第40話『絶望の光、希望の光』
女幹部の冷徹な宣言と共に、クリムゾン・サーペントの艦から、無数の光の矢が放たれた。
それは、俺の貧弱なエネルギーシールドでは防ぎきれない、死の宣告そのものだった。
衝突まで、あと数秒。
俺のプロセッサが、最後の瞬間をスローモーションのように引き延ばす。
(……ここまでか……)
ブリッジの床では、ポプリが「きゃっ!」と小さな悲鳴を上げて、固く目をつぶっている。
俺は、せめて衝撃だけでも和らげようと、船に残った全てのエネルギーを慣性制御フィールドに回した。気休めにしかならないが、何もしないよりはマシだった。
光の矢が、俺の船体に到達する、まさにその瞬間。
何も、起こらなかった。
『……え?』
爆発も、衝撃も、何もない。
俺が恐る恐るメインスクリーンに視線を戻すと、そこには信じがたい光景が広がっていた。
俺たちの船と、クリムゾン・サーペントの艦との、間。
何もないはずの宇宙空間が、まるで巨大な鏡が出現したかのように歪み、そこから、純白の船体を持つ、巨大な艦隊が、光の粒子を撒き散らしながら姿を現したのだ。
その数、数十隻。一隻一隻が、クリムゾン・サーペントの艦を圧倒する威容を誇っている。
マフィアの放った光の矢は、その艦隊が出現と同時に展開した、青白いエネルギーシールドに触れた瞬間、何の抵抗もなく霧散していた。
『……なんだ……あれは……?』
俺のデータベースが、その純白の船体に刻まれた紋章を照合し、一つの答えを弾き出した。
それは、銀河のあらゆる勢力が、恐怖と共にその名を口にする、絶対的な存在。
【統合宇宙軍(Unified Space Force)】
(……宇宙軍……!?なんで、こんな辺境の宙域に、銀河最強の軍隊が……!?)
メインスクリーンには、クリムゾン・サーペントの女幹部の、驚愕と、それ以上の恐怖に歪んだ顔が映し出されていた。
彼女の口が、わなわなと震えている。
「……ば、馬鹿な……!なぜ、宇宙軍の正規艦隊が、こんな場所に……!」
(第40話 了)
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元引きこもりの宇宙船AI「オマモリさん」と、銀河級の爆弾娘「ポプリ」が繰り広げる、ドタバタSFコメディはいかがでしたでしょうか。
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3000年ぶりにポプリが走る。(盛りすぎ)




