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転生したら宇宙船のAIで、隣にいるのが銀河級の爆弾娘だった(略:転爆)  作者: 怠田 眠


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72/108

第72話『機雷原(マインフィールド)の中心で愛を叫ぶ』

 俺の論理回路が、目の前に広がる絶望的な光景に、思考を放棄しかけた。

 最終セクター「シップ・グレイブヤード」。その入り口に広がるのは、無数の機雷が敷設された、悪趣味な機雷原マインフィールドだった。


『マスター、速度を落としてください。機雷原に突入します! 接触すれば一発で……』

「大丈夫だって、オマモリさん!」


 ポプリは、減速するどころか、スラスターをわずかに吹かして加速した。


『なっ!? マスター、何故加速を!?』

「だって、見て! あの青い船も、先に行ってるよ!」


 ポプリが指さす先、機雷原の遥か彼方を、ゼインの「ブルーフラッシュ号」が、巧みな操縦で駆け抜けていくのが見えた。


「あんな風にいけばいいんでしょ!」


 ポプリは、ゼインの航跡をなぞるように、アルゴノーツ号を機雷原へと突っ込ませた!

(馬鹿な!あの船と我々の船では、機動性が違いすぎる! しかも、あの機雷、不規則に動いているぞ!)


 俺のセンサーが、機雷が微弱な推進力で、お互いの位置関係を変えているのを捉える。これは、ただの障害物じゃない。獲物を誘い込む、悪魔の罠だ!


『マスター、右に回避!機雷が接近します。次は左!上です!』


 俺は、迫りくる機雷の位置を必死で算出し、ポプリに最短の回避ルートを指示する。


「うん!」「えいっ!」「そっち!」「あらよっと!」


 ポプリは、俺の指示と、彼女自身の野生の勘を組み合わせ、100メートルの巨体を持つアルゴノーツ号を、まるで踊るように機雷の間でスライドさせていく。

 俺たちの船体が、赤い点滅を繰り返す機雷のすぐそばを、装甲一枚隔てて通り過ぎていく。


(……すごい。俺のシミュレーションと、彼女の直感が、今、完璧にシンクロしている……!)


 俺は、この異常な状況の中で、奇妙な高揚感を覚えていた。


 ドゴォン!


 俺たちのすぐ後方を追ってきていた海賊船が、避けきれずに機雷に接触し、派手な花火となって散った。


「あぶなかったねー!」

『(笑いごとじゃありません!)……マスター、前方、機雷の密集地帯を抜けます! その先は……!』


 俺は、コースマップの先に広がる、最後の難関を捉えた。


「シップ・グレイブヤード」。過去のレースで沈んだ、無数の船の残骸が漂う、宇宙の墓場だ。


『……マスター、警戒を! 残骸に隠れて、敵が待ち伏せしている可能性があります』

「ん? あれは、なあに?」


 ポプリの視線が、巨大な戦艦の残骸の影に、一点だけ不自然に光る何かを捉えた。

 俺がG-1のセンサーをズームアップさせると、そこには――血のように赤い蛇の紋章が描かれた、小型のステルス戦闘機が、静かに潜んでいた。


(……!! クリ……クリムゾン・サーペント!?)


(第72話 了)

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


元引きこもりの宇宙船AI「オマモリさん」と、銀河級の爆弾娘「ポプリ」が繰り広げる、ドタバタSFコメディはいかがでしたでしょうか。


次回からは更新時間を朝7時、夜19時に変更いたします。引き続きのご愛読をよろしくお願いいたします。


「面白い!」「続きが気になる!」「ポプリのやらかしをもっと見たい!」

と少しでも思っていただけましたら、ぜひブックマークや、ページ下部の【★★★★★】で評価をいただけますと、作者の執筆速度が3倍になります!(※個人の感想です)


毎日【7:00】と【19:00】更新となります。ぜひお見逃しなく!


【次回予告】

さて、ポプリの野生の勘で機雷原を踊るように駆け抜けるアルゴノーツ号。

だけど休む暇もありません。コースの先には、よりにもよってあのクリムゾン・サーペントが待ち伏せです。

レースの邪魔者だけでも大変なのに、今度は本物のマフィアが相手です。

この絶体絶命のピンチ、どうやって切り抜けますか?


次回、『転爆、第73話『蛇の待ち伏せ』

さて

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