8
「ウエディングドレスのベールを孤児院に依頼?」
「はい」
私は頷く。
「そうすれば、孤児院の収入になりますし、
子供達に牛肉を食べさせてあげれます」
私が考えたのは、ウエディングドレスのベールを、
孤児院に頼んで、そのお金で、
子供達に牛肉を食べさせてあげる事だった。
「本当にいいのか?」
「はい、レースの宣伝にもなりますから」
俯きながら答える私に、分かったとレイナルド様が答える。
「ではそのように手配する、
多少ちぐはぐでも文句は言うなよ」
「ありがとうございます!」
私は心から礼を言った。
「それとルーシィが優秀だと褒めていた」
「本当ですか?」
「最近まで平民だったと聞いたが、
教育は受けていたんだな」
「中央教会はほとんど貴族なので、
そこでまざっていろいろ教えてもらいました」
「ダンスも基本はできている、
あとはこの地方の貴族の名前を覚え、
不文律をマスターするだけだ」
えへへと微笑む。
「領主の妻として、どこに出しても恥ずかしくない、
平民出身であれ、それだけの知識と能力を
身に付けたのは誇っていい」
「レイナルド様は優しいですね」
「は?」
「レイナルド様は優しいです」
私はもう一度くり返す。
「野獣だ、猛獣だと言われた俺だぞ?
優しくした覚えはないが?」
私はにこにこと笑い。
それにつられたように、レイナルド様も微笑むのだった。