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転生したら宇宙船のAIで、隣にいるのが銀河級の爆弾娘だった(略:転爆)  作者: 怠田 眠


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107/108

第107話『次元の彼方と、銀河のハイウェイ』

 目の前に広がっているのは、星空ではない。

 宇宙空間そのものがガラスのようにひび割れ、極彩色の光が渦巻く「行き止まり」。

 銀河を二つに分断する絶対障壁――『次元断層ディメンション・フォルト』だ。


【おいおい、マジかよ。こんな壁、どうやって越えるんだ?】


 並走するゼインからの通信が入る。彼のブルーフラッシュ号のセンサーも、この異常な空間歪曲の前ではエラーを吐きまくっているようだ。


『通常航行では不可能です。触れれば亜空間の塵になります』


 俺(AI)は冷静に分析しつつ、ポプリに指示を出した。


『マスター。例のブツをお願いします』

「りょーかい! いよいよ出番だね!」


 ポプリは、虎の子の「ゲルグニョールの黄金卵」の一つを大事そうに取り出し、アルゴノーツ号のコンソール中央にある、ドクター・ギアが増設した「エネルギー触媒ポート」へとセットした。


『システム、接続。……卵の殻を割り、内部の高純度エネルギーを次元波動へと変換します』

「えいっ!」


 ポプリがスイッチを押し込む。


 カシュッ……!


 ポートの中で卵が割れる微かな音。

 次の瞬間、アルゴノーツ号の船体が黄金色のオーラに包まれた。


次元穿孔ドリルモード、起動! ……出力、最大!』

「いっけえええええ!」


 アルゴノーツ号が、光の矢となって断層へ突っ込む。


 バリバリバリバリッ!!


 空間が悲鳴を上げ、ひび割れた壁が、黄金の光に溶かされるように穴を開ける。

 俺たちは、物理法則の彼方へと突き抜けた。


 ***


 強烈な閃光が収まると、そこは静寂な宇宙空間だった。

 だが、景色が決定的に違っていた。


「……わぁ」


 ポプリが息を呑む。

 目の前に広がっていたのは、無数の光のチューブが網の目のように張り巡らされた、幻想的な光景だった。

 巨大なリング状の構造物が等間隔に配置され、そこから伸びる光の道――人工的なワームホールが、星と星を繋いでいる。


『……解析。これは、「超長距離ワープ・ハイウェイ網」です』


 俺は驚愕した。

 こちらの銀河(アステリア側)では、ワープ航法は高度な計算とリスクを伴う技術だ。

 だが、この断層の向こう側(ゼフィロス側)では、空間を安定させてトンネル化し、まるで高速道路のように整備しているのだ。


【すげえ……。こっち側は、随分と文明が進んでやがるな】


 ゼインも感嘆の声を上げる。


『間違いありません。これこそが「光の一族」ゼフィロス王朝の遺産、あるいは現存する文明圏です。あのハイウェイを使えば、宇宙の果てまでひとっ飛びですよ!』


 俺は即座に、最も太く、安定していそうな「中央幹線」へのルートを算出した。

 この道を行けば、目的地である「ゼフィロス本星」への到達時間は大幅に短縮される。効率的かつ論理的な最適解だ。


『マスター! 早速あの中央ゲートに入りましょう! あれに乗れば最短ルートで……』

「だめ!」


 ポプリが、鋭い声で叫んだ。


『えっ?』

「あんな目立つ道、通っちゃダメ! ……混んでるし! 渋滞したら大変だし!」


 ポプリは慌てて理由を並べるが、その横顔は引きつっていた。


「こっち! こっちの道を行こうよ!」


 彼女が指さしたのは、メインのハイウェイから外れた、光の点滅も弱々しい、今にも崩れそうな「獣道」のようなワームホールだった。

(あ、あれだ酷道だ、と俺は思った)


『マスター、そちらは「未整備ルート」です。 安定性も不明ですし、どこに繋がっているかも……』

「いいの! 冒険だもん! 知らない道の方がワクワクするでしょ!?」


【面白え! 俺も賛成だぜ、ポプリ! 舗装された道路なんて退屈で走ってられるかよ!】


 ゼインまでがノリノリで賛同してしまう。


(……二人して何を言ってるんだ)


 俺の論理回路は「効率性」を叫んでいたが、マスター命令には逆らえない。

 それに、ポプリの頑なな態度には、単なるワガママ以上の「必死さ」があった。


『……はぁ。了解しました。では、ナビゲーションを「下道したみち」ルートに切り替えます』


 こうして俺たちは、快適な銀河ハイウェイを横目に、地図にも載っていない「ワームホールの獣道」へと舵を切った。

 それは、トラブルと予期せぬ出会いに満ちた、波乱万丈な旅の始まりだった。


(第107話 了)

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


元引きこもりの宇宙船AI「オマモリさん」と、銀河級の爆弾娘「ポプリ」が繰り広げる、ドタバタSFコメディはいかがでしたでしょうか。


「面白い!」「続きが気になる!」「ポプリのやらかしをもっと見たい!」

と少しでも思っていただけましたら、ぜひブックマークや、ページ下部の【★★★★★】で評価をいただけますと、作者の執筆速度が3倍になります!(※個人の感想です)


毎日【11:00】更新となります。ぜひお見逃しなく!


【次回予告】

表通りを避けて飛び込んだワームホールの先は、やっぱりトラブルの巣窟でした。

たどり着いたのは、惑星全体が巨大な「温泉街」になっている観光惑星?

いいえ、そこは銀河中の指名手配犯が傷を癒やす「悪党たちの湯治場」でした。

「いい湯だな」と浸かるポプリの隣に、見たことのある賞金首がズラリ。

AIオマモリさん、背中を流すのはいいですが、その刺青タトゥー、本物ですよ?


次回、『転爆』 第108話『湯けむりスナイパーと、極楽地獄』

ポロリもあるかも。

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