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序章

伝説によると、世界には三大勢力が存在するという。


それは道家、魔法、そして超能力だ。

この三つの勢力は古くから互いに対立してきた。

数千年の時を経て、世界では道家が唯一現存し、魔法は既に消滅したと認識されている。そして、超能力は、一度も存在したことがないものとされていた。

しかし、実際には、これら三つの勢力は、今も何らかの形でこの世界に鼎立ていりつしているのだ。


とある隠された谷には、「秘境学園」という特殊な学校が存在した。そこは超能力を持つ生徒たちを専門に育成する場所だ。

風間かざま 悠真ゆうま、十六歳。彼はここの生徒だった。

幼くして両親を失い、彼は自らを超能力の達人と称する謎めいた師匠に引き取られた。

風間 悠真の超能力は、「気流」を操ること。

通称、上昇気流だ。

気流を操って人と戦うことができる。

表向きはそうだった。

だが、実際には、その超能力はあまりにも非力すぎた。並の雑魚モンスター相手ですら、多大な労力を要した。

十六歳で学校へ通う、その日まで。

「そろそろ、お前に伝える時が来た、子よ。」

師匠は言った。

「実は、お前の超能力は、まだ覚醒していないのだ。」

「えっ!?」

風間 悠真は驚嘆の声を上げた。その驚きの中には、悲喜交々(ひきこもごも)の感情が入り混じっていた。

彼は幼い頃から、この脆弱ぜいじゃくな超能力のせいで、学校でろくな目に遭わず、様々な不良に虐められてきたのだ。

まさか、自分の超能力が、実はもっと強力なものだというのだろうか?

「実は、私は超能力の達人ではない。」師匠は言った。「私の真の身分は、道家の達人だ。」

「え、師匠が、まさか!?」風間 悠真は感嘆した。

道家と超能力は、まさに敵対関係にあるのだから。

よく考えてみれば、師匠は自分の目の前で、真剣に超能力や道力を使ったことが一度もなかった。

まさか、師匠はここに隠遁いんとんし、道家の達人であることを隠して、何か企みがあるのだろうか?

もしそうだとしたら、自分は一体、道家派なのか、それとも超能力派なのか?

「落ち着け、悠真。」師匠は慌てて諭した。「私と超能力派は何の関わりもない。」

「そうなのですか?」

そう言われると、自分には何の派閥に属するという問題もない。

「さあ、お前が真の超能力を覚醒させる手助けをしよう。」

師匠が両手を一振りすると、一つの旋風が二人を巻き上げた。

「うわああ!」

風間 悠真は怖がって大声で叫んだ。

「大丈夫だ、子よ。」


場面は一転した。

風間 悠真と師匠は、秘境学園の古き儀式の大広間に立っていた。周囲の壁には歳月の痕跡が深く刻まれ、一本一本のひび割れが、知られざる秘密を物語っているようだった。

空気中には神秘的で古めかしい気配が満ち、風間 悠真の心臓は思わず早鐘を打った――もしかしたら、先ほどの衝撃からまだ回復していなかったせいかもしれない。

この古き儀式の大広間は、本来、毎年一度、新入生が超能力を覚醒させる時にしか開かれない場所だ。

どうやら、この師匠は、評判通りの人物らしい。

儀式の大広間の中心には、巨大な水晶球が置かれていた。それは淡い青い光を放ち、空間全体を照らしている。

この水晶球は覚醒の儀式の核であり、体内に潜在する超能力を導き出し、活性化させる力があるという。

「準備はいいか、子よ?」師匠の声が風間 悠真の耳元で響いた。そこには、わずかに察せられる期待の色が混じっていた。

「し、師匠、脅かさないでくださいよ!」

風間 悠真は深く息を吸い込み、頷いた。目を閉じ、周囲の全てを感じ取り、自らの心が水晶球と共鳴しようと試みた。

儀式が始まった。師匠は古き呪文を唱え始めた。その声は低く力強く、まるで遠古からの呼びかけのようだった。呪文が進むにつれて、水晶球の光はますます輝きを増し、広間全体が奇妙な青い光に包まれた。

風間 悠真は、水晶球から温かい力が湧き出し、ゆっくりと全身に流れ込んでくるのを感じた。この力はまるで春風のように心地よく、これまでにない安らぎとリラックスをもたらした。しかし、時間が経つにつれて、この力はますます強くなり、体内で脈動し始め、まるで突破口を探しているかのようだった。

風間 悠真の心臓はますます速く鼓動し、体内の何かが目覚めようとしているのを感じた。呼吸は荒くなり、額には細かい汗が滲み始めた。彼は冷静さを保とうと努め、師匠の指示に従い、意識を水晶球に集中させた。

突然、風間 悠真の体内で強烈な力が爆発した。彼はまるで体が引き裂かれるかのような感覚に襲われた。目を開けると、自分の両手は淡い気流に包まれており、その気流はどんどん強くなり、最終的には巨大な旋風を形成し、彼自身をその中に包み込んだ。

「ああ!」風間 悠真は苦痛の叫びを上げた。力は膨張し続け、まるで体の束縛を打ち破ろうとしているかのようだった。

まさにその時、師匠の声が再び響いた。「抗うな、力を自然に流せ、それがお前の体の一部となるように。」

風間 悠真は感情を落ち着かせようと努め、体をリラックスさせ、その力を体内で自由に流れるに任せた。次第に、彼はその力と一体となるのを感じた。その力はもはや負担ではなく、制御可能な、強力な力となっていた。

旋風がゆっくりと消え去ると、風間 悠真はその場に立っていた。彼の目には、これまでにない輝きが宿っていた。

この時、風間 悠真は初めて知った。自分の超能力が覚醒したのだ。彼はもう、あの非力な少年ではなく、強大な力を持つ超能力者となっていた。

「よくやった、悠真。」師匠は彼の傍に歩み寄り、満足げな笑みを浮かべた。

「僕の超能力は何なんですか?」

風間 悠真は待ちきれず、その超能力を自分の手の中に囲い込もうとした。

手の中の気流は、もはやかつての非力な気流ではないと感じた。

それは、恐ろしい旋風だった。

まるで千里先せんりさきてきをもおそうかのような感覚だった。

風間 悠真は拳を握り締め、体内にみなぎる力を感じた。

自分の道を歩む時が来たのだ。

「よし、子よ。私の役目は、これで終わりだ。これからは、お前次第だ……」

師匠の周りに再び旋風が巻き起こり、風間 悠真は再び巻き上げられ、姿を消した。

「師匠、師匠、師匠!」

一度経験したとはいえ、突然の強風に風間 悠真はやはり強い恐怖を感じた。

場面は再び一転する。

風間 悠真は、最初のあの家に戻っていた。

ただ、今回は、師匠の姿は傍にはなかった。

「師匠――」

風間 悠真は幼い頃から、両親がいなかった。師匠は彼にとって、本当の父親と何ら変わりない存在だった。

今、別れを告げなければならない。

師匠が実は道家の達人であったとしても、風間 悠真は彼に心から感謝していた。

この力の覚醒と共に、風間 悠真の脳裏に突然、神秘的な声が響いた。


「私は超能力覚醒システム。あなたの超能力レベルはLV.1。あなたの超能力は上昇気流です。」

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