第14話『王の酒と墓守』
彼女は「きっと、美味しいものの匂いだよ!」と、暗い通路の奥へとずんずん進んでいく。俺にできるのは、G-1を先行させて周囲を警戒することだけだ。
通路の壁には、びっしりとレリーフが刻まれている。G-1のライトがそれを照らし出すと、俺は息を呑んだ。
描かれているのは、星々を渡る巨大な船団、ひれ伏す様々な宇宙人、そして、胸にハートの紋章を掲げた王族らしき人々の姿。
(なんだ……?俺のデータベースの、どの銀河史にも存在しない文明だぞ……。まるで、ナウシカのタペストリーみたいだな……)
「見てオマモリさん!ハートマークがいっぱい!」
ポプリは壁の紋章を指さしている。それは、彼女の左胸にあるアザと、全く同じ形をしていた。
(偶然か……?いや、偶然にしては……)
俺が思考を巡らせているうちに、ポプリは通路の突き当たりにある、巨大な広間へとたどり着いた。
ドーム状の高い天井。中央には、黒曜石を削り出して作ったかのような、荘厳な祭壇が鎮座している。そして、その上に、例の「いい匂い」の源はあった。
それは、黄金色に輝く液体で満たされた、巨大な甕だった。
液体は、まるで生きているかのように、自らゆっくりと泡立ち、芳醇で、甘く、そしてどこか神聖な香りをあたりに漂わせている。
「わー……!はちみつのお酒かな?すっごく美味しそう!」
ポプリは目を輝かせ、祭壇によじ登ろうと駆け出した。
『マスター、お待ちください!成分を分析するまで絶対にそれに触れてはいけません!未知の液体です、危険すぎます!』
俺は必死に警告を送る。
(こんな都合よく、古代遺跡に飲み物が置いてあるわけがない!Fateじゃないんだから、聖杯みたいなヤバい代物に決まってる!)
だが、俺の警告が届く前に、ポプリは祭壇によじ登り、その小さな手を黄金色の液体に浸してしまった。
(第14話 了)
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元引きこもりの宇宙船AI「オマモリさん」と、銀河級の爆弾娘「ポプリ」が繰り広げる、ドタバタSFコメディはいかがでしたでしょうか。
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次回「疑惑」。
まだ黒子は姿を見せないがなんか出た。




