思います」

「だって」

「はぁ……。練習すれば出ますよ、高音も」

「練習が足りないってよ?」

「うわぁー、そ、そっかぁ。僕も、まだまだ頑張って練習しなきゃですね!」


愛想良く笑顔で答える陽七星が、今本心はどんな想いなのか五人は容易に想像できた。

自分の番が来ることを恐れて、身構えてしまう。


「UMIちゃんは『ザ・若者ってかんじ』だって。やっぱり若いの羨ましい?」

「羨ましいですねぇ。お肌もピチピチですし、毎晩なんのケアもしなくてもそれが保てるなんて信じられないです! あたしも13歳に戻りたーい!」

「そんなこと言って、UMIちゃんもお肌ピチピチじゃない。AZUくんは、スキンケアとかはまだしなくても全然大丈夫なの?」

「何もしてません。あんまりしすぎても良くなさそうだし」

「そんなこと言わないでよ! あたしが一生懸命やってるのが無駄みたいじゃない!」


ノリの良い海のツッコミに、観覧席から笑いが起きる。

笑ってはいるがいつも以上に海の声が強く大きいことに、メンバー以外は気付いていないだろう。


「YUIくんは『天才肌』だって。おおー。やっぱり才能の塊って感じがする?」

「はい。僕らが一生懸命練習してできるようになることに対して、AZUは練習しなくてもわりかし最初からできちゃってて。最近の子は凄いなって感じました」

「最近の子って、君らだって充分若いじゃない。でも確かに今の子達は、小さいうちから動画見ながら踊ったりするのが普通だって言うもんね。AZUくんもそうだったの?」

「ダンスは小さい頃から習ってました」

「そっかー、やっぱり十歳違うだけで環境の変化は大きいよね。みんな負けないように頑張らなきゃだね」

「大丈夫です! ファンの子への愛なら、僕が一番なので!」


勇為がウインクと指ハートをカメラに向けると、観覧席からキャー!という歓声が上がった。

さすが抜かりない。

そして先程の葵瑞への発言は、裏を返せば葵瑞があまり練習をしない人物だということをアピールしているようにも聞こえる。

勇為らしい、巧妙な嫌がらせである。


「MIOちゃんは『弟みたい』だって。そっかぁ、MIOちゃんグループで最年少だったもんね」

「そうなんですよ。今まで一番年下だったのもあるし、MIO、兄姉でもお兄ちゃんとお姉ちゃんがいて末っ子なので。なんだか弟ができたみたいな気分です」

「だって。AZUくんは兄弟いるの?」

「一人っ子です」

「そっかぁ、じゃあいきなり六人もお兄さんとお姉さんができて嬉しいね。MIOちゃんも弟が可愛くて仕方ないでしょ」

「そうなんですよぉー。ついつい構ってあげたくなっちゃって。なんか悩みとかあったら、MIOに一番に相談して欲しいです」

「だってよ? どうする?」

「じゃあそうします。でも今は特にないので」

「悩む必要がないくらい良い関係性なんだね」


「はいっ」と笑顔で答えた美生は、ようやく自分の番が終わったと安堵した。

相変わらず生意気な回答だが、大事にはならずに済んだ。


「REIくんは『未知の生物』って。えぇ!? どゆこと!?」

「そのまんまって言うか……得体の知れない存在ってかんじです。歌もダンスもなんでもできるし、でも予測できないってか、型破りのことをするイメージがあるので」

「なるほどぉ、いい意味でね! ブルバはみんな優等生の集まりだから、一人くらいそういう型破りの人がいても刺激になって良さそうだよね! どう? 未知の生物って言われてるけど、自覚ある?」

「よく分かんないけど、普通って言われるよりはマシかなと」

「そうだよね! 個性があるってことだもんね! ポジティブ〜!」

「はは。なら良かったです」


心底面倒臭いと思いながらも、ちゃんと本心に近いところの解答を持ってくるあたりが、伶の隠しきれない根の真面目さを表しているように思える。

彼も発想が独特である為、大概こういう時にお手本のような答えは出せないのだが。

苦手な作り笑いも、五年間の活動の甲斐あってそこそこ様にはなっていた。


「SHIKIちゃんは『しっかりしてる』って。そうなんだ! まだ若いのにしっかりしてるなって思うんだ!?」

「はい。自分のことは自分でできるし、人に頼らずなんでも器用に熟すタイプなのかなと」

「だって。そうなの?」

「まぁ、なんでも一人でやった方が早いし……」

「そっかー、偉いねぇ。僕がこのくらいの歳の時は、なんでもかんでも母親にやってもらってたけどなぁ。朝起きられないのも、起こしてくれない母親のせいにしたりしてさ。そういうのもないんだ?」

「……」


ここで初めて、葵瑞が黙り込む。

確かにリハーサルの時より、司会者が切り込みすぎたかもしれない。


「今時の子は思春期も早いって言いますからね。そういうのは気恥ずかしいんじゃないですか?」


生意気な受け答えばかりだった癖に、都合が悪くなると突然黙り込む。

これだからこの歳の子供は、と織は内心イラつきながらも華麗にフォローして見せた。


「あ、そっかそっか。ごめんねぇ、おじさんデリカシー無くて。で、今日はそんな新体制の七人初の新曲を初披露してくれるんだって!?」

「はい! 僕達の新しい魅力が詰まった一曲になっているので、楽しみにしていてください!」

「それでは歌っていただきましょう! BLUE BIRTH+で、『Revolution』」


陽七星がトークコーナーを締め、ステージに移動し位置に着く。

観覧席のファンも、大勢のスタッフも、画面の向こう側の視聴者も、その静かな動作と沈黙に息を呑む。

そんな誰もが固唾を飲んで見守る中、イントロがかかって、全員が音に合わせて動き出した。

歌い出しは陽七星のソロパートからの、海のソロパートに繋がる。

そしてその後に、満を持してハイトーンボイスの葵瑞の歌声が響き渡り、それを合図として激しいダンスが始まった。


この曲のテーマを一言で言うなら、タイトルの通り『革命』だ。

明らかに、今までのBLUE BIRTHと違うことは一目瞭然だった。

ただその変化を、進化と、革命と、伝説の幕開けと呼ぶ者がいれば、衰退、終幕、終わりの始まりと呼ぶ者もいるだろう。

どちらにせよ、今日というこの日が、この曲がその意味を持つということは、誰の目から見ても明らかだ。

そんな、4分30秒だった。


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