第76話『ジャンプ的王道展開』
「……おいおい、マジかよ」
ゼインの「ブルーフラッシュ号」が、ゆっくりと俺たちの横に並んだ。
彼の驚愕の声が、通信回線を通じて聞こえてくる。
【おい、ポプリ、それにAI!今のありゃあ何だ!?】
「え?おじいちゃんが付けてくれた、レーザーポインターだよ!」
ポプリは、事もなげに答える。
【レーザーポインターがあんな出力で撃てるかよ!戦艦の主砲並み……いや、それ以上だったぞ!マフィアの最新鋭艦を一撃で消し炭にしやがった!】
『(おっしゃる通りです……!)』
俺も心の中で激しく禿同だ。さらにエネルギーゲージは減っていない。あの破壊力のエネルギーは、一体どこから来て、どこへ消えたんだ? 船の奥底に、俺の知らない『炉』でもあるのか……?
だが、今はそれよりも先に、言うべきことがあった。
俺は思考を切り替え、真摯な声を送った。
『ゼインさん。感謝します。あなたが割って入ってくれなければ、我々は最初のビームで宇宙の塵になっていました。本当に、ありがとうございました』
「うん!ありがとう、ゼイン!助けてくれて!」
ポプリも、満面の笑みで大きく手を振った。
俺たちのストレートな感謝に、ゼインは少しバツが悪そうに鼻をこすったようだった。
【……ふん。礼には及ばねえよ。お前らが体を張って囮になってくれたおかげで、俺のチャージが間に合ったんだ。それに、最後はとんでもないモン見せてもらっちまったしな】
彼は、フッと息を吐くように笑った。
【俺が割り込んでお前らを救い、お前らがトドメを刺して俺を救った。……これで貸し借りは無しだ】
「うん!チャラだね!」
【ああ。……だが、レースはまだ終わっちゃいねえぞ!】
ゼインの声が、再びレーサーの熱を帯びる。
【予選突破枠は残りわずかだ!ゴールまで競争だ!遅れるなよ、アルゴノーツ!】
ゼインの船が、青い噴射炎を残して急加速する。
『マスター、我々も行きましょう!ですが……今の攻撃は、二度と使ってはいけません』
俺は釘を刺しながら、スラスターの出力を上げた。
『あれが何だったのか、解析が必要です。それに、もし制御に失敗していたら……』
「はーい。……でも、なんかすごかったね!」
ポプリは、自分の胸元のアザを少し不思議そうに撫でた後、再び操縦桿を握りしめた。
(……イデオソードか、はたまたハイメガキャノンか……。あの爺さん、とんでもない爆弾を積み込んでくれやがったな……発動しなきゃいいな……)
俺は、戦慄と疑問を抱えたまま、ゴールラインを目指して船を進めた。
(第76話 了)
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
元引きこもりの宇宙船AI「オマモリさん」と、銀河級の爆弾娘「ポプリ」が繰り広げる、ドタバタSFコメディはいかがでしたでしょうか。
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【次回予告】
マフィアの襲撃という大トラブルを生き延び、なんとか予選を突破したポプリたち。
ですが、謎の兵器の正体も、ポプリのアザの秘密も、ギア爺さんは教えてくれません。
それどころか、「本戦に向けて特訓じゃ!」なんて言い出します。
AIさん、爺さんのスパルタ特訓とポプリのワガママ、両方耐えられますか?
次回、『転爆』、第77話『よれよれの生存者たち』
さて




