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転生したら宇宙船のAIで、隣にいるのが銀河級の爆弾娘だった(略:転爆)  作者: 怠田 眠


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第47話『獅子の施し』

 ここで、俺は一つの疑問を口にせずにはいられなかった。

「中佐、よろしければ一つ。我々はコロニーの下水道で、古代のものと思われる遺跡と、アステリア王朝のものらしきレリーフを発見しました。なぜ、あのような人工コロニーに、古代の遺跡が?」


 俺の質問に、アラン中佐は初めて、ほんの少しだけ口の端を上げた。

「いい質問だオマモリ君。君たちがいたあのアステリア・バザールは、近代になってから作られたコロニーではない」

 彼は、窓の外に広がる宇宙を眺めながら、語り始めた。

「数千年前、この宙域で、古代アステリア王朝のものと思われる巨大な人工天体が発見された。いわば、超巨大な遺跡だ。その噂を聞きつけ、一攫千金を狙う者たちが集まり、遺跡の周りに無秩序に居住区や市場を増築していった。それこそが、あのアステリア・バザールの成り立ちだよ」


『……!』

(そういうことか!コロニーの土台そのものが、遺跡だったのか!)


「君たちが迷い込んだ下水道の奥は、コロニーの最下層部……つまり、遺跡の最上層部と連結してしまったエリアというわけだ。我々があのコロニーを監視しているのも、クリムゾン・サーペントが嗅ぎまわっているのも、全てはそこにある『遺産』に繋がる情報を求めてのことだ」


 アラン中佐は、再びポプリへと視線を戻した。その目は先ほどよりもさらに深く、鋭く、ポプリを通して俺のことも見ているような目だった。

「質問がそれだけでなら、早速、行動を開始してくれたまえ」


 任務の受諾後、俺たちの船は宇宙軍旗艦のドック内で、大掛かりな補給と整備を受けることになった。

 と言っても、それは改修や強化ではない。あくまで「任務遂行に必要な最低限の補給」だった。

 真っ白な整備服に身を包んだ兵士たちが、一糸乱れぬ動きで、俺の船のエネルギーセルを交換し、推進剤タンクを満タンにしていく。

 俺のスクリーンに表示されたステータスが、みるみるうちに回復していく。


【 SHIP STATUS 】

 ENERGY LEVEL: 100% (FULL CHARGE)

 PROPULSION FUEL: 100% (FULL)

 ORGANIC MATERIAL STOCK: 100% (FULL)

 UNIVERSAL CREDIT BALANCE: 5000


(うおおおおお……!全部100%だ……!これが……これが金持ちの船か……!)

 俺は、AIになって以来初めて見る「CRITICAL」でも「LOW」でもない表示に、感動で回路が焼き切れそうになった。まるで、ホワイトベースがジャブローで補給を受けるシーンを、内側から体験しているかのようだ。木馬ってこんな感じだったのか。快感!


「オマモリさん、元気になったの?」

 ブリッジでその様子を見ていたポプリが、嬉しそうに尋ねる。

『はい、マスター。おかげさまで絶好調です。軍からは5000クレジットの活動資金も支給されました。これで当分は食料不足に悩まされる必要もありません』


 俺たちが補給を受けている間、アラン中佐が再び通信を入れてきた。

【アステロイド・ラリーの開催地は、無法宙域『タナトス・ベルト』だ。我が軍の艦隊はそこへは入れない。ここから先は、君たち自身の力で進んでもらう】

「了解しました」

【一つ、忠告しておく。君たちが持つ『金色の卵』は、アステリア王朝の遺産ではないが、それ自体が希少な戦略物資だ。レース会場には、クリムゾン・サーペントの息がかかった者もいるだろう。決して、人前で不用意に見せるな】

 その言葉は、俺たちがまだ監視下にあることを、暗に示していた。卵を売って大金持ちになる、という選択肢は、事実上封じられたのだ。


 やがて、全ての準備が完了した。

 宇宙軍旗艦の巨大なハッチが、再び開く。

【ポプリ・アステリア君、そしてAIオマモリよ。君たちの健闘を祈る。……ドリフター号を離艦せよ】

 アラン中佐からの、最後の通信だった。

 固定アームが全て外されたのを確認して、俺は船のエンジンを起動させ、ゆっくりと旗艦から発進した。

 眼下には、純白の巨大な艦隊。

 そして、目の前には、危険な無法宙域へと続く、どこまでも暗い宇宙。

 俺は心のなかで呟いた。

(一緒に行こう。あの星の海へ……)


 そして思った、


(……それにしても(ドリフター号)って、正式に決まっちゃったのかな? 今からアルカディア号にできないかなぁ……)


 と。


☆ ☆ ☆


 その頃、ブリッジの片隅で、アラン中佐は部下からの報告を受けていた。

「中佐。対象は、予定通りタナトス・ベルトへ向かいました」

「うむ。追跡艦を出せ。決して接触はするな。彼らが『ドクター・ギア』と接触する、その瞬間まで監視を続けろ」

「はっ。しかし、よろしいのですか?あのような素人に、ドクターの説得が……」

 アランは、遠ざかっていく俺たちの船の小さな光を見つめながら、静かに呟いた。

「……あの少女には、我々の計算を超えた『何か』がある。そして、あの船のAI……あれは、ただの機械ではない。あるいは、彼らなら……」


(第47話 了)

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


元引きこもりの宇宙船AI「オマモリさん」と、銀河級の爆弾娘「ポプリ」が繰り広げる、ドタバタSFコメディはいかがでしたでしょうか。


「面白い!」「続きが気になる!」「ポプリのやらかしをもっと見たい!」

と少しでも思っていただけましたら、ぜひブックマークや、ページ下部の【★★★★★】で評価をいただけますと、作者の執筆速度が3倍になります!(※個人の感想です)


毎日【11:00】と【22:00】更新となります。ぜひお見逃しなく!


次回 第48話『無法宙域への招待状』

それが、我が運命なの?

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