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転生したら宇宙船のAIで、隣にいるのが銀河級の爆弾娘だった  作者: 怠田 眠


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第29話『反撃の狼煙(のろし)』

 地下遺跡で飲んだ液体とは違う、甘く、そしてどこか活力が湧くような、不思議な香りがした。

「これ……なに!?」

 ポプリは、不思議そうにグラスを覗き込んだ。

『私の記憶データベースにある、地球という星の古い飲み物です。それに、先ほどの卵を使いました』

 俺はできるだけ銀河万丈的な荘厳な響きを醸し出すように言ったのだが、ポプリの方はもうグラスの中の液体に夢中だった。


「ねぇ!これ飲んでいいの!飲んでいいの!」

『飲んでももよいのですが、その結果マスターがどうなるのかは分かりません』

 俺は正直に告げた。

『ですが、私の仮説が正しければ、マスターの隠された力が目覚めるはずです。今の私たちには、その不確かな可能性に賭けるしかありません。お願いし  』


 げぷっ、という音とともにポプリがコップを空にしていた。

 ぐいっと右腕で口を拭くと、満足そうに、

「美味しかった〜!」

 と言った。俺はなんか最終回のロッチナさんの気持ちが分かるような気がしていた。

 次の瞬間、ポプリの体が、ぐらりと揺れた。

「あまくて、おいし……ふわふわ……」

 そう言いながら彼女の顔がみるみるうちに赤く染まり、その場にへたり込みそうになる。


『マスター!』

 俺の呼びかけが通じたかのように、ポプリは倒れる寸前で、ぴたりと動きを止めた。


 そして、ゆっくりと顔を上げた。


 その翠色の瞳から、酔いの色は完全に消え失せ、氷のように冷徹な光が宿っていた。

 いつもの天真爛漫な少女は消え、そこに立っていたのは、あの地下下水道で見た、戦場の全てを見通す、孤高の指揮官だった。


「……状況報告を」

 司令官は、短く、そして鋭く言った。

『は、はい!現在、我々は第13ドック出口で、隔壁シャッターにより進路を閉鎖されています!後方からは、所属不明の小型艇が複数、こちらに接近中!シャッターの向こうでは、ドック管理者が残りの卵の譲渡を要求しています!』

 俺は、まるで上官に報告する兵士のように、現状をまくし立てた。

 司令官は、俺の報告を聞きながら、メインスクリーンに表示された戦術マップと、各ウィンドウの映像を、恐るべき速度で分析していく。


 数秒の沈黙。

 それは、俺にとっては永遠にも感じられる時間だった。

 やがて、司令官は顔を上げ、最初の命令を下した。

 その内容は、俺の論理回路の予測を、遥かに超えるものだった。


「オマモリさん。まず、後方の追っ手は無視しなさい」

『えっ!?ですが、彼らは我々を……』

「彼らはハイエナです。我々が獲物である限りは追ってきますが、我々より弱い獲物が現れれば、そちらに群がる」


 司令官はそう言うと、メインスクリーンに表示されたシャッターの向こう……管理事務所の構造図を指さした。

「G-1を船外に射出。目標は、管理事務所の動力ケーブル。あれを破壊すれば、シャッターはおろか、この第13ドック全ての電源が一時的にダウンします。その混乱に乗じて、我々は脱出する」

『そ、そんなことをすれば、コロニー全体の大騒ぎに……!』

「問題ありません。これは、彼らが始めた戦争です」

 司令官はそう言い放つと、冷徹な笑みを浮かべた。


「実行しなさい、オマモリさん」


(第29話 了)

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


元引きこもりの宇宙船AI「オマモリさん」と、銀河級の爆弾娘「ポプリ」が繰り広げる、ドタバタSFコメディはいかがでしたでしょうか。


「面白い!」「続きが気になる!」「ポプリのやらかしをもっと見たい!」

と少しでも思っていただけましたら、ぜひブックマークや、ページ下部の【★★★★★】で評価をいただけますと、作者の執筆速度が3倍になります!(※個人の感想です)


毎日【11:00】と【22:00】更新となります。ぜひお見逃しなく!


次回 第30話『五秒間の無政府状態アナーキー

だが、今日という日が、明後日の方向に(多分)ある。

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