第二十五章:学園の救世主と新たな征途
風間 悠真は、里見 心愛、烈火 如歌、艾莉絲、そして姫月 星華を伴い、静寂を取り戻した古の通路から現れた。彼らの背後には、禁断の地へと続く、落ち着きを取り戻した空間が広がっていた。入口に充満していた抑圧的なエネルギー波動は完全に消え失せ、代わりに、まるで全区域が浄化されたかのような、清らかで純粋な気配が漂っていた。
「わあ!空気が綺麗になった気がするわ!」艾莉絲は深く息を吸い込み、驚きと喜びの声を上げた。
「異常エネルギーの波動が急速に減衰しています!」通信機からの朝霧 璃子の声は、信じられないほどの興奮を帯びていた。「禁断の地の外のエネルギー環境が、驚異的な速度で正常化しています!変異怪物のエネルギー反応も、ほぼ消失しました!」
朝霧の報告を聞き、風間 悠真は確信した。古き封印の補強効果は即座に現れたのだ。異常エネルギーの漏洩が阻止されたことで、それを根源とする変異怪物たちも当然、消滅するか正常に戻ったのだろう。
彼らは元来た道を戻ったが、道中は全くの平穏だった。以前は歪み、枯れていた異常区域の植生は生気を取り戻し始め、地面に散らばっていた灰色の結晶体も速やかに溶け消え、まるで最初から存在しなかったかのようだった。かつて彼らを苦戦させた変異怪物の痕跡は、今や微塵も残っていなかった。
風間 悠真の一行が異常区域を抜け、学園の裏山に戻ると、その場の雰囲気は彼らが禁断の地に入る前とは一変していた。それまでの緊迫感と恐慌は消え去り、危機を乗り越えた安堵と歓喜に包まれていた。
「異常事態が終わったぞ!」
「変異怪物が全部消えた!」
「学園が元通りになったぞ!」
生徒たちは互いに駆け寄り、顔には心からの笑顔があふれていた。教師たちもまた、張り詰めていた神経がようやく解け、安堵の息を漏らした。
風間 悠真と彼のチームが裏山に姿を現すと、彼らは瞬く間に注目の的となった。全員の視線が彼らに集中し、好奇心と探究の光が交錯する。このチームが異常区域に入り、そして異常事態が終息したことは、彼らと関係があることは明白だったからだ。
「風間 悠真様だ!」
「彼らが異常区域から出てきたぞ!」
「まさか、風間 悠真様が異常事態を解決したのか?!」
議論の声は次々と高まり、推測と畏敬の念が入り混じった視線が集中した。
すぐに、学園高層部と秦山 遠院長も裏山に駆けつけた。彼らは正常に戻ったエネルギー環境を目の当たりにし、そして眼前に立つ風間 悠真を見て、既に答えを得ていた。
秦山 遠院長は早足で進み、その表情には隠しようのない感動と感謝が浮かんでいた。
「風間 悠真くん!」秦山 遠院長は、風間 悠真の手を強く握りしめた。その口調は誠実さに満ち、心からの敬意が込められていた。「感謝する!君は学園史上、最も深刻な危機を解決してくれた!君は秘境学園を救ってくれたんだ!」
他の学園高層部も次々と進み出て、風間 悠真に感謝と敬意を表明した。彼らが風間 悠真を見る眼差しは、以前の値踏みや引き込みではなく、心底からの畏敬と崇拝に変わっていた。彼らは知っていた。この少年が、学園高層部である彼らですら成し得なかった偉業を達成したのだと。
「院長、お言葉が過ぎます。当然のことをしたまでです。」風間 悠真は淡々とした口調で、落ち着き払って答えた。
彼のこの回答は、学院高層部のさらなる賞賛を呼んだ。これほどの巨大な名誉と感謝を前にしても、風間 悠真は冷静さと謙虚さを保っていた。この心性の成熟は、並大抵の若者では到底及ばないものだった。
風間 悠真が異常事態を解決したというニュースは、翼が生えたように瞬く間に学園全体に広まった。彼が禁断の地に踏み込み、守護者を打ち破り、古き封印を補強した武勇伝は、尾ひれがついて語り継がれ、彼は学園における議論の余地なき伝説となった。
かつての**「落ちこぼれ」は、今や学園の救世主**へと変貌したのだ!
彼の名声はかつてない頂点に達し、学園創設者すら凌駕する、教師・生徒全ての心の中の偉大な存在となった。彼がどこへ行こうとも、畏敬と崇拝の視線にさらされた。かつて彼を嘲笑した者たちは、今や彼に正面から目を合わせる勇気すらなかった。
学園は風間 悠真のために盛大な慶典を催し、学園の危機を解決したその功績を称えた。慶典の席上、秦山 遠院長は自ら**「秘境学園名誉守護者」の称号を授与し、さらに学園の最も核心的な資源と権力**を彼に完全に開放すると宣言した。
慶典の壇上に立つ風間 悠真は、眼下に広がる、彼に敬意を払う無数の師生たちを見下ろしたが、その心にいささかの動揺もなかった。彼は知っている。これらの栄誉と地位は、彼が前進する道のりの付随物に過ぎないと。
彼は傍らに立つチームメンバーたちに目をやった。
里見 心愛の目には誇りと喜びが輝き、烈火 如歌は鋭い眼差しで、学園の資源をどう利用してさらに強くなるかを考えているようだった。艾莉絲は興奮して壇下の群衆に手を振り、万衆の注目を浴びる感覚を楽しんでいた。姫月 星華は冷静さを保ちつつも、その口元には微かな笑みが浮かんでいた。そして壇下の朝霧 璃子は、眼鏡を押し上げ、その瞳に探究の光を宿し、この慶典の背後にある人間の心理を分析しているようだった。
風間 悠真は微笑んだ。彼のチームもまた、この事件によって名を馳せ、学園で最も羨望され、畏敬されるチームとなった。
学園の危機解決は、風間 悠真の秘境学園における地位を揺るぎない頂点へと押し上げた。彼は学園の事実上の支配者となり、あらゆる資源と力を動員する権限を手に入れた。
だが、これらは地球という枠に限定された、取るに足らない**「小さな目標」**でしかなかった。
古き封印のさらに深層に隠された秘密、彼自身の素性の真相、そして三大派系の間にある因縁は、すべて彼が探索し解き明かすのを待っている。
彼の視線は遥か遠くに向けられ、その瞳にはより広大な世界への渇望が閃いていた。
秘境学園での伝説は、ここに円満な結末を迎えた。
今こそ、新たなる征途へ踏み出す時である。




