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転生したら宇宙船のAIで、隣にいるのが銀河級の爆弾娘だった(略:転爆)  作者: 怠田 眠


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第59話『対価と覚悟』

『やった……!やりましたマスター!コア・キー、入手です!』


 俺は歓喜の声を上げた。これで、あの爺さん――ドクター・ギア(であろう人物)との約束は果たされた!これで船の改造を……!

 そこで、俺の思考は急速に冷却された。


(……待てよ。時間……?1時間……ぴったり……?)


 俺は慌ててメインスクリーンに表示された時計を確認する。(現在の時刻は午後3時半……! レースの技術検査締め切りまで、あと……6時間半しかない!)


『マスター! 急いでください! 時間がありません! すぐに改造をお願いしないと!』


 俺の焦りをよそに、ガレージの奥で目を閉じていた老人が、ゆっくりと目を開けた。

 その目は、驚きと、それ以上の何か……深い満足感を湛えて、ポプリと、彼女の手の中にあるコア・キーを見つめていた。


「……時間、ぴったりじゃな」


 老人は、壁にかかった古時計を見ながら、静かに呟いた。


『ぴったりではありません!締め切りまであと6時間半しか……!』


 俺の言葉を遮るように、老人はケケケ、と奇妙な声で笑った。


「カッカッカ!落ち着けや、AI。そのコア・キーがあれば話は別じゃ。わしにかかれば、その船の改造なぞ、赤子の手をひねるようなもんじゃよ」


 彼は椅子から立ち上がると、ポプリの前に歩み寄り、彼女の手の中にあるコア・キーを興味深そうに覗き込んだ。


「……しかし、驚いたのう。まさか本当にこのキューブを解く者が現れるとは。しかも、そのアザを使って……。お前さん、一体何者なんじゃ?」

(今だ!ここで聞くしかない!)

『その質問はこちらがしたいところです!なぜマスターのアザが鍵になったのですか!?あなたは一体誰なのですか!?』


 俺はG-1のスピーカーを通して、畳みかけるように尋ねた。

 老人は、俺の問いかけに、ふむ、と顎の髭を撫でた。


「……答えが知りたいか?よかろう。だが、その前に聞かせてもらおうか」


 彼は、真剣な目でポプリを見据えた。


「嬢ちゃん。お前さん、本当にあのデスレースに出る覚悟はあるのか?あのアルゴノーツという船は……ただの船ではない。あれを目覚めさせ、乗りこなすには、相応の覚悟がいる。下手をすれば、船にお前さん自身が喰われるかもしれんのじゃぞ?」


 その言葉には、ただの脅しではない、重い響きがあった。


(船に喰われる……? どういう意味だ……?)


 ポプリは、老人の真剣な眼差しをまっすぐに受け止め、そして、迷いなく答えた。


「はい! 覚悟はあります!私、みんなを助けなきゃいけないから!」


 その答えを聞いて、老人は満足そうに頷いた。


「……よろしい。その覚悟、しかと見届けさせてもらった」


 彼は、俺(G-1)の方に向き直った。


「AIよ。お前さんの疑問に答えよう。わしが誰か、じゃったな?……ふん、今さらじゃが、まあ、世間ではこう呼ばれておる」


 彼は、オイルで汚れた作業着の胸を、少しだけ誇らしげに張った。


「『ドクター・ギア』……とな」


(第59話 了)

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


元引きこもりの宇宙船AI「オマモリさん」と、銀河級の爆弾娘「ポプリ」が繰り広げる、ドタバタSFコメディはいかがでしたでしょうか。


「面白い!」「続きが気になる!」「ポプリのやらかしをもっと見たい!」

と少しでも思っていただけましたら、ぜひブックマークや、ページ下部の【★★★★★】で評価をいただけますと、作者の執筆速度が3倍になります!(※個人の感想です)


毎日【11:00】と【22:00】更新となります。ぜひお見逃しなく!


【次回予告】

Contract! Dr. G!

『ドクター・ギア』本人、ついに確定! だが、試練はこれからだ! 優勝が『本気』の証だと!?

対価は、あの黄金の卵……! 爺さん、その一つで本当にいいのかよ!? 星系の運命すら左右するって、一体どういうことだ!?

次回、『転爆』、第61話『徹夜必至!地獄の(?)魔改造』

絶対に、勝ってみせる!やってやるぜ!

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