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いつか深海に眠るとしても  作者: 丘上
第二章 スキャナー星系
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33.星屑



 ロードレース仕様の(無登録)バイクが公道を疾走する。アクアブルーの差し色が涼しげなパールホワイトのフルカウルが輝き、奥に引っ込んだフロントライトがげっ歯類のちょこなんとした口を思わせ、サイドランプは切れ長の瞳が真紅で凛々しい。


 愛車のハムスター(違法改造)にまたがる私は真っ赤にテカるライダースーツ姿。赤い服装って趣味じゃないけど正体不明のコーディネーターが強く推してくる。まぁ映像映えとか言って無駄にGスーツを着させられるよりはマシか。


 時速二百三十キロメートル(法定速度ぶっち)で夕焼けを浴びる。本当は人工灯。エスキモアの生活圏は地下だから、光の色も時刻に合わせて変える。閉鎖空間を意識すると精神がおかしくなる人が多いからって対策らしい。ふーん。


 猛スピードでバイクを駆る私を周囲から舐めるように空撮しているドローンはマーサが操作している。とんでもない無駄特技が眠りから覚めたわね。

 物悲しいサックスの音色が中心のジャズを流してヒキの絵で赤い背景に黒いシルエットの私とか、古典的が逆に新しくてエモい演出をしばらく見せてからの、唐突にバイクを横滑りさせていかがわしい廃工場のような建物に突入した。地下世界は天井が低くて公道を走ってなおどこもデパ地下に感じるけど、強いて言うなら港の倉庫街のような雰囲気の一角ではある。


 両開きのスライド鉄板の入口に開いた車一台通れる隙間に滑り込み、二十メートルほど前輪後輪のグリップを頼りにブレーキしつつも勢いがありすぎていかついオッサンをはねた。ナイスクッション。


 「なっ、カチコミか」


 オッサンズが何者か、もうそういう業界用語を口にするだけで説明不要だからありがたい。なんか半裸で吊るされてボコられた男を囲んでマフィアが十……、三人、あ、内蔵逝ってるオッサン除いて十三人か。

 キュイーッと止まると後輪横に取り付けた筒から水平二連ショットガンを抜いてズドン。よっこらせとバイクを降りて優しく横倒しして振り返ってズドン。弾込めだるいから捨てる。プー兄さんと何故かアビャーナにも片手で銃をくるんと回して装填するアクションを要求されて、調べてみたけど無理無理。ストック切るなどの改造を施したうえで実践したら肩外れるかも。私筋力ないんだから勘違いすんな。


 「くそっ、撃てっ」


 ショットガンとは反対側の筒から鞘ごとサーベルを抜いて抜刀。斜めに刀身をかざして銃弾をいなす。私相手に豆鉄砲て、プッ。

 何発か弾きながら歩み寄って首チョンパ。


 「お、お前あの女帝だろ、なんで?」

 「透明とはいえフルフェイスでよく分かったわね。なんでって、何が」

 「なんでこんなことを……?」

 「えー? 私たちアウトローじゃん」

 「……?」

 「殺し合う理由なんて目が合ったから、でよくね? それともあなたたち、愛と平和(ラブ&ピース)か悪魔召喚のために吊るしてんの」


 夜道でナマハゲと出会って逃げたら袋小路だったみたいな黒ひげ危機終了を見届けて、私はやや上から撮っているカメラを見上げて言った。


 「法に守って欲しけりゃ法を守れ」


 名言ぽい寝言は達筆なテロップになってブーメランに刻まれてどっか飛んでった。


 吊るされて呻いている人は無視してバイクに歩きながら独りごちる。


 「もっとたくさん財布落ちてないかなー」


 “心当たりのある方はこちらのリンクからとんで御一報を。アタナシア・レミングス”


 デデンデン、とか世紀末なBGMでシメた動画を鑑賞しながら文句をつけた。


 「編集悪意ない? まず私言った覚えのない台詞だらけなんですけど」


 ヘルメットで口元隠れてるからっていじり放題ね。アウトローは目が合ったら殺す説ってB級シネマでももう少し筋を通すわこんなイカれた女知らねーよ誰だよ。


 『こんばんは、いい天気ですね』

 『地下で初めて言われた』

 『やっぱ二百キロは超えないとバイクに乗る意味ないと思うの』

 『はねといて神経凍ってんのか』

 『あなたたちのおかげで飛ばせたわ。ありがとう』

 『あんた。なに言って……』

 『クズでもひとつくらいは礼を言われて死にたいでしょ』

 『いや殺したあとに言っ━━』

 

 そんでカメラに向かって。


 『ショットガン外した。テイクツー(おかわり)ある? ない、あっそ』


 借金取りから逃げた末路みたいな男は無視して帰りながら。


 『バイクを飛ばしながらバトりたいなー』


 確かこんな感じ。大差ない? 失礼な。


 「クレームは兄者に言って」


 近くのテーブルで名前の知らないスイーツをむさぼるマーサはこちらも見ずに応えた。そっかー、じゃあしゃーないかー。イカレ野郎のフィルターを通した私は、そりゃイカれてるだろうなー。


 現在地上は戦争がなくなった。宙賊も活動の噂を全然聞かない。ほとんどの母体がマフィアだから避難してるっぽい。でもクラウドファンディングで集めたお金はたくさんあるわけで。いったんお休みを宣伝して集金はストップしているけど、なにもしないのは持ち逃げみたいで気分が悪い。だからお祭り騒ぎで国賓扱いしてくれるパプリカ国に滞在中に反社狩りしてみたけど……、宙賊にダメージを与えるなら大国に所属する反社を叩かないと意味ないし、それやったらやったで敵の大国の掃除をしてあげているだけの気がするし。そろそろ潮時かな。


 私パプリカの庶民からは人気だけど貴族からは内心マフィア扱いされてるみたいだから、パプリカのホテルは早々に引き払い、雪原に着陸したグリンカンビで羽を休めている。この生活も飽きたし動きましょ。


 「次はドグ・カルマ星系とやらに行ってみようかな」


 マーサに動画検閲の声をかけられて食堂に来て、早めの夕食をとりながらまったりしていたから他に人はいない。


 「軽く調べてみたけどポストアポカリプスな惑星らしいね」


 マーサが顔を向けて応えた。いつも眠そうなダウナー系の表情が気怠げに陰る。食べてただけじゃん口元にクリームついてるわよ。


 「文明が滅んでいたら企業はないでしょ」

 「そうだけどそうじゃなく、雰囲気の話。テラフォーミングは自然豊かだったころの地球に寄せる。私たちのいた惑星カダナはその他大勢の成功例。エスキモアは海の生成に失敗して予測が外れて気温が上がらなかったのと、住みやすくなるまで地下暮らしのつもりが地下が住みやすくなって現状が好ましいとなった。ファウトゥースは成功例、だったけど今は見る陰もない」

 「へえ?」

 「大筋は地球と同じみたい。気候も生態系も一度バランスが崩れたらもう手遅れ。いったん全人類退避してテラフォーミングのやり直し、をするくらいなら新しい惑星に引っ越すから諦めるしかなくて、千年近くかけて緩やかに砂漠化していって、地下に都市を築いてなんとかなるから誰も真剣に対策をとらないまま、地上はここ百年くらいで一気に環境が終わっちゃった、らしい」


 エスキモアと似ているようで違うのか。ここの地上も寒くて荒ぶってるけど原生林だらけには見える。原生っつーか種は地球産だけど。

 カダナは自然崇拝な価値観が偽善というかやらせというか、鼻について好きになれなかった。思想を押し付けないだけマシだとしても、都市設計に影響を与える程度には景観を口にする人種が多くて敬遠していた。あんな人たちでも意味はあったのかも。


 マーサは炭酸ジュースをグビグビ喉を鳴らして一気飲みしてからプハァとおとなしめに息を吐いた。いいトコのお嬢様が庶民に染まり始めて満喫してやがる。気候に合わせたニットワンピがジャージに変わるまであと一年ってとこか。私はスタイリストが無言で用意してなければ万年軍服。衣食住は考えないのが楽でいい。


 「その百年で社会も荒れたような感じ。地球と同じ結果イコール無能って評価だから、王侯貴族の権威が地に落ちた。庶民の目には、身近な庶民で構成されて直接役に立つ企業のほうが有能に見える。貴族がトップの軍需産業も下請けから拡大していって、いつの間にかトップの貴族は有名無実のお飾りになって企業が実権を握った。ああそうそう」


 マーサは何かを思い出して、端末をつついて検索した。


 「貴女日本史好きだったわよね。要は江戸時代ね。川柳でエンペラーの悪口を言っても罰されないくらいには権威がなくてナメられて、フジワラが潰される源氏物語を真似てトクガワが潰される作品を出したら発禁になって作者が不審死するくらいにはサムライが強い社会。あっちは企業、そしてロボットを開発所有する武士でもある」

 「軍人も企業の言いなりなの?」  

 「軌道エレベーターが使えないほどではないけど、一日中砂嵐がひどくて航空機は使えない環境で、エスキモアと同じく地上を戦争用にして地上兵器で戦う、つまりトロくて弾が当たりやすいロボットが主役の星で、ひとりのエースより数の多い庶民のほうが強いわけ。軍だって将校は貴族でも下士官以下圧倒的大多数は庶民だもの。王侯貴族なんてナメられたら終わりよ」


 それはそう。ナメられてぶっ飛ばせない者は唇噛んで下向くだけ。


 「そんな星だからエースを脅威と思ってない。空を飛べない貴女もナメられる。大丈夫? ってその顔問題ないか」


 あら、笑ってた? 格下にナメられると楽しいもん。まとめて潰す時の爽快感がもう。

 マーサは端末を見て言った。


 「スキャナー星系は南国テイストな星を選んでたみたいね。エドゥー星系、ドグ・カルマ星系、あとヤッサンゴ星系にワープゲートが繋がってるけど、観光が楽しそうなヤッサンゴ星系は行かないの? 年中暑くて庶民は半裸にターバン、貴族はクーラー内蔵プレートメイル装備の中世趣味って面白そうなのに」


 ぐっ、ちょっと気になるじゃない。寄り道してから、ってゲート使用料が莫大だったチッキショー。


 ワープゲートはひとつの星系につき三つの星系に繋ぐ、と国際ルールで決まっている。絶対かどうかは自信ないけど。繋ごうと思えばもっと繋げる。でもそうはしない。宇宙は場所によって時間の長さが違う。陽が登って沈んでまた登る一日を二十四で割った一時間の長さが違うから使う時計さえ違うし、同じ時計で比べても重力と速度で時間は変わるから、星系間で共有は管理しきれない。電車の運行表(ダイヤ)のような複雑な運用は事故のもと。


 というもっともらしい理由は建前。本音は、地球を筆頭に関わりすぎたくない。全星系の全人類が未来永劫争わない世界はありえるか? 世界どころか無限の世界線のどこにもない。

 宇宙の戦闘は無理があるって技術の壁があるから今まで起きていないだけであって、星間戦争はいつか必ず起こる。というかそう想定できない人は責任者になってはいけない。危機管理ゼロの無能は末席に座れ。

 いつか来る最悪の日に係る最悪の事態は、ワープゲートを通って奇襲されること。だから直接繋がる星系は自分たちで選んだ三つまでにする。相手の星系も選ぶ枠は三つだから相思相愛が前提だけど。


 「この先面白そうな星系なんていくらでもあるでしょ。今回は間接的とはいえ喧嘩を売られたからね。ポストアポカリプスの見学に行きましょ」


 もう身内になったナハシュたちの不幸の元凶もそっちに繋がってたみたいだし、貴族と火遊びしたらどうなるか教えてやんよ。


 数日後、暇になったから旅立つと動画で伝えて、街をうろつきマフィアのお礼参りを待ったけどこないからグリンカンビ浮上。

 重力を振り切りエスキモアが凍ったスイカに見えてきたあたりで艦内に警報が鳴る。ほっほう、国のお礼参りときたか。


 衛星軌道上のSS、宇宙ステーションにくっつく軍港から敵機多数が接近してくる。端末経由で艦橋から送られたデータをエクステが見やすく整理して脳内に映す。ロボット約二千八百両、コルベット約四百機、駆逐艦十六隻、重巡三隻、戦艦一隻。所属、スタックス馬鈴薯国、宙域方面軍軍団の全戦力を投入してきた。

 アテナは太陽に近付いて発電していたから離れている。不安とかじゃなく逆、巻き込まれなくて良かった良かった。

 ジャミングされて地上に電波は届かない。つまりこの状況をリアルタイムで民衆に伝えることは出来ない。とはいえ無茶する。こんな近場で騒いだら他国には筒抜けじゃん。まぁ他国も見て見ぬふりするとか協定済みか。

 ああ、コイツらひょっとして、短距離転移で逃げることを期待している? 私が恐れをなして逃げた絵を撮って自分たちが勝った体裁を演出しようとか企んでる?


 エスキモア、最後の最後までナメてくれちゃって、もう完膚なきまでに潰す。


 自室に帰ってGスーツを着てマモちゃんへ急ぐ。担当者が発進口で待機させてくれているはず。他の面々も、言われなくても即座に動いているはず。それなりに訓練は重ねてきた。


 居住区を抜けてほぼ無重力になると軽く跳んで壁のバーを掴む。移動中、誰の仕業かオープン回線が繋がれて敵軍の声が聞こえた。


 『ブルーエンプレスぅ、ただで去れると思うなよ』

 『お前が旅立つ先はあの世だぁ』

 『我がジャガリコット子爵家は終わった。せめてお前も道連れにしてやる』


 [くっくっくっ、宙賊と共闘しろなどとフザケた命令を出した国家にキレるでもなく、唯々諾々と従った挙げ句に当然の如く宙賊として始末されて、私に名誉を傷つけられたつもり? それ逆恨みって言うのよダッサ。お前たち、まっとうに生きる民を守る盾であり剣である貴族教育来世で学び直せ。今世は見込みなしだから私が引導を渡してあげる。王侯貴族が命より誇りを重んじる意味も知らない下衆共、全員まとめてかかってきなさい]


 『だ、黙れぇぇ』


 『クックック、ラティシス、イカす啖呵だが俺にも言わせろ。折角急いで回線繋いだのに台無しにすんな』


 [プー兄さん?]


 『スタックス馬鈴薯軍に所属する諸君、今から散るキミたちに俺がありがたい話をしてやるから傾聴せよ。胸に熱いモノを抱えた漢なら誰もが夢見る一生に一度っきりのロマン、自爆の美学についてだ』


 『はぁ?』


 『戦いに次ぐ戦いの人生を貫く時、その全てを圧勝なんて都合の良い話はない。所詮無双なんて想像力の足りないハナタレ小僧が書く箱庭世界(フィクション)の三文小説だ』


 イタ、ナンカ刺サッタ。


 『肉を切らせて骨を断つ。それほどのリスクを負わなければ倒せない強敵だって現れる。それでも倒せない敵はどうすればいい。それでも倒さなければいけない敵はどうすればいい。もうなんの手もうてない、最後の手段が自爆だ』


 待機所に到着、クレーンに吊られてコクピットへ。


 『自爆には二種類ある。ひとつは特攻。戦闘機に爆弾を積んで戦艦に体当たりする、いわゆるフォックス4だ。カミカゼアタックとか実例は数える程度だが、効果はまったくない。結果だけを問うなら無駄死にだ。しかし、過程も無駄なのか? 否。そのパイロットには、万にひとつの勝利の可能性のためなら自分の命を賭けてもいいギャンブルがあったのだ。絶望的に高確率で負けるのだから結果は当然負けではあるが、もう他に手段がなく、わずかな可能性のために勝負したのだ。家族とか名誉とか意地とか人によって命より重いものは違うとしても、そこまでして勝って、守りたいナニかがあったのだ。これが後世の人間すら熱くさせるロマンだ。諸君にはあるのか?』


 『……チッ、下らねぇ、なにが言いてぇんだよ』


 『もうひとつは、結果だけを見れば自殺だ。秘密とか家族とかプライドとか人によって命より重いものは違うとしても、死んでも守りたいナニかのために死ぬ人がいて、守られた誰かはより重くなった自分の命を抱えてその人の分まで生きる。これが託し託された人間を燃やすロマンだ。諸君にはあるのか?』


 “……うっ、ぐぅ”


 通信は入ってないけど、コクピットで身体を丸めて声を殺して泣くナハシュの姿がありありと目に浮かんだ。


 『ところで、諸君の乗る全ての宇宙戦用兵器はウーミンインダストリの供給、もしくは戦艦などは一部メインシステムに改装を受けているが、その全てに自爆装置が組み込まれていることをご存知かな?』


 『…………はぁぁぁぁ?』


 全てだったのか。それはビックリ。敵さんも頭真っ白みたい。驚きすぎてついてこれない敵に頓着なくプー兄さんは話し続ける。


 『流石に宙賊と違って人間ごと木っ端微塵とかではなく、CPU回りの消去だけどな。自爆する必要はどこにあるのか。結論だけ言うと諸君の乗る兵器のCPUは人間の脳だ』


 『…………はぁぁぁぁ?』


 ダウト。どの生物の脳かは分からないしどうでもいいって言ってたじゃん。まぁ敵に正直に話す必要はないけど。


 『それで諸君の自爆は二種類のどちらか? どちらでもない。諸君らの死に様は、自爆ではなく口封じと呼ぶのだよ。後ろ暗いことをしなければ新しいモノを生むことも出来ない企業に、後ろ暗いことをしてバレると逆恨みする諸君、ロマンのかけらもない同士の組み合わせはいっそ哀れだね』


 自分の意思で選ばなきゃ自爆ではない、か。語るねぇ。


 『何故自爆装置をつけるのか。自分でつけるのであれば奥の手だ。愚かな戦術ではあるがそこまでして勝ちたいのだから好きにすればいい。熱い死に様に称賛を贈ろう。諸君の場合はどうか。企業は諸君らを信用していないから自爆装置をつけた。どうせ諸君は負けて鹵獲されるか、自分はベイルアウトして機体は鹵獲されるか、ブラックマーケットに横流しするか、ちゃんと使ってくれるなんて期待していないからいつでも処分できるようにしてある。ロマンがないとはこういうことだ。理解できたかな』


 『っるっせぇ、だから結局なにが言いてぇんだっつってんだろ』


 『鈍いなぁ。味方にも信用されず生殺与奪の権を握られたカスの死に様はこうだっつってんだよ』


 脳内レーダーに表示された敵影全てが消えた。全機CPUが遠隔破壊されたらそうなるか。どういう条件で自爆するのか、CPUが判断するパターンもあるのか、一機鹵獲してそれが分かってしまえばプー兄さん得意のクラッキングで作動させられちゃうのか。端末の話と同じ。いつでも繋がるってセキュリティが脆弱なのよね。しかもSSより惑星側に向けてジャミング展開しているから自分たちはノーガードじゃん。そもそも外部から自爆させられるシステムを作らなければこうはならないのに、コワ。


 『超電導ミサイル、撃て』


 グリンカンビに迫っていた敵軍手前でミサイルは爆発した。威力は全然たいしたことはない。本来の使い方はスモークを早く散らすための爆弾。絶対零度近くまで冷やされて超圧縮された固形酸素の爆発を、スラスターにも使われる電磁力の反発で増幅させた、宇宙空間でもなんか凄い爆風が発生するヤツ、程度の兵器。以前言った気がするけど、宇宙で爆発は脅威ではない。空気抵抗がないから止まることなく猛スピードで押されるだけ。


 電源が落ちて宇宙を漂う敵軍は押された。エスキモアへ。


 『あ、ああ』

 『いやだ、こんな死に方イヤぁ』

 『なんで、誰か、助けにこいよっ』


 機体とは別に生命維持も兼ねたパイロットスーツの電源は生きているから、見苦しく泣き喚く声がいつまでも続き、私は回線を切った。


 大型艦は地表に、いや、その土地を持つ国に撃ち落とされるか。コルベットは衝突するかも。ロボットは大気摩擦で燃え尽きるかな。もれなく大惨事、見届ける気にもならない。 


 私はマモちゃんから降りた。出番なかった。


 これで良かったような、消化不良のような、どっちつかずの感情を持て余したメンバーが普段集まる談話室で互いに顔を見合わせて苦笑した。ナハシュも堅苦しさが和らいだような。


 私はカメラを回すマーサに合図した。去る前に挨拶くらいはね。


 「スキャナー星系のみなさん、短い間でしたがそこそこ楽しめました。今回の騒動によって各自貴賤の在り方を見つめ直すきっかけになれば幸いです。また情けない国が増えたら赤い流星群を見に遊びに来ますね。ごきげんよう」


 「エスキモアの星人性が平和主義に変わるに晩飯賭けるっス」

 「いえコロニーも含めて、スキャナー星系性が変わるのでは」

 「ワープゲートの相手も変わるんじゃね?」

 「おー、急がないと」


 もう少しこの星で暴れたかったけど、エネルギーは次にとっとくか。


 じゃあねスキャナー星系、行くわよ次の目的ドグ・カルマ星系。




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