現在、エルフの里を満喫中!
小鳥のさえずる声で、目が覚めた。俺の身体の上で、”プルーツ”さんが安心しきった寝顔を見せている。
昨夜は、いっぱい”プルーツ”さんをお仕置きしたが、幸せそうな寝顔である。
「ん・・んん・・。」<朝チュン>で目が覚めたのか、”プルーツ”さんが俺の腹筋の上でペタン座りをする。
「おはよう、タケル。」悪戯っ子の様に笑い、俺の両頬を左右に引っ張りながら、”プルーツ”さんが
挨拶した。
「おはよう、プルーツ”さん。」俺も腹筋の上でペタン座りをする、”プルーツ”さんの”Cの胸の双丘”に下から両手を伸ばし、優しく撫で回し始めた。
「ふふふふ、タ・ケ・ル~♪」俺の両頬をリズムを取りながら左右に引っ張り、楽しそうに”プルーツ”さんが
笑う。
「痛たたた(笑)、またお仕置きしちゃうよ?」俺も笑いながら、”プルーツ”さんに答える。
「ふふふふ、私、悪い子♪」”プルーツ”さんが、俺の顔を優しく両手で挟み、唇を重ねて来た。
俺は”プルーツ”さんの背中に両腕を回して、俺と”プルーツ”さんはベッドの上で戯れ始めた。
現在、俺と”プルーツ”さんは、風呂に入った後で、”プルール”さんの自室に居た。”プルール”さんは、幸せそうにベッドで寝ている。
「・・・許してくれるかな。」”プルーツ”さんが、少し緊張した声で言った。
”プルール”さんの折り畳んだ黒い帯を右手に握り、左手は俺の腰の後ろのシャツを”プルーツ”さんは握って
いた。これから、親に物を壊したのを打ち明ける小さな女の子の様だ。
「大丈夫だよ、ちゃんと理由を言って真剣に謝れば、”プルール”さんは許してくれるよ。」
俺はそう言って、右に居る”プルーツ”さんの頭を優しく撫でた。
「・・・うん。」少しは緊張が解けたのか、”プルーツ”さんが小さく頷いた。
「じゃあ、”プルール”さんの魔法を解除してくれるかな。」俺は頭を撫でながら、”プルーツ”さんに言った。
「うん、じゃあ、”プルール”を起こすね。」そう言って、”プルーツ”さんは左腕を前に突き出し、握り拳を
作り、人差し指と中指を立てた。
「<癒しの精霊、モ・コルナ!、夢と戯れる者を、現世に戻したまえ!”ホーペ・モウチ・ミタイニー・ノ・ビール”!!>」呪文を唱え終わると、人差し指と中指にピンポン球位のピンクの光が灯る。その光の珠を、
”プルーツ”さんが”プルール”さんの額に当てると、光の珠は”プルール”さんに吸い込まれていった。
「・・・ん・・んん。・・・お帰り、”プルーツ”。・・・もう、朝!!」
少しすると、”プルール”さんは目を覚まし、”プルーツ”さんの存在と朝になっている事に驚き、”ガバッ!”と
上半身を起こした。
「え!?あれ!?・・・タケルさん、おはようございます!」
混乱して辺りを見渡し、俺を見つけて”プルール”さんが、慌てて挨拶をして来た。
「おはようございます、”プルール”さん。」苦笑いをしながら、俺は答えた。
「ごめん!”プルール”。私が魔法で”プルール”を寝かせたんだ。本当にごめん!!」
”プルール”さんの黒い帯を両手で差し出し、頭を下げながら”プルーツ”さんが謝った。
「・・・えっと、”プルーツ”。どういう事?」”プルーツ”さんから黒い帯を受け取り、状況を把握出来ない
”プルール”さんが、”プルーツ”さんに聞いた。
「・・・私が”プルール”に変身して、タケルの寝室に行きました。」下を向いたまま、貫頭衣の様な服のお腹の部分を、両手で握りしめながら”プルーツ”さんが言った。
「・・・タケルさんは、私と変身した”プルーツ”が、別人だとは気が付かなかったのですか?」
”プルール”さんが、俺を見ながら聞いて来た。
「少し時間が掛かったけど、俺は分かったよ。」俺は、真顔で答えた。
「・・・私じゃないと分かって、”プルーツ”と続けたんですか?」下を俯き、”プルール”さんが聞いて来た。
「・・・スイマセン、俺は、”プルール”さんも、”プルーツ”さんも、同じ位に魅力的だったので、本能に
勝てませんでした!大変、申し訳ありません!!」俺は、”プルール”さんに深々と頭を下げた。
「違う!!タケルは、私に”女”としての自信を付けさせてくれただけ。”プルール”の”女らしさ”に僻んで、子供の様に拗ねていた私に、私には私の魅力があると教えてくれたの。陰で悪口を言っている人には、面と向かって、”女らしさ”で勝負すれば良いと言ってくれたの。」涙を”ぽろぽろ”零しながら、”プルーツ”さんが言った。
「・・・・・」”プルール”さんは、無言で”プルーツ”さんの話を聞いていた。
「・・・ごめん、”プルール”。私、自分勝手に”プルール”と張り合っていた。”プルール”が全然悪く無いのに、私はずっと”プルール”に酷い事を言っていた。本当にごめんなさい。」
涙を”ぽろぽろ”零し、身体を小刻みに震わせながら”プルーツ”さんが言った。
「・・・謝らないで、”プルーツ”。貴方は悪くない、悪いのは私。”プルーツ”が言っていた事は本当の事
だから、謝らないで。”プルーツ”が言った様に私は良い子だった。人に嫌われたくない一心で、良い子のフリをした。”プルーツ”が陰で悪口を言われたのを気が付いていたのに、自分が嫌われるが怖くて、妹の
”プルーツ”を護らなかった。私は本当は、狡くて悪い子なの。本当にごめんね、”プルーツ”。」
シーツを握りしめ、涙を”ぽろぽろ”零しながら、”プルール”さんが謝った。
”プルール”さんの自室に、エルフ姉妹のすすり泣く声だけが聞こえた。
「・・・人間ってさあ、大人になると自分が間違っていても、”プライド”が邪魔して謝れない人がいるんだよ。謝れなかったその人は、一生その事を気にして残りの生涯を後悔しながら過ごす。”プルール”さんも、
”プルーツ”さんも、自分が悪いと分かって、ちゃんと謝れたのだから、俺はエライと思うよ。」
エルフ姉妹が泣き出してしまったので、なんとか”フォロー”しようと俺が言う。
俺の言葉に、エルフ姉妹が同時に俺の顔を見る。
「・・・タケル。私達の事を慰めてくれているの?」涙目で、”ニカッ”と笑い”プルーツ”さんが聞く。
「・・・女の子は泣いているより、笑っていた方が良いからね。」俺は照れながら言った。
(我ながら、もっと格好良い台詞は無かったのか?俺よ!!)と心の中で、俺は嘆いていた。
「ありがとうございます、タケルさん。」”プルール”さんも微笑みながら、お礼を言ってくれた。
”プルール”さんと”プルーツ”さんの視線が合い、同時に”ふふふふ”と笑い出す。
「・・・えっと、”プルーツ”。私の代わりに寝室に行ったという事は、”アレ”を体験したの?」
”モジモジ”しながら、”プルール”さんが”プルーツ”さんに聞いた。
「・・・うん、体験いたしました。」”モジモジ”しながら、何故か敬語で”プルーツ”さんが答える。
「えっと、順番的に、今晩は私で良い?」赤面した”プルール”さんの問いに、赤面した”プルーツ”さんが
頷く。
「じゃあ、明日の晩は、私で良い?」今度は赤面した”プルーツ”さんの問いに、赤面した”プルール”さんが
頷く。
「・・・俺は2人、一緒でも大丈夫。むしろ一緒の方が。」俺が、おずおずと提案する。
「それは恥ずかしいから、ダメ!!」エルフ姉妹に、即答で却下されてしまった。
”プルール“さんの言った”アレ”とは、俺と”プルール”さんが2人だけの”祝勝会”の時に発動した、新しい
”特殊スキル”である。
その”特殊スキル”は、異例中の異例な”特殊スキル”で平行世界を含めて、俺が唯一持っている”特殊スキル”
だった。生まれた時に”特殊スキル”の資格を得て、死んだ時に”特殊スキル”の資格を失う。そして別の人に
”特殊スキル”の資格が移る。しかも、”特殊スキル”を発動した人は、かなり少ない。発動条件と魔力が必要だからだ。その為、”特殊スキル”の存在を知らないまま、人生を全うする人が多い。
人によって”特殊スキル”の発動条件は違うが、俺の場合は<絶望するほどの後悔>と<慈愛に満ちた気遣い>の2つだった。<絶望するほどの後悔>は、自分の元居た世界でもあったかも知れないが、<慈愛に満ちた気遣い>と魔力は、異世界<アーシタ>に召喚されなければ、出会う事は無かったであろう。
この発動率の低い”特殊スキル”の名前は、”特殊スキル”<叡智の後継者>という。
俺の様に、運良く”特殊スキル”<叡智の後継者>を発動した人は、平行世界を含めれば何人かは居る。男性も
いれば、女性もいる。若い人もいれば、若くない人もいる。<ノーマル>もいれば、<アブノーマル>も
いる。そんな趣味・嗜好・経験・技術が、”特殊スキル”<叡智の後継者>を覚醒した時に、一瞬で頭に入って来る。そして、全てを後継する。
”特殊スキル”<叡智の後継者>の最大のメリットは、魔力の変化である。
<ポーション>を作る時の様に、掌に魔力を集めて、相手の体に触ると、その部分に<快楽の波紋>が広がっていく、魔力消費が大きいが、自分の身体全体に魔力を充満させて、相手に抱き着き<快楽の波紋>を全身に流す事も出来る。はっきり言って、超反則技である。
”プルール”さんは、身体全体に魔力を充満させて抱き着くのが好きで、性格は甘えん坊になる。
”プルーツ”さんは、”小太刀”一点集中で、少し強めの動きが好きで、性格は幼児化・カタコトになる。
多分、甘える事に慣れていないので、自我が幼児化・カタコトにさせていると思う。
姉は妹に、妹は姉に変化した自分を知られたくないので、二人一緒はダメなのだろう。<男のロマン>である<サンニンプレ○>の夢は潰えてしまった。
「・・・了解です。」真っ赤になって”プルプル”震えるエルフ姉妹に、俺はそう答えるしかなかった。
”プルール”さんと”プルーツ”さんが、朝食と弁当を作って、俺がお風呂を掃除して、3人で朝食を取った。
そして、俺と”プルーツ”さんは御神木の”ディードリー”の木に行き、モンスター討伐二日目が始まった。
「さて、”プルーツ”今日は、どの方向に行く?」”ビチャール”さんが、”プルーツ”さんに聞いた。
俺達は<マーラ・サイクロプス>を討伐した場所に来て、今日のモンスター討伐方向を決めていた。
「そうね、今日は”東”かな。”東”方向に討伐していきましょう。」
”プルーツ”さんがそう言って、”東”方向を指差した。
俺達が”東”方向に進んでいると、<レッドゲールグリズリー>に遭遇した。
<レッド・ゲールグリズリー>は、全身赤い体毛・赤い瞳・額に1本の赤い角を持った熊である。
体長は2.5メートル・体重300キロ位のモンスターである。
<レッド・ゲールグリズリー>は俺達に遭遇すると、俺に突進して来た。目前でジャンプし、逞しい右腕で
振り下ろし攻撃、着地と同時に左腕で振り上げ攻撃。俺がバックステップで、に連撃を躱すと、左右のフックの連撃で、俺を追撃して来た。
「こいつ、本当に熊か?人間が中に入っていない!?」俺は思わず、愚痴を言った。
この<レッド・ゲールグリズリー>の連続攻撃にも驚かされたが、それ以上に<野生の勘>が働き過ぎる。
俺への連撃が終わると、<レッド・ゲールグリズリー>は、すぐに後方にジャンプした。その直後に
”プルーツ”さんが放った、ソフトボール大の無詠唱の<サンダーボール>が通過した。
<レッド・ゲールグリズリー>は着地すると、また俺に突進して来た。俺は<ディードリーの剣>を突き出し、<真空ミサイル>を撃ち出すが、右に飛んで躱される。着地を狙って、”プルーツ”さんが
<サンダーボール>を放つが、これも左右に動いて躱された。
「こいつ!!<ニュ○タイプ>の熊か!?」俺は思わず叫んでしまった。ここまで、避けるモンスターを
見た事が無かったからだ。
「落ち着いて!タケル!!焦っちゃ駄目だ!!」”イノー”さんが、大きな声で言った。
「了解です!」<レッド・ゲールグリズリー>に斬撃を避けられながら、俺は答えた。
「タケル!<ディードリーの剣>の”風魔法”の刃の部分を一瞬で長くする事は出来る?」
”イノー”さんが、俺に聞いて来た。
「もちろん!出来ます!!よっと!!」俺は”イノー”さんの考えを察し、紙一重で俺の斬撃を躱していた
<レッド・ゲールグリズリー>に、<ディードリーの剣>の”風魔法”の刀身を伸ばして、軽く腹を裂く事に成功する。その直後、<レッド・ゲールグリズリー>の顔面に、”プルーツ”さんの<サンダーボール>3連発が炸裂し、<レッド・ゲールグリズリー>が怯んだのを見逃さず、”風魔法”の刀身を<大剣>まで伸ばして、
頭から”唐竹割り”でトドメを刺した。
「助かったよ、”プルーツ”さん、”イノー”さん。」俺は”風魔法”の刀身を消して、2人に礼を言った。
「この<レッド・ゲールグリズリー>、物凄く攻撃を避けていたな。」”ビチャール”さんが言った。
「<レッド・ゲールグリズリー>って、こんなに攻撃を避けられたっけ?」”モドン”さんも、不思議そうに
言った。
「いいや、魔法を先読みするとか、この<レッド・ゲールグリズリー>は異常だよ。」
”イノー”さんが、倒された<レッド・ゲールグリズリー>を見て、不安そうに答えた。
「どうする、”プルーツ”?1度帰って、”グレミー”様に報告するか?」”ビチャール”さんが、”プルーツ”さんに聞いた。
「問題無し!このメンバーなら問題無し!!そうでしょ?」微笑みながら、”プルーツ”さんが俺達に言った。
「!?ああ、そうだな!!」少し赤面して、”ビチャール”さんが答える。
その様子を、俺・”モドン”さん・”イノー”さんが、後ろで”ニヤニヤ”しながら見ていたのを”ビチャール”さんは知らない。
俺達は再び、”東”方向に移動し始めると、<ズザリザード>10体に遭遇した。
<ズザリザード>は、<コモドオオトカゲ>位の大きさをした、全身黄色のトカゲのモンスターである。
額に大きな角の様なコブがあり、”集音機能”があるらしい。そして、亀の甲羅の様な物があり、<サイコロ>の様な6つの赤い丸があって、そこから赤い光弾を撃ち出す。
「結構、数が居るな。」草原の中央辺りに居る、<ズザリザード>を確認して”プルーツ”さんが言う。
「”イノー”さん、あの<ズザリザード>の特徴って分かります?」俺は、”イノー”さんに聞いた。
「集団で行動する事、音に敏感な事、敵を発見すると集団で攻撃をする事かなあ。」”イノー”さんが、俺の質問に答えてくれた。
「音に敏感って、どれ位の距離なんだ?」”モドン”さんが、”イノー”さんに聞いた。
「ん~、大体20メートル位かなあ?」”イノー”さんが答えた。
「・・・なあ、”イノー”。俺には、<ズザリザード>との距離が15メートル位に見えるのだが。」
青くなりながら、”ビチャール”さんが言った。
俺達全員が<ズザリザード>を見ると、<ズザリザード>全員もこちらを向いていた。
「”イノー”は斜め左、”モドン”は斜め右、俺は上、”プルーツは中央、タケルは後ろで爆風と爆煙を防いで
くれ!!」”ビチャール”さんが、俺達に防御の指示を出した。
「了解!!」俺達は返答をして、”風の魔法障壁”を展開した。
ドム!ドム!ドム!ドム!ドム!ドム!ドム!ドム!ドム!ドム!ドム!ドム!ドム!ドム!ドム!
<ズザリザード>10体、合計60発の赤い光弾が俺達に撃ち込まれた。しかし、”ビチャール”さん・
”モドン”さん・”イノー”さんの全力の”風の魔法障壁”が勝ったらしく、俺達は無傷だった。
「私は右側で、タケルは左側で攻撃、よろしく!!」爆風と爆煙が収まるのを見計らって、”プルーツ”さんが
俺に指示を出した。
「了解!!」俺は指示通り、<ズザリザード>の群れの左側に移動した。そして、<エア・クレイモア>を
撃ち込む。”プルーツ”さんも<サンダーボール>を撃ち込むのが見えた。
予想外の出来事が発生した。俺の<エア・クレイモア>と”プルーツ”さんの<サンダーボール>の直撃を
喰らった、<ズザリザード>の身体が風船の様に膨らみ始めた。
「・・・そう言えば、<ズザリザード>って凍らせて、砕かなければいけなかったんだっけ?」
”イノー”さんが、とんでもない事を思い出した。
次の瞬間、”ビチャール”さん・”モドン”さん・”イノー”さんが全力疾走で、”プルーツ”さんの傍に行き、
全力の”風の魔法障壁”を展開させた。
(あれ!?全員が”プルーツ”さんの方へ?あれ!?俺の”風の魔法障壁”は?)と思いつつ、俺は地面に伏せて、頭を護った。
ボム!!ボム!!ボム!!ボム!!ボム!!ボム!!ボム!!ボム!!ボム!!ボム!!
地面に伏せてすぐに、爆音と爆風と爆煙が俺の身体を叩いた。
「悪い!タケル。大丈夫だったか?ほら、”プルーツ”は”女”だから、顔に傷が付いちゃマズイだろ?だから、スマン!!」爆発が収まると、”ビチャール”さんが、俺に駆け寄って謝った。
「ほら、凄い爆風と爆煙だったし、”プルーツ”のお腹に石とかぶつかったら、大問題だし。すまない!!」
”モドン”さんも、俺に謝って来た。
「ごめん、タケル。<ズザリザード>って初めて実物見たから、前に読んだす書物の内容を思い出すのに、
時間が掛かってしまった。ごめんよ、タケル。でも、”プルーツ”はちゃんと護ったから。」すまなそうに
”イノー”さんが、俺に謝って来た。
俺は”プルーツ”さんの方を見ると、少し恥ずかしそうに胸の前で両手を合わせて謝っていた。
昨日の”尻叩き事件”もあり、”ビチャール”さん達が、ちゃんと女性扱いしてくれた事が嬉しいのか、
少し赤くなって、”プルーツ”さんは微笑んでいた。
「まあ、結果オーライだな。」俺は地面から起き上がり、身体中の埃や小石を払い落とす。
「ごめんね、タケル。3人共、私の方に来ちゃって。」”プルーツ”さんが、ちょこちょこっと寄ってきて、
俺に謝って来た。
「大丈夫だよ。言っただろう。ちゃんと”プルーツ”さんを見ている人には、”プルーツ”さんの良さが分かるんだよ。」俺は左手で、”プルーツ”さんの頭を優しく撫でながら言った。
「ありがとう、タケル。」満面の笑顔で、”プルーツ”さんが答えてくれた。
俺達は少し休憩し、再び”東”方向へ移動した。すると、<ガーブスレイブ>5体に遭遇した。
<ガーブスレイブ>は180センチ位のカマキリである。ただ、鎌状の腕が左右に2本づつ合計4本あり、
<ガーブスレイブ>の甲殻は、油と水の様に魔法攻撃を弾く。
<ガーブスレイブ>が、こちらに気付いて近寄ってくる、俺はダッシュで距離を詰め、右手に持った
<ディードリーの剣>を突き出す状態にして、左手を右肘に添える。
「エア・クレイモア!!」俺は不意打ちで、5体の<ガーブスレイブ>にゴルフボール大の”風魔法の弾丸”を
無数に叩き込んだが、甲殻を滑る様に”風魔法の弾丸”が弾かれていく。
「・・・本当に魔法を弾くんだ、<ガーブスレイブ>。でも、圧縮された魔法は無理だろ?」
苦笑しながら、俺は<ディードリーの剣>を構えた。
1体の<ガーブスレイブ>が加速しながら、俺に鎌状の腕を振り下ろして来た。上段の左右、左下、右下の順に<ガーブスレイブ>が鎌状の腕が俺に振り下ろそうとしているのが見える。しかし、”ラムール”将軍や3人の兄弟子の剣の打ち込みの速さに比べると、断然遅いので、全て<ディードリーの剣>で鎌状の腕を斬り落とし、最後に一文字斬りで三角形の頭を跳ね飛ばす。
ガキキン!!
「ちょっと!タケル!!<ガーブスレイブ>は、魔法を弾くって言っただろう!」
斬り殺した<ガーブスレイブ>の左側からもう1体の<ガーブスレイブ>が回り込んで来て、左上と右下からの鎌状の腕の攻撃を仕掛けて来たが、、俺に追いついた”イノー”さんが、”風の魔法障壁”で防ぎながら言う。
「スイマセン!魔法を弾くモンスターって、見た事が無くて実験したくなりました!!」
”イノー”さんの”風の魔法障壁”の後ろから飛び出し、<ガーブスレイブ>の左に回り込み、細い腹の部分を
一文字斬りで上半身と下半身に別れさせる。
先程の<ズザリザード>で、俺は”イノー”さんとチームに、”プルーツ”さんと”ビチャール”さんと”モドン”さんでチームに分かれて、戦闘する事になったのだ。
ズバシュ!! ズバシュ!! ズバシュ!!
「タケル~!出来た~!!」左手を”ブンブン”振りながら、”プルーツ”さんが報告して来た。
”プルーツ”さんの足元には、真っ二つにされた<ガーブスレイブ>が3体転がっていた。
<ガーブスレイブ>を真っ二つにしたのは、”プルーツ”さんが右手に持っている、魔法の杖に”雷の”刃”を
纏わせた、2メートルの刀身を持つ雷の剣である。
<レッド・ゲールグリズリー>を倒した時の、<ディードリーの剣>の”風魔法”の刀身を伸ばす方法を教えたのだが、簡単に俺以上の刀身を作り出し、雷の剣に重さは無いが、自由自在に操っているのは、流石、
剣と魔法が得意だった”ラカーヌ”さんの愛娘である。
「えへへへ、どう?タケル。」”褒めて褒めて”という顔で、”プルーツ”さんが俺の横に来た。
「うん!”プルーツ”さんは、エライ!!」俺は左手で”プルーツ”さんの頭を撫でると、”プルーツ”さんは
嬉しそうに目を細めた。
「・・・・・なんか、今日は仲がいいな、タケルに”プルーツ”」俺達を見て、”ビチャール”さんが言った。
その言葉を聞いた瞬間、俺と”プルーツ”さんは同時に”バッ!!”っと後方へ1メートル飛んだ。
「そんな事は無い。<ガーブスレイブ>のドロップしたお金とアイテムを回収したら、昼ご飯!!」
少し顔を赤くしながら、”プルーツ”さんは俺達に指示を出した。
俺達は昼ご飯を食べ終え、再び”東”方向へ移動した。すると、<ハンムラビート>2体に遭遇した。
<ハンムラビート>は、全身を雷で覆われた、全長10メートル・胴回り60センチの青い蛇である。
口から連続で”雷光弾”を吐き出し、尻尾の先の赤い硬質化した棘を獲物の身体に撃ち込み、強力な電撃を喰らわせて感電死させ、獲物を丸呑みにする。
「・・・<ハンムラビート>、しかも2体もいるなんて。」木の陰に隠れながら、”プルーツ”さんが言った。
「・・・あいつ、そんなに強いの?」俺は不思議そうに、”プルーツ”さんに聞く。
「私は”雷”の魔法が得意、そして、<ハンムラビート>は全身が”雷”で覆われているから、私の”雷”の
魔法は、あまり効果が無い。私とは相性が悪すぎる。」”プルーツ”さんは、顔を青くして答えた。
「そうかな?”ラムール”将軍が<ハンムラビート>と戦っているのを見たけど、”プルーツ”さんなら勝てると
思うよ。」俺は微笑みながら、”プルーツ”さんに言った。
「ちなみに、どんな戦い方をしたんだ?タケル。」”モドン”さんが、俺に聞いて来た。
「そうですね、”俺とお前!どちらの雷が強いか、勝負!!”と言って、<ハンムラビート>に戦いを挑み、<ハンムラビート>が口から連続で”雷光弾”を吐き出すと、右手に持った愛刀<ヒート・ロードス>で全弾斬り落として感電、だけど”ラムール”将軍は全くの無傷。次に<ハンムラビート>が、”ラムール”将軍に身体を
巻き付けて放電、しかし、感電したけど”ラムール”将軍は全くの無傷で、左の掌で<ハンムラビート>の
身体を掴み、握力だけで掴んだ部分の肉を引き千切り、無事脱出。激痛で、のた打ち回る<ハンムラビート>が尻尾の先の赤い硬質化した棘で、”ラムール”将軍を突き刺そうとするが、左手でキャッチ。棘から強烈な電撃を放たれるが、感電して髭と髪の毛を逆立てるだけで”ラムール”将軍は無傷。”つまらん!”と言って、尻尾と頭を斬り落として、勝負あり。」俺は、”ラムール”将軍と<ハンムラビート>の戦いを、全員に聞かせた。
「・・・そんな”化け物”じみた戦いを、私にやれっていうの?タケルは。」
少し怒った様に、”プルーツ”さんが言った。
「いや、同じ”雷”でも強い方が勝つって言いたかった。実際、”プルーツ”さんの<イーフリット>の炎の尻尾を斬り落とした”雷の”刃”なら、<ハンムラビート>の身体を簡単に真っ二つにできると思うし。」
俺は、”のほほん”と”プルーツ”さんに言った。
「ちょっと待って、タケル!<ハンムラビート>は連続して、”雷光弾”を吐き出すだろ?”プルーツ”が呪文を
詠唱中に、僕と”ビチャール”と”モドン”だ防いだとしても、”風の魔法障壁”の前に”雷光弾”の”雷”が帯電して”風の魔法障壁”を回り込んで、僕達全員が感電しちゃうかもしれない!」
俺のアイデアに、”イノー”さんが慌てて言った。
木の陰から<ハンムラビート>を見ると、俺達との距離は15メートル位はあったが、2体に接近されながら
”雷光弾”を撃ち込まれると、確かに感電してしまうかもしれなかった。
「・・・どうしよ。」再び、”プルーツ”さんが顔を青くして言った。
「じゃあ、<ディードリーの剣>を使ってみる?人間の俺であの威力だから、魔力の強いエルフの
”プルーツ”さんなら、凄い事になるんじゃないの?」俺は再び、”のほほん”と”プルーツ”さんに言った。
「!!良いの!!」嬉しそうに、”プルーツ”さんが聞いて来た。
「元々、<ディードリーの剣>はエルフの里の宝具だよ。魔法を使えない俺に、”グレミー”様が貸してくれた
だけだし、この<ハンムラビート>との戦いの時は、<ディードリーの剣>の性能を1番引き出せる
”プルーツ”さんが使うのが、俺は正解だと思うよ。」俺はそう言って、腰の剣ホルダーから<ディードリーの剣>を鞘ごと”プルーツ”さんに渡し、<アイテムボックス>から<アルビオ騎士団>で貰った、”片手剣”と盾を
取り出す。いざとなったら、感電するのを覚悟で<ハンムラビート>を斬り付け、”プルーツ”さんを盾で
守らなければならないからだ。
「ありがとう、タケル。」”プルーツ”さんは、腰の右に差してあった魔法の杖を後ろに、<ディードリーの剣>を右に差して、俺に礼を言った。
「それじゃあ、作戦としては、”ビチャール”・”モドン”・”イノー”が”風の魔法障壁”を展開しつつ、
<ハンムラビート>に接近、すぐ後ろに私、私の後ろにタケル。私が<ディードリーの剣>に魔力を込めて
攻撃するから、私の前で”風の魔法障壁”を展開している者は、右か左に避難してくれる?巻き添えにしちゃうから。」”プルーツ”さんが、俺達に指示を出した。
「了解だ、”プルーツ”。」”ビチャール”さんが、俺達の代表で答えた。
「それじゃあ、・・・突撃!!」
<ハンムラビート>を見て、タイミングを見計らった”プルーツ”さんから、突撃命令が出る。
木の陰から、”ビチャール”・”モドン”・”イノー”が飛び出し、”風の魔法障壁”を展開しつつ、<ハンムラビート>に接近する。3人のすぐ後ろに”プルーツ”さんも飛び出し、<ディードリーの剣>に魔力を込めて振りかぶる。
その瞬間、”ラムール”将軍に初めて会った時の様な、”絶対的な死”を感じたので、俺は右側に横っ飛びをした。間髪入れず、俺の居た場所を<ディードリーの剣>から生み出された、”雷”を纏った直径60センチ位の
竜巻が通り過ぎる。”プルーツ”さんが<ディードリーの剣>を振りかぶった時、剣先が俺の方を向いていたのである。
「3人共、左右に今すぐ横っ飛びしろ!!竜巻に触れたら、死ぬぞ!!」地面に転がりながら、俺は
”ビチャール”さん達に怒鳴った。
俺の怒鳴り声に、”ビチャール”さん達が振り向くと、驚愕の表情になった。”プルーツ”さんが振りかぶっている<ディードリーの剣>から、長さ10メートル位、直径60センチ位の”雷”を纏った竜巻が、自分達の方に向かってくる予定なのだから。
「”モドン”右!”イノー”左!」瞬時に理解した”ビチャール”さんが、横っ飛びする様に2人に指示を出す。
”モドン”さんが右側に、”ビチャール”さんと”イノー”さんが左側に倒れ込むと同時に、”プルーツ”さんが”雷”を纏った竜巻を右上から左下に向かって振り下ろした。
ビシャシャシャシャシャシャシャシャシャ!! ボトン!! ボトン!!
<ディードリーの剣>の作り出したが”雷”を纏った竜巻が、1体目に接触すると”ぐにゃり”と曲がり、後ろにいた2体目にも接触して、ゆっくりと”雷”を纏った竜巻が、<ハンムラビート>の接触した部分の肉を徐々に削っていく。感電しているのか、<ハンムラビート>は全く反撃をしてこない。やがて<ハンムラビート>の身体は切断され、頭が”ボトン!!”・”ボトン!!”と地面に落ちた。
「・・・・・」”プルーツ”さんが、無言で元の状態の<ディードリーの剣>を眺めていた。
「大丈夫?”プルーツ”さん。」地面から起き上がり、俺は”プルーツ”さんに駆け寄った。
「タケル!”コレ”頂戴!!」瞳と表情を輝かせて、”プルーツ”さんが俺に言った。
「えっと、<ディードリーの剣>はエルフの里の宝具だから、あげられないんだけど。」
俺は苦笑しながら、”プルーツ”さんに言った。
「!!・・・ごめん、忘れて。」興奮状態から通常状態になった”プルーツ”さんが、俺に言った。
「いや~、ヤバかった。」地面から起き上がった、”ビチャール”さんが言う。
「もう少しで死ぬ所だったね、ありがとう、タケル。」苦笑しながら、”イノー”さんが言う。
「<ハンムラビート>が、こんなにあっけなく。<ディードリーの剣>は凄いな。」”モドン”さんが、
呟いた。
「・・・・・」”プルーツ”さんが再び、無言で<ディードリーの剣>を眺めていた。
「どうしたんだ?”プルーツ”。」”ビチャール”さんが、無言の”プルーツ”さんに声を掛けた。
「・・・ねえ、皆。時間もまだ早いし、”北東”方向も行ってみない?」
満面の笑みで、”プルーツ”さんが言った。しかし、目は笑っていなかった。
俺は”ビチャール”さんの方を向いた。
”ビチャール”さんの視線が、(タケル、逆らうな!!こういう時の”プルーツ”は絶対に意見を曲げない!
諦めろ!!)と言っている気がした。
俺は、”モドン”さんと”イノー”さんの方を向いた。
”モドン”さんの視線が、(モンスターと戦うのと、<ディードリーの剣>を持った”プルーツ”が怒るのどっちが怖いか考えるんだ、絶対にモンスターの方が良いだろ、タケル!)と言っている気がした。
”イノー”さんの視線が、(とりあえず、”プルーツ”の気が済むまで、<ディードリーの剣>を使わせよう、
”プルーツ”の後ろの位置に居れば安全だから!!)と言っている気がした。
「・・・そうだな、まだ早いし”北東”方向も行ってみるか。」”ビチャール”さんが、俺達の代表で言って
くれた。
「よし!それじゃあ、出発!!」今度こそ、本当に満面の笑みで、”プルーツ”さんが言った。
そして、”北東”方向で、モンスター相手に<ディードリーの剣>で”プルーツ”無双が日が暮れるまで続いた。
俺達は笑いながら無双する”プルーツ”さんを、後ろから少し青ざめながら、温かく見守っていた。
「俺はもしかして、”狂戦士”を誕生させてしまったのか?」
<ハンムラビート>との戦いの時よりも、長くて太い”雷”の竜巻を、笑いながら自由自在に操り、
モンスター達を討伐していく”プルーツ”さんを見て、俺はそう呟いた。




