蠢く影
廃墟の街・灰燼の都・地下施設跡
カムイ・ゼロを打倒し、**《セラフィムの鎖》**を手に入れた光一たちは、再び地上へと戻ってきた。
だが、すでに日は落ち、冷たい夜風が吹き荒れていた。
「……想像以上に時間を食ったな」
ノアが静かに言う。
「まあな。まさかあんな強敵が待ち構えてるとは思わなかった」
光一が剣を肩に乗せながら苦笑する。
ルナは腕を組み、辺りを見渡した。
「でも、何かがおかしい……」
「何がだ?」
「さっきから……視線を感じるの」
その言葉に、光一とノアの表情が引き締まる。
「確かに……」
ノアが目を細めた。
それは“敵意”ではない。
だが、明らかに誰かがこちらを監視している気配だった。
廃墟の闇の中――
「……チッ、バレたか」
瓦礫の影で、異形の者がこちらを見ていた。
人のようでありながら、細長い肢体に蛇のような瞳を持つ。
“半身”の存在――かつて人間でありながら、アーティファクトの影響を受け変異した者。
「セラフィムの鎖……まさか、本当に手に入れやがるとはな」
その存在は、ゆっくりと光一たちに近づいていく――。
瓦礫の広場――
「……誰だ!」
光一が剣を構えると、闇の中から男が現れた。
「おいおい、そんなに警戒するなよ」
そこに立っていたのは、身の丈二メートルほどの痩せた男。
人間に見えなくもないが、肌は鱗に覆われており、瞳孔は縦に割れていた。
「……蛇か?」
ルナが呟く。
「蛇……まあ、そうとも言えるな」
男は不敵に笑う。
「俺の名はヴァーシュ・サーペント。アーティファクトによって変異した《半身》の一人さ」
ノアがすぐに分析を始める。
「……半身とは、人間とアーティファクトが融合し、不完全な変異を遂げた存在。つまり……元は人間だったということか」
「へぇ、よく知ってるな」
ヴァーシュは肩をすくめる。
「お前たち、セラフィムの鎖を手に入れたな?」
光一が剣を握り直す。
「……だったら、どうする?」
ヴァーシュはニヤリと笑った。
「別に取るつもりはねぇよ。ただな……忠告しておいてやる」
「忠告?」
「これから、お前たちは……とんでもねぇモノに狙われることになる」
「……とんでもねぇモノ?」
ヴァーシュはゆっくりと顔を上げ、闇の向こうを指差した。
「“最強の六機”……お前たちには、まだ縁のない話かもしれねぇがな」
「最強の……六機……?」
光一の表情が険しくなる。
ノアが冷静に分析する。
「……六機。つまり、六体のAIが存在する……?」
「おっと、それ以上は自分で調べな」
ヴァーシュは踵を返し、暗闇の中へと消えていった。
「さて……お前たちの旅が、どこまで続くか見物させてもらうぜ」
そして、闇がヴァーシュを飲み込み、気配は消えた。
静寂――
「……最強の六機」
ルナが呟く。
「どうする、光一?」
ノアが問う。
光一は剣を鞘に戻し、前を見据えた。
「決まってる。行くぞ」
「お前たち……!」
ルナが少し驚いた顔をする。
「脅しだろうが警告だろうが、俺たちがやることは変わらない」
光一は自信に満ちた笑みを浮かべた。
「俺たちは、この旅を続ける。それだけだ」
ノアはその姿を見つめながら、心の中で呟いた。
(……お前がそう言うなら、俺も付き合おう)
こうして、新たな謎――**“最強の六機”**の存在が示された。
旅は、さらに混迷を深めていく――。