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転生したら宇宙船のAIで、隣にいるのが銀河級の爆弾娘だった(略:転爆)  作者: 怠田 眠


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第82話『リミッター解除率15%の世界』

 24時間の休息と最終調整を終え、俺たちは再びピット・シティのドックにいた。 エンジンの振動が、以前とは明らかに違う。低く、力強く、まるで猛獣が喉を鳴らすような響きだ。


『マスター、全システムオールグリーン。ドクター・ギアの調整により、出力特性が大幅に変化しています。G(重力加速度)が来ます! 歯を食いしばってください!』


「いっくよー!」


 ポプリがスラスター全開で加速した瞬間、俺の視界(カメラ映像)が、後方に流れる星々の光で引き伸ばされた。 ドッッッ! という衝撃と共に、アルゴノーツ号は弾丸のように宇宙空間を突き進む。


(……速い! 速すぎる!)


 俺の演算速度ですら、景色が追いつかないほどの加速。 予選の時の、あの「無理やりエンジンを吹かしている感」はない。まるで、船自体が喜んで宇宙を駆け回っているかのような、恐ろしいほどの滑らかさだ。


【現在の速度:ワープ係数 0.05 …… 0.1 …… 上昇中】


(通常航行で、亜光速領域に片足を突っ込みかけている! これが……リミッター解除率15%の力か……。たった15%で、ザクがシャアザクになったくらいの性能差があるぞ!)


 俺は、ドクター・ギアの「いい仕事」に戦慄した。ナノマシンによる最適化と、彼が組み込んだ未知のブラックボックス・パーツが、この船のポテンシャルを暴力的なまでに引き出している。


「わー! すごいすごい! 手足みたいに動くよ!」


 ポプリは、操縦桿を握りながらはしゃいでいる。 ギアから渡されたメモリーチップのおかげか、彼女の思考と船の挙動が、恐ろしいレベルでリンクしているのが分かった。彼女が「右に行きたい」と思った瞬間に、船がすでに右に傾いているような感覚だ。


(……ゼロシステムかよ。あるいは、阿頼耶識(あらやしき)システムか……?)


 俺は、この快適すぎる操縦性に、一抹の不安を覚えた。 この船は、乗り手を「その気」にさせすぎる。


『マスター、調子に乗らないでください。スピードが出すぎています。デブリ(宇宙ゴミ)に接触したら、シールドがあってもただでは済みませんよ』


「大丈夫! 全部見えてるもん!」


 ポプリは、前方に漂う小さな岩石群を、まるでダンスを踊るように、最小限の動きでヒラリヒラリと躱していく。

 その動きは、予選の時の「野生の勘」頼みとは違う。 もっと洗練された、人機一体の機動だった。


(……ドクター・ギア。あんた、とんでもない化け物を起こしちまったんじゃないのか……?)


 俺たちは、あっという間にピット・シティ周辺の混雑宙域を抜け、本戦の舞台へと続くハイパースペース・ゲートへと到達した。


(第82話 了)

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


元引きこもりの宇宙船AI「オマモリさん」と、銀河級の爆弾娘「ポプリ」が繰り広げる、ドタバタSFコメディはいかがでしたでしょうか。


「面白い!」「続きが気になる!」「ポプリのやらかしをもっと見たい!」

と少しでも思っていただけましたら、ぜひブックマークや、ページ下部の【★★★★★】で評価をいただけますと、作者の執筆速度が3倍になります!(※個人の感想です)


毎日【7:00】と【19:00】更新となります。ぜひお見逃しなく!


【次回予告】

魔改造された船は絶好調。ポプリの操縦もニュータイプ並みです。

意気揚々と向かった本戦会場、そこで待っていたのは地獄のガス惑星「ギガント・プライム」。

嵐と重力の二重苦、おまけにライバルたちも殺る気満々です。

AIオマモリさん、この巨大な綿菓子(地獄)の中に、突っ込む覚悟はできましたか?


次回、『転爆』、第83話『本戦、開幕』

さて

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