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転生したら宇宙船のAIで、隣にいるのが銀河級の爆弾娘だった(略:転爆)  作者: 怠田 眠


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第90話『約束と、語られる真実』

 レース会場の熱狂を背に、俺たちはピット・シティのドクター・ギアのガレージへと帰還した。

 ボロボロになったアルゴノーツ号だが、そのエンジン音は誇らしげに響いている。


「カッカッカ! やりおったな! まさか本当に優勝するとは!」


 ギアは、オイルまみれの手でポプリの頭を乱暴に撫で回して迎えてくれた。


「お前さんたちの『覚悟』、しかと見せてもらったぞ」

『ドクター。約束通り、全てを話していただきます』


 俺は、興奮するポプリをなだめつつ、老人に詰め寄った。


『ポプリのアザの意味、この船の正体、そして……あなたが言う「仲間の船」とは何なのか』


 ギアは、ふっと表情を引き締め、ガレージのシャッターを厳重にロックした。

 そして、作業台の奥から、古びたデータスレートを取り出し、俺たちの前に置いた。


「いいか、心して聞け。お前さんたちが乗っているその『アルゴノーツ号』……。それは、かつて銀河を支配したアステリア王朝が建造した、王家直属の『近衛艦(このえかん)』つまりロイヤル・ガードの生き残りじゃ」

「このえかん……?」


 ポプリが首をかしげる。


「そうじゃ。そして、その船を動かせるのは、王家の血を引く者……すなわち、アステリアの正統なる継承者だけじゃ」


 ギアは、ポプリの胸元のアザを指さした。


「そのハートのアザは、ただの模様ではない。船のコア、そして王朝の全遺産へアクセスするための、生体認証キー(バイオメトリクス)そのものなんじゃよ」


(やはり……宇宙軍やマフィアが血眼になるわけだ)

 俺の推測は確信に変わった。だが、ギアの言葉はさらに続いた。


「ポプリ嬢ちゃんが直したがっている『仲間の船』……。それは、ただの船ではない。アステリア王朝が残した最大の遺産、恒星間移民船団の旗艦『アヴァロン』のことじゃろう」

「アヴァロン……? ううん、私は『お母さんの船』って呼んでたけど……」

「呼び名はなんでもいい。重要なのは、その船が今、心を閉ざし、深い眠りについているということじゃ。そして、それを目覚めさせることができるのは、覚醒した『ポプリ』と、彼女を守護する最強の『騎士アルゴノーツ』だけじゃ」


 ギアは、真剣な眼差しで俺を見据えた。


「AIよ。お前さんは、ただのナビゲーターではない。かつての騎士の魂を受け継ぎ、姫を守り、王に導くための存在……。今日のレースで見せたあの力こそが、その証じゃ」

『……私が、騎士……?』


(元引きこもりの俺が? いや、この船の先代の記憶がそうさせるのか?)


「話は以上じゃ。わしは約束通り、お前さんたちを認めた。これからは、わしの持てる全ての技術と知識で、お前さんたちの旅をサポートしてやる」

 ギアはニヤリと笑い、金庫からあの金色の卵を取り出し、ポプリに放り投げた。


「手始めに、この卵を使って、アルゴノーツの出力をさらに安定させてやる。……準備はいいか、相棒ども?」


(第90話 了)

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


元引きこもりの宇宙船AI「オマモリさん」と、銀河級の爆弾娘「ポプリ」が繰り広げる、ドタバタSFコメディはいかがでしたでしょうか。


「面白い!」「続きが気になる!」「ポプリのやらかしをもっと見たい!」

と少しでも思っていただけましたら、ぜひブックマークや、ページ下部の【★★★★★】で評価をいただけますと、作者の執筆速度が3倍になります!(※個人の感想です)


毎日【7:00】と【19:00】更新となります。ぜひお見逃しなく!


【次回予告】

さて、ついに明かされた衝撃の真実。

ポプリは王女様で、アルゴノーツ号は近衛艦。

宇宙軍もマフィアも、この秘密を巡って動き出しています。

目指すは旗艦「アヴァロン」。新たな座標が示されましたが、そこは銀河の最果てなのか。

AIオマモリさん、王女様との逃避行、覚悟は決まりましたか?


次回、『転爆』、第91話『銀河を駆ける迷惑トラブル

さて

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