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ロストユースに青を知る  作者: 志結
第二章
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第二十話《青さ》


「離せって! うぜぇ!」

自販機が並ぶ廊下に誰も居ないことを注意深く確認して、陽七星は葵瑞から乱暴に手を離した。


「おいガキ、調子に乗るのもいい加減にしろよ」

「なにが」

「記者の前であんな発言して、俺らのイメージが落ちたらどうしてくれんだよ。うちは一応表向きは、仲の良さが売りでやってるっつーのに」


自販機のボタンを押して、陽七星はペットボトルを取り出しミネラルウォーターを飲み始めた。

勿論、自分の分だけだ。

葵瑞に奢る気など更々無いらしい。


「はっ、そんなことの為に嘘吐いてまで必死なのかよ。そうでもしねぇと、売れる自信がないんだろ」

「は?」

「本物の自分で勝負する自信がねぇんだろっつってんの。何にビビってんの?」

「てめぇ!」


挑発にまんまと乗って、陽七星は葵瑞の胸倉を掴んだ。

睨んでも怯まない葵瑞の姿勢に、逆に気押されそうになる。


「俺は自分を偽ったりしない。飾らないありのままの俺で、おまえらに勝ってみせる」


生意気な葵瑞の言葉に、一瞬陽七星の目の奥に何かが灯る。

その中に何を見たのか、この時の陽七星が知る由もない。


「……ガキが偉そうに。俺様にナマこいたこと、後悔させてやるよ」


ここで殴りつけたところでどうにもならない。

それよりも、もっといい方法がある。

より辛い、より苦しめるやり方が。

葵瑞を突き飛ばし、陽七星は不敵な笑みを浮かべ戻って行った。




真っ暗闇の部屋の中、布団に包まりスマホを眺める一人の少女がいる。

映るのは、会見で話す陽七星の姿。

他の人なんて全く興味が無い。

何度も何度も、陽七星が喋るシーンを巻き戻しては繰り返し見つめる。


『えっと……正直、僕らもつい先日、事務所の方から聞かされたばかりで、困惑している部分もありますが、皆さんに受け入れていただけるよう、今まで通り精一杯頑張っていきたいと思いますので──』


何度も、何度も、コマ送りにして彼の言動と表情から真意を汲み取ろうとする。


「……あぁ……そっか……。そうだよね……ホントは嫌だよね……。だけど事務所の決定だから、仕方なく我慢してるんだよね……」


何かに取り憑かれたように呟く彼女の部屋の壁は、HI7SEのポスターや写真でびっしり埋まっていた。

それはプライベートのもの等もあり、その様子は狂気を孕んでいた。


「私が……なんとかしなきゃ……。……待っててね。今、助けてあげるから……」


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