表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら宇宙船のAIで、隣にいるのが銀河級の爆弾娘だった  作者: 怠田 眠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/48

第25話『金歯の爬虫類の言い分』

『マスター、すぐに離れてください!生命の危機です!』


 俺の警告は、もはや悲鳴に近かった。

 サイボーグゴリラは目力で、ミシミシと音を立てる勢いでポプリを睨み下ろしている。100メートル先からでも、ゴリラが激怒しているのが分かっただろう。その巨大な拳が振り下ろされれば、ポプリの小さな体など一瞬でミンチだ。

 俺はG-1の非殺傷兵器の使用許可を、数ミリ秒で自己承認した。もはや港湾警備隊がどうとか言っている場合ではない!

 その時だった。


 ゴゴゴゴゴ……


 事務所の重い鉄の扉が、ゆっくりと内側に開いた。

 中から現れたのは、あの金歯をギラつかせた爬虫類型宇宙人だった。どうやら、彼がこの事務所の管理者らしい。

「おいおい、俺の事務所の前で騒ぐのはやめてもらおうか。……ん?」

 管理者は、騒ぎの中心にいるポプリの顔を見て、ニヤリと下品な笑みを浮かべた。

「なんだ、さっきの嬢ちゃんか。俺の部下をまいて、ずいぶんと楽しませてくれたそうじゃねえか」

 どうやら、チンピラたちの報告は、すでに彼の耳に入っているらしい。


 サイボーグゴリラは、管理者の顔を見ると、忌々しそうに舌打ちして、振り上げた拳を下ろした。

 俺は冷静さを取り戻し、ポプリに指示を送る。 『マスター、今です。支払いを済ませましょう。クレジットチップを渡してください』

「はい、お願いします!」 ポプリは言われた通り、クレジットチップの束を管理者に差し出した。

 しかし、管理者はそれを受け取らず、腕を組んでいやらしく笑った。

  「ああ、停泊料な。当初の契約は5,000だったが、お前さんたちのおかげで色々手間が増えてな。迷惑料込みで6,000だ。それに、俺の店の看板を壊してくれたらしいな?修理代でプラス1,000。合計7,000クレジット払ってもらう」


『なっ……!?』 俺とポプリの顔から、同時に血の気が引いた(もちろん、俺は感覚だけだが)。

(7,000だと!?待て、計算しろ俺!報酬が7,000で、さっきの芋虫が200……。手持ちは6,800……。に、200足りない……!あの芋虫さえ食べていなければ!) 俺は心の中で絶叫する。あの時のポプリの食欲が、今、致命的な結果を招いたのだ。

『契約書にはない不当な請求です!そのような要求は法的に完全に無効です!』 俺はAIとして、論理と法に基づいた反論をポプリに伝えた。

 ポプリは俺の言葉をそのまま繰り返す。 「契約書にない不当な請求です!無効です!」

 だが、管理者は腹を抱えて笑った。 「はっはっは!嬢ちゃん、面白い冗談を言うなあ!ここは第13ドックだぜ?ここでは、俺が法律だ」

 管理者はそう言うと、金歯を光らせた。

「さっさと7,000クレジット払いな。払えねえってんなら、今すぐその船を解体して、パーツで返済してもらうがな」


 絶体絶命。


 ポプリは、震える手でクレジットチップを握りしめ、か細い声で言った。

  「……6,800しか、ありません……」

「あぁ?足りねえじゃねえか」 管理人の目が、再び冷酷な光を帯びる。

(終わった……!っか200って、あの芋虫の串焼きの200クレジットかよ!?)

  俺が絶望に包まれた、その時だった。


 管理人は、ポプリが肩にかけている鞄(卵が入っている)に、一瞬だけ鋭い視線を送ると、ふっと表情を緩め、意外なことを口にした。

「……まあ、いい。嬢ちゃんのがんばりに免じて、足りねえ200は俺様が貸してやる」

 管理人は金歯を光らせた。

 えっ?とポプリが管理人を見上げる。

 

「いいんですか?やったー!ありがとうございます!」

 ポプリは早速6,800クレジットを管理人に手渡していた。

「へへへ、毎度あり。さあ、とっとと失せな」

  管理人は下卑た笑みを浮かべ、クレジットを受け取った。

「いいんですか? やった〜!」

 俺は成り行きに驚きつつ、違う可能性を計算していた。だが今は黙って喜ぶポプリを見ていた。



(第25話 了)

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


元引きこもりの宇宙船AI「オマモリさん」と、銀河級の爆弾娘「ポプリ」が繰り広げる、ドタバタSFコメディはいかがでしたでしょうか。


「面白い!」「続きが気になる!」「ポプリのやらかしをもっと見たい!」

と少しでも思っていただけましたら、ぜひブックマークや、ページ下部の【★★★★★】で評価をいただけますと、作者の執筆速度が3倍になります!(※個人の感想です)


今週は毎日【12:30 / 19:00】の2回更新となります。ぜひお見逃しなく!


次回 第26話『富と危険は等価交換』

ポプリは次の巡礼地に向かう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ