異能覚醒、私には超能力システムがある

第三章：嵐の顕現

「お前が、風間 悠真か？」

竜崎 厳の三メートルを超える巨大な体躯は、息苦しいほどの圧迫感を伴い、まるで動く小山のようだった。

蒲扇のような右腕は筋肉が隆起し、血管が浮き出て、恐ろしいほどの力を秘めていた。

彼は一切の躊躇なく、傲慢な態度で、まるでハエを叩き潰すかのように、風間 悠真や、彼にとって蟻同然に見える周囲の生徒たちを、容赦なく一掃しようと振り下ろしてきた。

「うわあああ！」

生徒たちは耳をつんざくような悲鳴を上げ、驚いた鳥の群れのように、転がるようにして後ろへ逃げ惑った。

その巨大な腕が巻き起こす猛烈な突風は、かすめただけでも彼らをよろめかせ、顔には無数の細い刃で削られるような痛みが走った。

空気中には土埃が舞い、死が迫る冷たい気配が満ちていた。

しかし、誰もが風間 悠真が肉塊になると覚悟したその間一髪の危機的状況で、目にはほとんど見えない透明な障壁が、突如として風間 悠真の目の前に現れた。

それは肉眼ではほとんど捉えられない、透明な気流の層で、静かにそこに浮遊しているにもかかわらず、形容しがたいほどの強靭さを放っていた。

「轟隆（ゴウロン）――！」

巨大な掌は、万の力をもって、その脆そうに見える気流の障壁に激しく衝突した。

想像されたような破壊も、天地を揺るがす爆発もなかった。

代わりに響いたのは、二つの山が音もなくぶつかり合ったかのような、極限まで鈍い衝撃音だった。

地面は震え、固い石畳の路上には瞬く間に蜘蛛の巣状のひび割れが走り、空気は恐ろしい衝撃力によって歪められたかのように、耳鳴りのするようなブンブンという音を発した。

だが、信じられないことに、風間 悠真は微動だにせず、まるで地中深くに根を張った古木のように、どんな強風が吹き荒れても、泰然とそこに立っていた。

衣の裾すら揺れることなく、その表情には一片の動揺も見られなかった。

「な、何だと！！？」

竜崎 厳の巨大化によってやや鈍重に見える顔に、元々軽蔑に満ちていた瞳が大きく見開かれ、信じられない、いや、かすかな恐怖の色さえ宿った表情を浮かべた。

彼が誇る怪力は、この学園で我が物顔に振る舞うための資本であり、全ての弱者を踏み潰すための拠り所だった。

だが今、その力が、かつて彼にとってゴミ以下の存在だった「落ちこぼれ」に、これほど容易く防がれただと？

そんな馬鹿な！

それは彼の常識を完全に覆す出来事だった！

少し離れた場所にいた鹿島 小雨の、元々真剣で厳粛な顔にも一瞬、驚きの色が走った。

彼女は風間 悠真の能力が強くなったことは知っていた。

以前、彼が黄間 桐と紅羽 鷹を巻き上げたのだから当然だ。

しかし、竜崎 厳の巨大化攻撃を真っ向から受け止めるというのは、全く別の話だった！

竜崎 厳の巨大化は、単なる体格の増大ではなく、力と防御力が幾何級数的に増大する能力なのだ。

風間 悠真がそれをやってのけたというのか？

そして、それを取り巻いていた生徒たちは、まるで時間が止まったかのように一斉に硬直した。

彼らは呆然と目の前の信じられない光景を見つめ、目をこすり、太ももを強くつねって、自分たちが夢を見ているのではないか、幻覚を見ているのではないかと疑った。

普段最もひどく虐められ、「下水」とまで嘲笑されていたあの風間 悠真が、竜崎 厳を防いだだと？

学園で好き放題暴れ回り、誰も逆らうことのできなかった「親玉」の竜崎 厳を！？

彼らの世界観は、この瞬間、これまでにない衝撃を受けた。

「くそっ！死ね！」

短い驚愕の後、竜崎 厳は完全に激怒した。

彼は咆哮し、巨大な右腕を再び振り下ろしてきた。

今度は速度がさらに速く、力も一層増し、空気中には耳障りなソニックブームさえ響いた。

彼の目には凶暴な光が宿り、先ほどの屈辱を晴らすかのように、風間 悠真を完全に叩き潰し、粉々にしようという執念が込められていた。

風間 悠真は目の前の巨体を見据え、襲いかかる狂暴な力を感じながらも、その眼差しは氷のように冷たかった。

もう十分だ。

彼は心の中で呟いた。

これほど長い間耐え忍び、虐められ、嘲笑され、軽視されてきた。

今、その力が手中にあり、まるで世界の権限を掌握したかのように感じられるなら、もはや隠す必要はない。

かつて彼に降りかかった痛みと屈辱は、今こそ倍にして返すべき時だ。

「次からは、俺の番だ。」

彼は静かに呟いた。

その声は小さかったが、まるで有無を言わせぬ魔力でも帯びているかのように、はっきりと全員の耳に届き、彼らの心臓を思わず震わせた。

風間 悠真は、脆そうに見えて堅牢だった気流の障壁を維持するのをやめ、深く息を吸い込んだ。

この瞬間、彼体内の超能力は、もはや細い流れではなく、まるで億万年も眠っていた火山が突如として噴火したかのように、止めどない勢いで湧き上がり、全身を駆け巡った。

彼は目を閉じ、周囲の空気中のあらゆる気流の律動を感じ取った。

まるで空間全体の風が彼にひれ伏し、彼の命令に従っているかのようだった。

そして、彼は勢いよく目を見開いた！

その漆黒の瞳には、これまでにない鋭い光が宿り、まるで嵐がその中で渦巻いているかのようだった。

「ストーム・アライバル（嵐の到来）――！」

彼は低く叫んだ。

それはもう微弱な上昇気流でも、ただ二人の不良少年を巻き上げる程度の旋風でもなかった。

風間 悠真の体内から、空間を引き裂くかのような極限の恐怖を伴うエネルギーが爆発的に噴出し、瞬く間に彼を中心とした数十メートル四方の範囲を席巻した。

空気はまるで煮沸されたかのように、甲高く耳障りなうなり声を上げ、エネルギーの脈動する轟音と混じり合った。

肉眼ではっきりと、深淵な黒色を帯びた巨大な旋風が、何もない空間に突如出現した。

それは全てを破壊し、全てを飲み込むかのような勢いを持ち、まるで遠古の魔神が目覚めたかのように、巨大な竜崎 厳に向かって咆哮しながら進んだ！

この旋風の中心はまるでブラックホールのようで、光さえも歪んで吸い込まれていく。

無数の鋭利な風の刃で構成されているかのようで、気流の一筋一筋が鋼鉄を切断する力を秘め、また、空間全体の空気を極限まで圧縮し、全てを微塵に粉砕する恐ろしい絞殺力を生み出しているかのようだった。

それが通過した場所では、地面に深い溝が刻まれ、空気は耐えきれない悲鳴を上げた。

「あ！？」

竜崎 厳はまともな叫び声を上げる間もなく、この黒い旋風に完全に飲み込まれた。

彼が誇る巨大化された体躯は、この恐ろしい嵐の前では、紙のように脆く、全く抵抗できなかった。

彼は抗うことのできない強大な力に包まれ、拘束され、体が勝手に高速で回転し、引き裂かれ始めた。

「い、いやああああ――！」

極限にまで達した悲鳴が旋風の中から響き渡り、無限の苦痛と絶望を伴っていた。

竜崎 厳は自分の骨が歯の浮くような「バキバキ」という音を立て、今にも折れそうになるのを感じた。

筋肉は剥がされ、皮膚は無数の刃で切り裂かれるかのようだった。

彼の巨大化能力は、この純粋で、まるで何らかの法則の力が宿っているかのような嵐の前では、全く機能せず、巨大化を維持することさえ異常に困難になっていた。

彼はまるでミキサーに巻き込まれた人形のように、嵐に翻弄されるしかなかった。

旋風はますます強くなり、竜崎 厳の巨大化した体全体を完全に包み込み、巨大な黒い竜巻となった。

そして、風間 悠真の冷徹で正確な制御の下、猛然と上空へと巻き上がった！

「そこへ……飛べ！」

風間 悠真の目に冷たい光が宿り、両手を軽く押し出した。

まるで目障りなものを送り出すかのように。

巨大な黒い旋風は竜崎 厳を乗せ、放たれた矢のように高空へと突き進んだ。

彼の悲鳴はますます遠く、弱くなり、最終的には厚い雲の中に完全に消え去った。

まるで最初から存在しなかったかのように。

たったの一撃。

たったの一撃で、学園で唯我独尊だった「親玉」竜崎 厳、数多くの生徒を震え上がらせたあの巨体が、風間 悠真にゴミのように空高く放り投げられ、完全に戦意を喪失した。

高空で風に翻弄される「ボロ人形」と化し、生死も定かではなかった。

場は静寂に包まれた。

全ての音が消え、騒がしかった校内は、この瞬間、図書館よりも静まり返った。

聞こえるのは、風が葉を揺らす音と、極度の衝撃からくる生徒たちの荒い呼吸音だけが、潮のように波打っていた。

彼らは呆然と竜崎 厳が消えた空を見上げ、そして、何事もなかったかのようにそこに立つ、身なりも整った少年を見つめた。

彼の顔には得意げな様子もなく、傲慢さもなく、勝利者の狂喜もなく、ただ淡々とした落ち着きがあった。

まるで些細なことをしたに過ぎないかのようだった。

しかし、その深い瞳の奥底には、不意に漏れる、心をざわつかせるほどの強大さと、どこか淡泊な雰囲気が見て取れた。

鹿島 小雨は現場に駆けつけ、ちょうど竜崎 厳が空に巻き上げられる一部始終を目撃した。

彼女の美しい、秋の水面のような瞳は驚きに満ち、唇はわずかに開いたまま、何も言葉を発することができなかった。

これほど強力で恐ろしい超能力を、彼女は見たことがなかった。

そして、これほど容易く竜崎 厳を打ち破る者も。

風間 悠真……彼は一体どれほどの力を隠していたのだろう？

彼の超能力「上昇気流」が、まさかここまで達するとは？

彼女の心には驚濤（きょうとう）が巻き起こり、風間 悠真への品定めや不機嫌さは、瞬時に深い警戒と、そして言葉にできない興味へと変わった。

彼女は、この少年こそが学園の異常事態を解決する鍵であり、自分たちが引き込むべき相手だと認識した。

そして、黄間 桐と紅羽 鷹。

ついさっきまで風間 悠真の前で威張り散らし、懲らしめてやると叫んでいた不良少年たちは、今や顔面蒼白で、まるで大きな打撃を受けたかのようだった。

彼らの体は制御不能に震え、足はがくがくとして、ほとんど立っていることすらできなかった。

彼らは空を見上げ、そして風間 悠真を見て、骨の髄まで染み渡るような恐怖と絶望に満たされていた。

彼らはついに理解した。

自分たちが絡んだ相手は、単なる「落ちこぼれ」などではなく、羊の皮を被った怪物、想像を絶するほどの強大な存在だったのだ。

終わった。

完全に終わった。

こんな怪物を敵に回してしまった彼らのこれからの日々は、きっと以前風間 悠真を虐めていた時よりも、百倍も悲惨なものになるだろう。

風間 悠真は静かに、しかし場の全てを睥睨するかの如く一瞥した。

彼の視線が向けられた先の生徒たちは皆、無意識に頭を下げ、彼の目を真っ直ぐに見ることができなかった。

まるで冒涜してはならない神々を前にしているかのようだった。

畏敬、恐怖、そして驚愕……様々な複雑な感情が彼らの心に交錯した。

この瞬間から、秘境学園の歴史は、風間 悠真の名によって、新たな一頁を刻み始めることだろう。

彼はもう、虐げられるだけの「落ちこぼれ」ではなかった。

嵐を操る者として、風間 悠真の伝説は、今、確かにその序章を開いたのだった。