表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら宇宙船のAIで、隣にいるのが銀河級の爆弾娘だった(略:転爆)  作者: 怠田 眠


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/108

第21話『ハイエナの時間』

『マスター、危険です!すぐにそこを離れてください!何者かに狙われています!』

 俺は最大限の警告をポプリに送る。

 だが、彼女はメガワームの美味さに完全に心を奪われていた。


「んー?なぁに、オマモリしゃん?これ、すっごくおいひいよぉ?」

(ダメだ、食い物に夢中で聞こえてない!)


 その間にも、チンピラ風の宇宙人たちが、じりじりとポプリへの包囲網を狭めてくる。

 先ほどジャンクヤードでヤジを飛ばしていた連中の一部だ。

 リーダー格らしき、腕が4本ある爬虫類型宇宙人が、ヌラリとポプリの前に姿を現した。


「よぉ、嬢ちゃん。いいモン持ってんじゃねえか。さっきの報酬かい?」

「え?あ、はい!これ、美味しいですよ!」

 ポプリは、まだ相手の意図に気づかず、食べかけのメガワームを差し出した。


「ハッ、そんなゲテモノに用はねえよ。俺たちが欲しいのは、そっちのキラキラしてる方と鞄の中身だ」

 男は、ポプリが握りしめるクレジットチップの束と鞄を、いやらしい目で見つめた。

『マスター、すぐに逃げてください!私がルートを指示します!』

 ここでようやく、ポプリも状況を理解したらしい。彼女はクレジットチップをギュッと握りしめ、警戒するように後ずさった。

 だが、背後からは別のチンピラたちが回り込んでおり、完全に退路を断たれていた。

(まずい……!このままでは、金と卵を奪われ、最悪の場合は……!)

 俺のプロセッサが、最悪の未来を予測し、オーバーヒートしそうになる。

(くそっ!俺に手足があれば……!いや、あるじゃないか!俺の手足が!)

 俺は即座に、G-1の制御に意識を集中させた。

 攻撃は許可されていない。だが、陽動なら!


『G-1、プランC!目標、チンピラたちの頭上のネオンサイン!電撃パルス、出力3%で照射!』

 チンピラたちの頭上で、古びたネオンサインが明滅している。

 俺の指示を受け、G-1の機体から、ごく微弱な電撃が放たれた。それは生物には何の影響もない、ただの静電気のようなものだ。

 だが、不安定な安物のネオンサインの電子回路をショートさせるには、それで十分だった。


 バチチチチッ!ボンッ!


 ネオンサインは大きな音を立ててショートし、無数の火花を散らしながら落下した。

「うわっ!?」「なんだ!?」

 チンピラたちが、頭上の騒ぎに一瞬だけ気を取られる。

 その隙を、俺は見逃さなかった。


『マスター、今です!右です!全力で走ってください!』

「うん!」

 ポプリは、弾丸のように駆け出した。

 チンピラたちが「あっ!待ちやがれ!」と叫ぶが、もう遅い。

 人混みをすり抜けるポプリの小さな体を、ガタイのいい連中が捕まえられるはずもなかった。


『そのまま直進!次の角を左!その先の階段を駆け上がってください!』

 俺のナビゲーションとポプリの脚力、そしてG-1による上空からの交通整理(他の宇宙人の進路を微妙に妨害する)が完璧にシンクロする。

 数分後、俺たちはチンピラたちを完全に振り切り、船の停泊する第13ドックへと、息を切らしながら帰り着いた。


 プシュー……

 船のハッチが閉まり、外の喧騒が遮断される。


「はぁ……はぁ……びっくりしたぁ……」

 ポプリは床にへたり込んだ。肩には卵が入った鞄を下げ、その手には、食べかけのメガワームと、クレジットチップの束が、まだ固く握りしめられていた。

『……よくやりました、マスター。さあ、支払いましょう。これで、私も解体されずに……』

 俺が安堵の息をつき、支払いシステムを起動した、その時だった。


【警告:船体が外部アームにより物理的に拘束されているため、全ての外部アクセスポートがロックされています。停泊料の支払いは、ドック管理事務所にて、直接行う必要があります】


 俺のメインスクリーンに、無慈悲なシステムメッセージが表示された。

『…………は?』


 タイムリミットまで、残り1時間05分。

 どうやら、この地獄からは、まだ出られないらしい。


(第21話 了)

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


元引きこもりの宇宙船AI「オマモリさん」と、銀河級の爆弾娘「ポプリ」が繰り広げる、ドタバタSFコメディはいかがでしたでしょうか。


「面白い!」「続きが気になる!」「ポプリのやらかしをもっと見たい!」

と少しでも思っていただけましたら、ぜひブックマークや、ページ下部の【★★★★★】で評価をいただけますと、作者の執筆速度が3倍になります!(※個人の感想です)


今週は毎日【12:30 / 19:00】の2回更新となります。ぜひお見逃しなく!


第22話『賽は投げられた(二度目)』

夜の闇もへそで茶を沸かす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ