表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら宇宙船のAIで、隣にいるのが銀河級の爆弾娘だった(略:転爆)  作者: 怠田 眠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/108

第74話『青い閃光(ザブングルではない)との共闘』

『(ゼインか! でも、なぜあいつがここに!?)』


 俺の論理回路が、クリムゾン・サーペントの出現とは別の理由で混乱する。

 ゼインの青い船「ブルーフラッシュ号」は、俺たちとステルス機の間を牽制するように割り込み、完璧なシールド制御で敵の威嚇射撃をいなしていた。


「ゼイン! 助けに来てくれたの!?」


 ポプリが嬉しそうに叫ぶ。


【ハッ、勘違いすんな、ポプリ! お前は俺のライバルだ。こんな所で脱落させたら、俺の優勝がつまらなくなるだろうが!】


(……なんだそのジャンプ漫画の主人公みたいなセリフは……!)


 俺はツッコミを入れながらも、この状況がわずかに好転したことを理解した。


【……増援か。無駄なことを】


 クリムゾン・サーペントのステルス機は、獲物が二匹に増えたとでも言うように、ゆっくりと機首を両方に向けた。


【名も知れぬレーサーよ。余計なことをせず我らが獲物を差し出せば、命だけは助けてやろう】

『マスター、どうしますか!?』


(こっちはスラスターをやられて機動力が落ちている。いっそのことゼインを盾にして逃げるか? いや、この状況で逃げ切れるか……)


 俺がコンマ数秒でシミュレーションを繰り返していると、ポプリが操縦桿を握り直し、叫んだ。


「オマモリさん! ゼインと一緒に、あいつをやっつけようよ!」

『無茶です! 相手は本物のマフィアの軍艦ですよ!こっちは工業用レーザーポインターしか……』


 その時、ゼインからの暗号化通信が入った。ポプリではなく、俺(AI)に直接だ。


【おい、AI! 聞こえるか?あの蛇野郎、どうやら俺たちをレースの障害物トラップくらいにしか思ってねえらしい! だがな、俺の船のメイン武装のプラズマ・ディスラプターだ】

『……!』

(プラズマ・ディスラプターだと!? それって、高エネルギーで励起させたプラズマ流を、強力な磁場フィールドで超圧縮して撃ち出し、標的の分子結合そのものを強制的に『崩壊ディスラプト』させる超強力な武器じゃないか! あの小型レース船に、そんなメガ粒子砲みてえな代物を積んでるのか!)


 俺の驚きをよそにゼインが説明を続ける。

【こいつはチャージに時間がかかるが威力は最高だ! 俺がこれで奴のシールドをぶち破る! だからこいつが使えるようになる間、お前らは……】

『……おとりになれ、と?』


 俺はゼインの意図を即座に理解した。


【話が早くて助かるぜ! 5秒……いや、10秒でいい! 奴の注意を引きつけてくれ!】

(……10秒? とても無理だ!)


 それは、生存確率2%の作戦に、さらに0を一つ付け加えるような、無謀な提案だった。

 だが、ポプリは俺の返事を待たずに、通信に割り込んできた。


「わかった!オマモリさん、やろう!」

 その声に(それしかないか)と俺も覚悟した。

『……了解しました。これより、本艦は陽動に移行します。死なないでくださいよ、ゼイン!』


【そっちこそな!】


 ゼインのブルーフラッシュ号が、ブーストを吹かして残骸の影に消えていく。 ステルス機は、巨大なアルゴノーツ号を先に仕留めるのが合理的と判断したのか、再び俺たちに機首を向けた。


【愚かな選択を】


  敵機の主砲が、今度こそアルゴノーツ号のブリッジを沈黙させるため、高エネルギー反応を示した。


 その時だった。 俺たちの後方から、アステロイド・キャニオンを抜けてきた後続のレーサーたちが大挙して、この「シップ・グレイブヤード」に突入してきたのだ。


【ヒャッハー! あのデカブツ、止まってやがるぜ!チャンスだ!】

【邪魔だ、どけ! 俺が先だ!】

【クソどもが、俺のケツでも見ていやがれ!」


 後続のレーサーたちが、罵詈雑言とともに俺たちとサーペント機の間に割り込むように、我先にとゴールを目指す。 クリムゾン・サーペントの船長は、その光景を見て、忌々しそうに呟いた。


【……鬱陶しいハエどもめ。邪魔だ】


 ステルス機は、アルゴノーツ号に向けていた主砲の照準を、一瞬で後続のレーサーたちに向けた。


『なっ、まさか……!?』

【まとめて消えろ】


 次の瞬間、ステルス機から放たれたビームは、アルゴノーツ号ではなく、後続のレーサーたちを薙ぎ払った! 回避する術もなく、数隻の改造船が轟音と共に爆発四散する!


【な、なんだぁ!?】

【敵襲!?】

【やべぇ! 止ま――】

【ぶつかる!】

【ひゃああぁー】


  レース会場が、マフィアの無差別攻撃によってパニックに陥り、攻撃を避けようとした船が他の船にぶつかり火の玉になる。そこへさらに違う船が飛び込みさながら地獄絵だ。


 ステルス機が、邪魔なハエを払ったとばかりに、再び俺たちに照準を合わせ直した、その刹那。


【――今だ、ポプリ! AI!】 ゼインの叫び声が響き渡った!


(第74話 了)

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


元引きこもりの宇宙船AI「オマモリさん」と、銀河級の爆弾娘「ポプリ」が繰り広げる、ドタバタSFコメディはいかがでしたでしょうか。


「面白い!」「続きが気になる!」「ポプリのやらかしをもっと見たい!」

と少しでも思っていただけましたら、ぜひブックマークや、ページ下部の【★★★★★】で評価をいただけますと、作者の執筆速度が3倍になります!(※個人の感想です)


毎日【7:00】と【19:00】更新となります。ぜひお見逃しなく!


【次回予告】

ポプリとAIオマモリは、ライバルのゼインとまさかの共闘です。

ですが、スラスターが壊れた アルゴノーツ号に、クリムゾン・サーペントの容赦ないビームが襲いかかります。 AIオマモリさん、ゼインの「プラズマ・ディスラプター」が火を噴くまで、無事に耐えられますか?


次回、『転爆』、第75話『アルゴノーツ号、反撃!』

さて

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ