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「うっっつ」
思わず顔を背ける。
馬が止まった場所は、確かに魔力が多い場所だが、
それ以上に穢れが渦巻いていた。
あまりもの光景に目を疑う。
魔力が多い場所、
しかも結界を張る場所は厳重に警備される、
こんなに穢れがある事などあってはならない事だ。
「これは・・・」
呆然と呟くと、周りに沈黙が下りる。
しばらくして、レイナルド様が、
「結界師がここで死んだ」
とぶっきらぼうに言った。
私は思わず目を見開く。
(ああ成程、だから私だった訳ですね)
納得して、マナを感じる為ぼうとする私。
その反応を私が怖がっていると思ったらしく、
護衛団の人達が困惑の表情を浮かべていた。
(えっと、つまりは穢れを払うのと、
結界を張るとのと両方必要と、
ここ数か月魔力を使う事がなくて良かったです)
「どうした?辞めるか?
まだ結婚もしてない、逃げるなら今だぞ」
レイナルド様の言葉が耳に入って来るが、
私の意識はすでに穢れを払う為に集中していた。
「いいえ、まず穢れを払います」
そう言って、跪き手を組み合わせる。
この世界に溢れるマナを感じる。
私の周りにゆらゆらと小さな光が溢れてくる。
「え?」
「凄い・・・・」
護衛団の人が呟いている。
私はずっと祈りの言葉を繰りだす。
最初の祈りは記憶が頼りだが、
最後の方になると自然と口から言葉が溢れる感じだ。
自分の魔力とマナが結ばれていく。
無数の光の点ができ、それらがうねりを作り、
大きな光の束となっていく。
その束が複雑に重なり合い、
包み込むように黒い穢れを打ち消していく。
「ふう」
(無事終わりましたね)
穢れが払われたのを感じて立ち上がると、
護衛団の人達が、貴人に対する礼を取っていた。
「これから結界を張ります」
穢れがなくなり、清浄な空気に包まれる中、
自分の魔力を魔法陣に組み込んでいく。
今回は領地全体を覆うという、かなり大規模な物だ、
当然魔法陣も大きく、複雑な物になっていく。
そうして時間をかけ、魔法陣が書きあがった事を確認すると、
一気に魔法陣を空に放つ。
そして、魔法陣は光の膜となり、領地全体を覆った。
「えっと、終わりました」
結界が張れた事を確認して振り返ると、
呆然としたレイナルド様が目に入る。
騎士団の人達は、礼をしたままだ。
(あれ?終わったってもう一度言った方がいいのかな?)
「あの・・・」
「あ・・ああ、ありがとう」
呆然としながらもレイナルド様が呟くように言い。
その後はっとして、
「皆!帰るぞ!気合を入れて護衛しろ!」
と護衛団の人に声をかけていた。
(ひとまず、これで安心ですねぇ)
私は再び馬に跨り、辺境伯の屋敷を目指した。




