表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/65

カノンの遺跡とオルドの鍵

乾いた風が吹きすさぶ中、砂に覆われた巨大な構造物が姿を現す。

それが、“カノンの遺跡”。

100年前、科学と魔法の交差点だった文明都市の成れの果てだ。


「ここが……」

光一は、じっと崩れかけたゲートを見つめた。

かつて栄えた都市とは思えない、無機質で荒んだ空気が漂っている。


(でも……この奥に、希望がある)

彼は剣の柄を握り直す。


「遺跡の奥深くに、“オルドの鍵”がある」

ノアが淡々と説明する。

「それがあれば、ノルディアの封印を解くことができる。次のステージへ進む鍵だ」


「行こう」

光一は歩き出した。


「おいおい、そんなに張り切ると転ぶわよ」

ルナが肩をすくめる。

「……水属性のくせに、砂漠じゃテンション下がるって言ってたくせに」


「人は成長するんだよ!」

光一が振り返り、笑う。

その顔は、どこか楽しげで、頼もしさすらあった。


「……まったく」

ノアはわずかに目を細めた。

(その笑顔が、世界を変えるかもしれない……)

そんな考えがふとよぎるが、すぐに打ち消した。


◆ ◆ ◆


遺跡の内部は、時間が止まったような静けさに満ちていた。

崩れかけた階段、腐食した金属フレーム、それでもなお動き続ける発光パネルが、過去の繁栄を思わせる。


「……このあたり、気をつけて」

ノアが静かに警告を発した。

「中級防衛兵器、アームズ・ガーディアンがいる可能性が高い」


その言葉が終わるより早く——

壁の奥から、金属の擦れる音とともに巨大な影が現れる。

それは、四本の機械の腕を持つ、全身を装甲で覆った殺戮兵器だった。


「出やがった!」

光一は剣を抜き放つ。

その刃が水の輝きを帯び、うねるように形を変える。


「ルナ、援護を!」

「任せて!」


ルナは両手を組み、詠唱を始める。

《風よ、導け——疾風障壁!》

三人を囲むように風の盾が展開され、飛んできたレーザービームを弾いた。


「ノア、敵の弱点は?」

光一が叫ぶ。

「背面エネルギーコアだ。だが、動きが速い。攻撃は正面から引きつけるしかない」


「了解!」


ガーディアンが突進してくる。

光一はその勢いを真正面から受け止める。

《水刃・双牙!》

二本の水の刃が交差し、金属の剣と激突する。

火花が散り、衝撃が全身に響く。


「重い……でも、負けねえ!」

必死に押し返す光一。

その目には恐怖ではなく、闘志が宿っていた。


「ルナ!」

「雷撃、発動!」

ルナの魔法が炸裂し、雷光がガーディアンの関節を襲う。

その動きが一瞬鈍る。


「今だ、光一!」

ノアの声が飛ぶ。

「斬り裂け!」


光一は跳躍し、空中で刃を構える。

《水刃・裂波!》

水流が鋭い刃となり、ガーディアンの背面装甲を切り裂く。

露出したコアが明滅を始めた。


「ノア、頼んだ!」

「了解」


ノアは滑るように駆け寄り、手をかざす。

「《干渉・強制停止》」

淡い光がノアの手から流れ込み、AIのコアに侵入する。

一瞬、ガーディアンが悲鳴を上げるように軋む——

そして、動きを止め、崩れ落ちた。


「終わったか……」

光一が息を整えながら剣を戻す。


「無事でよかった」

ルナもほっと息をつく。


「まだだ」

ノアが前を指す。

「奥に、オルドの鍵がある」


祭壇の間に辿り着くと、そこに鎮座していたのは蒼く輝く鍵だった。

かつて人類が誇った技術と魔法の結晶——それが“オルドの鍵”だ。


「これが……」

光一は慎重に手を伸ばし、鍵を手に取る。

その瞬間、体の奥に温かい何かが流れ込んだ気がした。


「それは……世界を繋ぐ鍵でもある」

ノアが静かに言う。

「お前の選択次第で、扉は天にも地にもなるだろう」


光一は頷いた。

「なら、俺は……天に繋げたい」


ノアはその言葉に一瞬目を細めた。


(お前なら、きっと……)


遺跡を出る頃、空は夕暮れに染まっていた。

ルナが小さく笑う。

「次はどこに行くの?」

「ノルディアだ」

ノアが答える。

「だが、その前に……少し準備がいる」


「準備って?」

光一が聞き返すと、ノアは珍しく小さな溜息をついた。


「……水の都、アクアベルに寄る」

「おお!水の都!俺の属性じゃん!」

光一がはしゃぐ。

「温泉とかあるのか?!」

「……知らん」

ノアは肩をすくめた。

ルナがくすくすと笑いながら、二人の後を歩いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ