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その後、屋台でお昼を食べる事になった。
「ビオレッタ様、本当に屋台の料理でいいのですか?」
ジェシカは驚いているようだった。
「司祭長に、よく奢ってもらって食べてたんです、
懐かしいです」
ジェシカは更に驚いた顔をする。
「伯爵家令嬢にですか?」
貴族は屋台なんて食べないので、驚くのは当然だ。
「伯爵家令嬢になったのは、ほんの1ヵ月前程です、
それまでは平民でしたから」
「え?」
どこまでも驚くジェシカに笑いかける。
「辺境伯と結婚する為に、伯爵家の養女になったんです、
義理の両親とは一度顔を合わせて、
書類を書いただけです、
なので中身はほとんど平民なのですよ」
そんな・・・とジェシカが呟く。
「確かに魔力が大きいのは貴族です。
ただ、私は例外的に平民でも魔力が大きくて、
中央教会に引き取られたんです。
でも、貴族からしたら、平民が混ざっているのは、
我慢ができなかったみたいで、
食事に肉を抜かれたり、スープに具を入れて
もらえなかったりしたんです、
それに見かねた司祭長様が、
お手伝いと言って、教会の外に連れ出して、
屋台の食事をご馳走してくれたんです」
ジェシカは泣きそうな顔をしてる。
「あのドレスは?」
「持ってきた6着のドレスと宝石は、
伯爵令嬢として嫁がせる以上持たせようと、
伯爵家が用意してくれた物です。
なので、ここに来るまでドレスを着た事は
ありませんでした」
いじめや理不尽な事は日常茶飯事だった。
貴族の中で、平民がいる事は、攻撃の対象にしやすい、
しかも自分より能力があるとなれば、更に気にいらない。
(よく髪を切られたり、お礼に宝石をもらうと、
取り上げられたりしましたからねぇ~
まあ、これは言わない方が良さそうですね)
「私が来たのは、穢れと結界、
両方一気に対処する必要があって、
失敗すると死ぬ可能性があったからです。
後は、レイナルド様がお姫様扱いしない事も
知られていたので、
大事にされている貴族の結界師達は、
許せなかったのでしょうね~」
「私はビオレッタ様が来てくださって良かったです」
「そう言ってもらえると嬉しいです、私も皆大好きですよ、
お土産に館の人全員分のチェロス、買って帰りましょう」
とうとう泣き出したジェシカの手を引いて、
私はチェロス売り場へと向かった。