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ロストユースに青を知る  作者: 志結
第二章
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第十八話《不変の祈り》


翌週、大勢のマスコミを集めた大規模な記者会見が行われた。

司会者の呼び声と共に、七人が壇上に姿を表す。

一人明らかに違うメンバーが混ざっているその状況に、そしてそれが明らかに子供であるということに、記者達が動揺しながらもフラッシュを焚く。


「えー、デビューしてから五年間、これまで六人で活動してきたBLUE BIRTHですが、この度新メンバーを一人加えまして、新体制の七人組ユニットとして活動することが決定致しました!」


その発表に、記者達がどよめく。

動画サイトにて生配信もされている為、画面の向こうでは大勢のファンが驚きを隠せずにいることだろう。


「グループ名は読み方は今まで通りなのですが、BLUE BIRTH+というように新たに+を付けた表記となります。ではまず、メンバーの陽七星くんからコメントをいただきましょうか」


記者に向かって笑顔で手を振っていた陽七星は、爽やかに返事をしてスタッフからマイクを受け取った。


「本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。BLUE BIRTH+のHI7SEです。突然の発表で、ファンの方を驚かせてしまい申し訳ないという想いと、えっと……正直、僕らもつい先日、事務所の方から聞かされたばかりで、困惑している部分もありますが、皆さんに受け入れていただけるよう、今まで通り精一杯頑張っていきたいと思いますので、今後も応援のほどをよろしくお願い致します」


その丁寧な様子は、記者からすればいつも通りの元天才子役の好青年にしか映らなかった。

しかし、ファンは違う。

陽七星のらしくない言葉の詰まり方、微かに見せる戸惑いの表情、本当は何か言いたいのではないかと思わせる空気感を感じ取った。

当然それは、演技力が自慢の陽七星が敢えて醸し出しているものなのだが。

そんなことを知る由もないファンは、陽七星の異変にいち早く気付いた。


「それでは、新メンバーの方にもご挨拶と自己紹介をお願いしましょう」


真ん中に立たされている葵瑞に、スタッフがマイクを差し出す。

それを受け取った葵瑞は、小さな声で簡潔に言葉を発した。


AZU(あず)です。よろしくお願いします」


あまりの短い挨拶に、その続きを待つ会場が一瞬静まり返った後、迷ったようなパラパラとした拍手が起き、それは次第に大きくなっていった。


「あ、あれ? 緊張してるのかな?」

「すみませーん、この子まだカメラ慣れしてなくて。授業参観みたいに緊張しちゃってるのかも」


戸惑う司会者の振りに、陽七星からマイクを奪った海が咄嗟に答えた。

まるで保護者かのような海の発言に、会場からどっと笑いが起きる。

これ以上葵瑞に喋らせてはいけないと、必死に言葉を尽くし、その後も司会者との会話を引き延ばした。



その会見の様子は瞬く間にSNSで拡散され、夕方のワイドショーでも各局で取り上げられた。

ファンの反応は、大方同じだった。


「新メンバーってなに? 私は六人のブルバを応援してきたのになんで増やす必要があるの!? しかもいきなりセンターだなんて! HI7SEとUMIのダブルセンターがいいんじゃん!」


「てか、新メンバーの子なんか生意気そうじゃない? いきなりセンターで調子乗ってんでしょ。他のメンバーも絶対やり辛いって」


「それよりHI7SE、様子おかしくなかった? 明らかに新メンバー加入に納得してないってかんじだったよね? 気付いたのうちだけ?」


「絶対事務所の上の連中の独断だろ。てか13歳ってまじ? あんなガキ推す気になんかならねぇんだけど。それにあの六人の歌とダンスに着いていけるわけねぇだろ。パフォーマンスの質落ちたら萎えるわぁ」

「おまえさっき上がった動画見てねぇの? 七人でのダンス動画上がってたけど、生意気にもあいつ踊れてんだよ。でもなんつーか、いけすかねぇかんじ。余計に可愛げなくて腹立つわ」


「UMIもフォローすんの必死だったじゃんか。ただでさえ男メンと絡んでんの地雷なのに、あんな中坊と喋ってんの見てらんねぇわ」


元来既存のグループに新メンバーを加えるという現象は、大概ファンは快くは思わない。

愛着が湧いたものの形を変えることは、それを受け入れることは、とても難しい。

自分が愛情を向けているものが、まるで今のままではダメだと否定されているような気持ちになるからだ。

問題は、決して葵瑞自身にあるわけではない。

それでもファン心理としては、彼を受け入れること=今までの好きの気持ちを蔑ろにすること、の方程式が出来上がってしまう。

簡単にそれを受け入れてしまえるようでは、彼らのことを本当に好きだとは言えない、本物のファンではないという証拠のように思えてしまうものなのだ。


「あー、ブルバ終わったな。俺そろそろ降りよっかな」

「あたしは絶対無理! ブルバをトップアーティストにする為に、どれだけ貢いだと思ってるの!? 今更それが全部無駄になるなんて、そんなの受け入れられない!」


「六人がこんな変化を望んでいるなんて到底思えない! こんな時こそ、うちらがなんとかしてあげなきゃ!」


実際のところ、これに関してはファンも悪くない。

進化の希望も、不変の祈りも、どちらも美しいものなのだから。

愛着が強いものほど、拒否反応が出てしまうのは、受け入れられないと嘆くのは仕方の無いことだ。

まるで踏み絵でもさせられるかのように、ファンを選別するような事務所のやり方に、皆憤りを感じずにはいられないのだろう。

今まで応援してきた、自分達が支えてきたという恩を仇で返されるようなこの事態に、怒髪衝天してしまう気持ちも分かる。


しかしそれを免罪符にすれば、何をしても構わないということでは決して無い。

罪の無い人間を責め立て、追い詰め、袋叩きにしていい理由は何処にも無いのだ。

皆、理屈ではそう分かっている。

それなのに、人間とは愚かな生き物だ。

倫理的には破綻してると分かっていても、正義を守る為という免罪符ができてしまえば、どんな醜い行いも正当化できてしまう。

行き場の無いファンの憤りは、全て新メンバーである葵瑞一人に余す事なく向けられた。


((新メンバーを、許すな!))


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