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転生したら宇宙船のAIで、隣にいるのが銀河級の爆弾娘だった(略:転爆)  作者: 怠田 眠


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第6話『ジャンクヤードの扉』

『マスター、ドックの喧騒に乗じて、何者かが後をつけてくる可能性があります。常に周囲を警戒し、不審な人物がいればすぐに報告してください。またここは足元が非常に悪いのでよそ見をせず、後ろからくるエアバイクにも気をつけてください』

 まるで心配性の母親だ。いや、引きこもりの息子を心配する母親の気持ちが、AIになった今なら少しわかる気がする。ごめんよ母さん。


「はーい!」

 ポプリの元気な返事とは裏腹に、彼女の視界は相変わらず左右の露店に釘付けだ。紫色の芋虫を踊り食いさせている店、七色に光るキノコの串焼きを売る店、謎の肉塊を煮込む大鍋……。

(……RPGの最初の街とはわけが違うな。ここは完全にひゃっは〜系の世紀末闇市だ)

 獣人の宇宙人が指さした区画は、ドックの中でも特に薄暗く、治安の悪そうな雰囲気が漂っていた。俺はデータベースと照合し、最短かつ最も安全なルートをポプリの視界の隅に矢印で表示する。


『マスター、このルートを進んでください。路地裏は危険です』

「わ、あっちに光るお魚がいるよ!」

『聞いてますかマスター!?』

 ポプリは矢印を完全に無視し、魚の形をしたネオンサインが明滅する方へ駆け出していく。

 その看板の下には、廃材を無理やり繋ぎ合わせたような、重々しい鉄の扉があった。看板には錆びついた文字で、かろうじて【JUNKIEジャンキー YARDヤード】と書かれている。扉の前には泥酔した毛むくじゃらの宇宙人が転がっている。扉からは、怒声と何かが割れる音、そして陽気だが不気味な音楽が漏れ聞こえていた。


(ちが〜う! この店じゃない!)

 と思った瞬間に、ポプリは元気に扉を開けていた。

 店の中は、店の外と区別がつかないくらい酷い有様で、泥酔者の数と据えた匂い得体のしれない煙が充満している分、店の中のほうが酷かった。どう考えても、少女が一人で入っていい場所ではない。


『マスター、論理的に判断して、この店は極めて危険です。別の手段を探しましょう』

「でも、あの人が教えてくれたよ!大丈夫!」

(だから、ここはその店じゃねぇ!)

 と思ったがポプリはずんずん店の中に進んでいく。彼女が店に入るに従って、店内が静かになっていく。

 薄暗く、紫色の煙が立ち込める店内。テーブルでは、タコのような頭部を持つ宇宙人がイカサマを巡って殴り合い寸前だったり、全身サイボーグの男が自分の腕をオイルで磨いていたり、様々な種族のならず者たちが、一斉にポプリに視線を向けた。


 その視線は、獲物を見つけた肉食獣のように、冷たく、そして獰猛だった。

 店の奥、無数の傷がついたカウンターの中で、巨大な体躯を持つサイボーグの老人が、グラスを拭く手を止め、ギロリとポプリを睨みつけた。


「……なんだ、嬢ちゃん。ここはガキの遊び場じゃねえぞ」

 その声は、錆びついた鉄をこすり合わせたような、しゃがれた声だった。


(第6話 了)

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


元引きこもりの宇宙船AI「オマモリさん」と、銀河級の爆弾娘「ポプリ」が繰り広げる、ドタバタSFコメディはいかがでしたでしょうか。


「面白い!」「続きが気になる!」「ポプリのやらかしをもっと見たい!」

と少しでも思っていただけましたら、ぜひブックマークや、ページ下部の【★★★★★】で評価をいただけますと、作者の執筆速度が3倍になります!(※個人の感想です)


公開初日はスタートダッシュ期間として、複数回更新で物語はどんどん進んでいきますので、ぜひお見逃しなく!


公開初日の2回目の更新では6話から7話まで公開します! 次回更新は【19:00】です。


次回『激辛スープと金色の卵』

ポプリ、敢えて下水の卵を拾うか。

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