表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら宇宙船のAIで、隣にいるのが銀河級の爆弾娘だった(略:転爆)  作者: 怠田 眠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/108

第8話『間に合わせの装備(間に合ってない)』

『マスター、依頼を受理した以上、遂行するのは仕方ありませんが、無策で下水道に突入するのは論理的自殺行為です!』


 俺の悲痛な叫びは、報酬の6,000クレジットという数字と、「珍味」という言葉に浮かれるポプリには届いていない。彼女はカウンターに身を乗り出し、サイボーグのマスターにキラキラした瞳を向けていた。


「おじさん!それで、そのゲルなんとかっていうのはどこにいるんですか?すぐに行きたいんですけど!」

 マスターは呆れたようにタバコの煙を吐き出すと、カウンターの隅を指さした。

「まずは装備を整えな。嬢ちゃん、武器もライトもなーんもねえだろ」

『その通りです!』

 俺はマスターの言葉に激しく同意した。


『マスター、この方に最低限の装備の支給を要請してください!例えば、熱線銃ブラスターやモーションセンサー、最低でも軍用のフラッシュライトを!』

 俺の的確な要求をポプリに伝える。


「えーっと、オマモリさんが、ピカピカしてビームが出る鉄砲が欲しいって言ってます!」

(そんなアホな伝え方があるか!)

 マスターは鼻で笑うと、カウンターの下をゴソゴソと漁り始めた。そして、ガタン、と音を立てていくつかのガラクタをカウンターに置いた。


「ほらよ。レンタル代は出世払いでいいぜ」

 そこに並べられていたのは、俺の要求とはかけ離れた、絶望的なまでにローテクな代物だった。


 万能ツール: 長い鉄パイプの先端に、ペンチとナイフとフォークをガムテープでぐるぐる巻きにしたもの。

 光源: 瓶詰めにされた、ぼんやりと緑色に光る苔。時々、瓶の中で何かがうごめいている。

 卵運搬用具: 明らかに誰かが使い古したボロい肩掛け鞄。


(……コナンかよ。残され島だって、もうちょっとマシな装備があっただろ!)


『マスター……これは……その……』

 俺は言葉を失った。俺の高性能な戦術予測も、この原始的な装備の前では無力だ。

 だが、ポプリは目を輝かせていた。

「わー!すごい!ピクニックみたい!」


 彼女は「万能ツール」をぶんぶんと振り回し、「光源」の瓶をランタンのように掲げた。

『危ないですから振り回さないでください!ガムテープが剥がれます!』

「いいねぇ、その意気だ!お嬢ちゃんの根性があれば、道具なんざ気休めで十分だ」

 マスターはそう言うと、一枚のデータチップをポプリに投げ渡した。

「下水道の簡易マップだ。入り口は、この店の裏にある。……ま、せいぜい食われねえようにな」

 その目は、全く笑っていなかった。


 ポプリはマスターに元気よくお礼を言うと、意気揚々と店の裏口へ向かう。

 俺はメインスクリーンに表示されたタイムリミットを睨みつけた。


【船体没収まで:3時間7分03秒】

 店の裏口の、重い鉄のハッチを開けると、むわりとした湿気と、あらゆる汚物が混じり合った強烈な悪臭が吹き上げてきた。俺は匂いを感じるセンサーがあることを心底呪った。これがゲームなら「ピコン! 新機能、AIが匂いを呪う機能を身につけました!」と出る場面だ。


 その先には、暗く、底の見えない垂直の梯子が、どこまでも続いているように見えた。


(第8回 話)

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


元引きこもりの宇宙船AI「オマモリさん」と、銀河級の爆弾娘「ポプリ」が繰り広げる、ドタバタSFコメディはいかがでしたでしょうか。


「面白い!」「続きが気になる!」「ポプリのやらかしをもっと見たい!」

と少しでも思っていただけましたら、ぜひブックマークや、ページ下部の【★★★★★】で評価をいただけますと、作者の執筆速度が3倍になります!(※個人の感想です)


毎日複数回更新で物語はどんどん進んでいきますので、ぜひお見逃しなく!

*18日(土)・19日(日)の2日間は1日3回【7:30 12:30 19:00】の予定です。


次回『腐海の底へ(下水道です)』

明後日、そんな先の事はわからない(ママ)。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ