第二十四章:封印の秘密と玉佩
禁断の地にある巨大な円形の大広間は、静寂が支配していた。
風間 悠真の【崩壊】の侵食に曝された守護者の純粋エネルギー体は、激しい痙攣に見舞われ、その金色の光は激しく明滅し、極度に不安定な状態にあった。
彼は苦痛と怒りに満ちた咆哮を上げた。自慢のエネルギー掌握能力が、風間 悠真の前でこれほど無力だとは、守護者としての彼の認識を根底から覆す出来事だったのだ。
「あり得ない!私のエネルギーは……法則の顕現だ!どうして私を崩壊させられる!?」守護者は信じられないといった様子で叫び、エネルギーを再凝縮しようと試みた。
しかし、その崩壊の力は、骨の髄まで食い入る毒のように、彼の核を執拗に侵食し続けた。
風間 悠真は冷静な表情でその場に立ち、冷たい光を宿した瞳を瞬かせた。
彼は【法則感知】を通し、この守護者が禁断の地のエネルギー環境と密接に結びついており、言わば禁断の地そのもののエネルギーの顕現であることを見抜いていた。
そして、風間 悠真の「崩壊」能力こそが、この種のエネルギー構造にとって天敵となる力だったのだ。
「法則の顕現だと?」風間 悠真は薄く笑った。
「私から見れば、どんな法則も、より高次の力の遊び道具に過ぎない。」
彼は守護者に立ち直る隙を一切与えなかった。
体内の超能力とシステムの力がこの瞬間、完全に爆発し、【法則感知】と【エネルギー変換】が融合。
風間 悠真が手を掲げると、その掌には眩い光の塊が凝縮された。
それは単一のエネルギーではなく、複数の法則の力が精妙に融合した波動を放ち、見る者に戦慄を与えた。
「これで終わりだ。」
風間 悠真は静かに告げ、掌の光は放たれた矢のように一閃。
瞬時に守護者のエネルギー体を容赦なく貫いた。
「ぐ、あああああ――!」
守護者は断末魔の叫びを上げ、そのエネルギー体は風船が破裂するように急速にしぼんでいった。
金色の光は瞬く間に失われ、最終的には無数の微細なエネルギー粒子となって、空気中に霧散した。
彼が手にしていたエネルギー・ランスも光沢を失い、冷たい金属の残骸と化して地面に落下した。
強大な禁断の地の守護者は、風間 悠真のわずか数合の攻防の末に、完全に消滅したのだった。
大広間は再び静寂を取り戻し、残されたのは風間 悠真の掌に残るエネルギーの余波と、守護者が遺した残骸だけだった。
里見 心愛、烈火 如歌、艾莉絲、姫月 星華は、この光景を呆然と見つめた。
彼女たちは風間 悠真の強さを知っていたが、学園創設者が残した最強の守護者を、彼がいとも容易く打ち破る様を目の当たりにし、その衝撃は計り知れないものがあった。
姫月 星華は痛みに胸を押さえながら、風間 悠真を見つめた。
その眼差しは、彼の圧倒的な実力への敬意と、自分自身の無力さへの悔しさとが複雑に交錯していた。
「守護者のエネルギー波動が完全に消失しました!」通信機からの朝霧 璃子の声は、信じられないほどの驚愕に満ちていた。
「風間 悠真さん、あ、あなたが……本当に学園創設者の守護者を打ち破ったんですか!?」
風間 悠真は朝霧の驚嘆には答えず、大広間中央の石台へと歩みを進めた。
石台上のエネルギー・オーブは依然として柔らかな光を放っていたが、周囲の狂暴なエネルギー波動は既に収まっていた。
彼は石台の前に立ち、エネルギー・オーブを注意深く観察した。
その脳内にシステムの通知音が響く。
「ピッ!古き封印のエネルギー反応を検知!エネルギー強度は極めて高いです!」
「ピッ!システムは【法則分析】を用いて封印の構造とエネルギー構成を解析中です……」
システムが解析を進める間、風間 悠真は手を伸ばし、エネルギー・オーブにそっと触れた。
温かく古のエネルギー波動が指先から体内に流れ込み、彼自身のエネルギーと強烈な共鳴を引き起こした。
この感覚……それは同根の力、あまりにも馴染み深い響きだった!
「ピッ!封印構造の解析が完了しました!」
「ピッ!封印エネルギーの構成は、宿主のエネルギーと同源性が極めて高いです!」
「ピッ!封印内に大量の古き情報を検知。三大派系の起源、異常事態の根源、そして宿主の素性に関する情報が含まれています!」
「ピッ!エネルギーポイントを消費し、封印内の古き情報を解析しますか?」
システムの提示に、風間 悠真の心臓は強く脈打った。
やはり!この古き封印は、異常事態の根源であるだけでなく、三大派系の起源と、そして彼自身の素性にまで関わっているというのか!
「解析を実行しろ!」風間 悠真は迷うことなく脳内で指令を下した。
大量のエネルギーポイントが消費され、システムは超高速で稼働し、封印に込められた古き情報の解析を開始した。
無数の歳月を経て封印されていた記憶と秘密の断片が、膨大な情報流となって風間 悠真の脳内に流れ込んだ。
彼は、秘境学園の設立、創設者と道家、魔法派系との間にあった確執、異常事態の初期発生、そして古き封印が形成される過程を目撃した。
そして、さらに……彼の両親に関するわずかな手掛かり、そして彼らとこの古き封印、三大派系との間に横たわる複雑な関係の片鱗を見た。
これらの情報は、まだ完全に繋がっていないパズルのピースのようではあったが、風間 悠真に、より壮大で複雑な真実の姿を垣間見せた。
彼の素性は、彼が想像していた以上に重要であり、彼の血筋こそが、超能力、道家、魔法という三大対立勢力を繋ぐ鍵である可能性が示唆されたのだ。
情報を解析する間、風間 悠真は、エネルギー・オーブの光がさらに明るくなっていることに気づいた。
彼の接触とシステムの解析によって活性化されたかのようだった。
エネルギー・オーブはゆっくりと降下し、最終的に石台中央の窪みに収まった。
「ピッ!古き封印の核を検知!」
「ピッ!封印核と宿主の血脈エネルギーが共鳴するのを検知!」
「ピッ!宿主は古き封印の初期的な掌握権を獲得しました!」
システムの新たな通知に、風間 悠真は再び驚喜した。
なんと古き封印の初期的な掌握権を手に入れたというのだ!
これは、彼が封印を補強し、異常エネルギーの漏洩を阻止できるだけでなく、あるいは……封印の力そのものを利用できる可能性をも意味していた。
封印の核が活性化すると同時に、石台周辺の地面がゆっくりと割れ、その下に隠された空間が姿を現した。
空間は広くはなかったが、その中には古めかしい箱が一つ置かれていた。
「ピッ!古き遺物を検知!」
「ピッ!遺物は古き封印のエネルギーと同源であり、特殊な力を内包しています!」
風間 悠真は前に進み、古めかしい箱を開けた。
箱の中には、掌サイズの**玉佩**が静かに横たわっていた。
玉佩には古く複雑な符文が刻まれ、微弱な光を放っていた。
風間 悠真が玉佩を手に取ると、システム通知音が再び響いた。
「ピッ!宿主は古き遺物【封霊玉佩】を獲得しました!」
「【封霊玉佩】:古き封印の力を内包した遺物。異常エネルギーを感知、吸収し、異常エネルギー体に対して抑圧作用を発揮します。宿主の古き封印の掌握権が高まるにつれ、玉佩の力も増強されます。」
【封霊玉佩】!これは、異常事態に対処する上で強力な道具となることは間違いない。
風間 悠真は玉佩を大切にしまい、石台上の封印核を見つめた。
初期的な掌握権を得た今、封印の加固を試みる時だ。
彼は封印核に手を置き、体内の力を動員し、システムから提供された封印構造の情報と組み合わせて、古き封印の修復と補強を開始した。
風間 悠真の力が注ぎ込まれるにつれ、封印核の光はますます明るくなり、周囲の符文も活発に瞬き始めた。
禁断の地内部でわずかに乱れていたエネルギー波動は、徐々に安定していった。
「異常エネルギーの波動が弱まっています!」通信機からの朝霧 璃子の声には、驚きと喜びが混じっていた。
「禁断の地内部のエネルギー環境が正常に戻りつつあります!」
風間 悠真は、自分が成功したことを悟った。
古き封印は補強され、異常エネルギーの漏洩は効果的に阻止されたのだ。
異常事態の根源は、一時的にせよ解決されたのだった。




