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結界師ビオレッタの幸せな契約結婚  作者: あいら


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3/10

3

「うっっつ」


思わず顔を背ける。


馬が止まった場所は、確かに魔力が多い場所だが、

それ以上に穢れが渦巻いていた。


あまりもの光景に目を疑う。


魔力が多い場所、

しかも結界を張る場所は厳重に警備される、

こんなに穢れがある事などあってはならない事だ。


「これは・・・」


呆然と呟くと、周りに沈黙が下りる。


しばらくして、レイナルド様が、


「結界師がここで死んだ」


とぶっきらぼうに言った。


私は思わず目を見開く。


(ああ成程、だから私だった訳ですね)


納得して、マナを感じる為ぼうとする私。


その反応を私が怖がっていると思ったらしく、

護衛団の人達が困惑の表情を浮かべていた。


(えっと、つまりは穢れを払うのと、

 結界を張るとのと両方必要と、

 ここ数か月魔力を使う事がなくて良かったです)


「どうした?辞めるか?

 まだ結婚もしてない、逃げるなら今だぞ」


レイナルド様の言葉が耳に入って来るが、

私の意識はすでに穢れを払う為に集中していた。


「いいえ、まず穢れを払います」


そう言って、跪き手を組み合わせる。


この世界に溢れるマナを感じる。


私の周りにゆらゆらと小さな光が溢れてくる。


「え?」


「凄い・・・・」


護衛団の人が呟いている。


私はずっと祈りの言葉を繰りだす。

最初の祈りは記憶が頼りだが、

最後の方になると自然と口から言葉が溢れる感じだ。


自分の魔力とマナが結ばれていく。


無数の光の点ができ、それらがうねりを作り、

大きな光の束となっていく。


その束が複雑に重なり合い、

包み込むように黒い穢れを打ち消していく。


「ふう」


(無事終わりましたね)


穢れが払われたのを感じて立ち上がると、

護衛団の人達が、貴人に対する礼を取っていた。


「これから結界を張ります」


穢れがなくなり、清浄な空気に包まれる中、

自分の魔力を魔法陣に組み込んでいく。


今回は領地全体を覆うという、かなり大規模な物だ、

当然魔法陣も大きく、複雑な物になっていく。


そうして時間をかけ、魔法陣が書きあがった事を確認すると、

一気に魔法陣を空に放つ。


そして、魔法陣は光の膜となり、領地全体を覆った。


「えっと、終わりました」


結界が張れた事を確認して振り返ると、

呆然としたレイナルド様が目に入る。


騎士団の人達は、礼をしたままだ。


(あれ?終わったってもう一度言った方がいいのかな?)


「あの・・・」


「あ・・ああ、ありがとう」


呆然としながらもレイナルド様が呟くように言い。


その後はっとして、


「皆!帰るぞ!気合を入れて護衛しろ!」


と護衛団の人に声をかけていた。


(ひとまず、これで安心ですねぇ)


私は再び馬に跨り、辺境伯の屋敷を目指した。

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