現在、”うどん”作り中!
「お疲れ様!皆、無事に帰って来てくれたね。本当に良かった。」
ニコニコしながら、”グレミー”様が迎えてくれた。
「はい、全員無事に帰還しました。」”プルーツ”さんが、暗い表情で答える。
「・・・あれ!?何かあった?」”プルーツ”さんと俺達の表情を見て、”グレミー”様が聞く。
「いえ、特に何も。モンスター討伐報告をします。<マーラ・サイクロプス>が15体と、<ドライ・セイバー>1体を討伐して来ました。」”プルーツ”さんが、暗い表情で報告する。
「ほう、大漁だね!よく少人数で、あの<ドライ・セイバー>を倒せたね!<ドライ・セイバー>の
<恐怖の咆哮>はどうしたんだい?」”グレミー”様が、報告を受けて感心していた。
「・・・タケルが1人で<ドライ・セイバー>を討伐しました。」”プルーツ”さんが再び、暗い表情で
報告する。
「・・・へ~、タケル君、凄いじゃないか<ドライ・セイバー>を1人で討伐するなんて、<恐怖の咆哮>はどうしたんだい?」暗い表情の”プルーツ”さんに、気まずかったのか俺の方に話を振る”グレミー”様。
「俺の世界にも、恐怖で体の自由を奪う剣術の技があるんですよ。<心の一方>と言って、相手の目に自分の殺気や剣気を叩き込んで、恐怖で委縮させる奥義があるんですよ。俺はそれを知っていたので、破り方も
知っていたんです。自分に叩き込まれた殺気や剣気と同等かそれ以上の”気合い”で無効化できる事を。あと、
<ディドリーの剣>が反則レベルで強かったです。イメージしたら、イメージ通りの魔法が発動しました。
呪文の詠唱無しで、あの威力は反則ですね。」俺は、苦笑しながら答えた。
「そうかね!<ディドリーの剣>の威力は凄かったかね!!」”グレミー”様が、嬉しそうに言った。
「・・・それでは、そろそろモンスターがドロップした、アイテムとお金を渡して良いでしょうか?」
少し不機嫌そうに、”プルーツ”さんが会話を断ち切った。
「え!?あ、うん。それでは、戦利品を受け取らせてもらうよ”プルーツ”。」
”プルーツ”さんが会話を断ち切った事に動揺しつつ、”グレミー”様が言った。
テーブルの上に、<魔法袋>からモンスターがドロップしたお金と<マーラ・サイクロプス>15体の”角”と
<ドライ・セイバー>の”赤いたてがみ”が置かれた。
「本当に大漁だったね!」”グレミー”様が、嬉しそうに言う。
「・・・それでは、我々も解散してよろしいでしょうか?」”プルーツ”さんが、”グレミー”様に聞いた。
「え!?・・・お疲れ様、皆、帰ってゆっくりしてくれたまえ。明日もよろしく!」
かなり動揺しながら、”グレミー”様が言った。
「お疲れ様でした。明日も頑張ります。それでは、失礼します。」そう言って、”プルーツ”さんは帰宅して
しまった。
「・・・ねえ?本当は何かあったのかい?」
”プルーツ”さんの姿が見えなくなってから、”グレミー”様が聞いて来た。
「う~ん、あれは不可抗力だった気が。」”ビチャール”さんが言った。
「しょうがなかったんじゃないの?あの時は。」”モドン”さんが言った。
「でも、”プルーツ”は年頃の女性だし、僕達とは違うよ。」”イノー”さんが言った。
「・・・・・」俺は無言だった。
「本当に、一体何があったんだい?」困惑気味に、”グレミー”様が聞いて来た。
”イノー”さんが代表して、”尻叩き事件”を”グレミー”様に説明した。
「・・・なるほど、タケル君が、<恐怖の咆哮>から脱出して、大急ぎで”ビチャール”達の尻を叩き、
次に”プルーツ”の尻を叩いたと。それで”プルーツ”が激怒している状態だという事か。」
”イノー”さんの説明を受け、複雑な表情で”グレミー”様が言った。
「俺的には、仕方が無かったと思うんですけど。」”ビチャール”さんが、フォローしてくれた。
「うん、そうだね。タケル君も下心があって、”プルーツ”のお尻を叩いたんじゃないんだと思うし。」
”グレミー”様もフォローしてくれた。
「・・・・・はい。」俺は、目を泳がせていった。
「・・・タケル君、その“間”は何だい?”プルーツ”は、親友で幼馴染の”ラカーヌ”と”エマーリ”の大事な娘
なんだけど。」
目を細めて、”グレミー”様が俺を見て静かに言う。
「・・・あの時は無いと言えましたが、今は何とも言えませんね。下心が全く無いと言うと、”プルーツ”さんに全く魅力が無いと言っている気もするし。」俺は、真面目な顔で答えた。
「・・・真面目だね、タケル君。」苦笑しながら、”グレミー”様が言った。
「俺的には、<ディドリーの剣>が原因だと思う。」”モドン”さんが言った。
「何故、そう思うんだい?”モドン”。」”グレミー”様が、”モドン”さんに聞いた。
「”プルーツ”って、父親の”ラカーヌ”さんに剣術と魔法を教わっていたじゃないですか、俺達の世代で女なのに1番戦闘が強かったし。そこに”プルーツ”の”誇り”があったと思うんですよ。でも今回、<ドライ・セイバー>の<恐怖の咆哮>でタケル以外は動け無くなるし、タケルは<ディドリーの剣>の力を引き出して、たった
2発で<ドライ・セイバー>を倒しちゃったし、”プルーツ”のリーダーの面子が丸潰れになったのではないかと。」”モドン”さんが、意外に鋭い意見を言った。
「・・・なるほど、”尻叩き事件”より、”面子が丸潰れ事件”の方が濃厚だね。」
困った様に、”グレミー”様が言った。
「なるほど、確かに”プルーツ”は今まで、俺達世代で負け無しだったからなあ。助けられたのはショックか。」
”ビチャール”さんが、溜息をつきながら言った。
「・・・明日のモンスター討伐は、気を付けて戦いますよ。」俺は、苦笑しながら言った。
「そうか!気を使ってすまないね、タケル君。」苦笑しながら、”グレミー”様が言った。
そして、俺と”ビチャール”さん達は、その場で解散となりそれぞれの家に帰って行った。
”プルール”さんと”ブルーツ”さんの家に帰る時も、子供達に捕まり”うまし!”をやりつつ家に到着した。
「お帰りなさい、タケルさん。お風呂を用意したので入って下さい。」笑顔で”プルール”さんが出迎えて
くれた。
俺が風呂から上がると、おやつ用に焼いてくれたクッキーとお茶が用意されていた。
今日のモンスター討伐の話を”プルール”さんにしながら、クッキーを頬張る。料理だけで無く、お菓子作りも”プルール”さんは上手らしい。何となく、自分の世界の料理も知って貰いたくなった。
「泊めて貰っているお礼に、今晩は俺の世界の”うどん”を作りたいのですが良いですか?」
俺は、”プルール”さんに聞いた。
「”うどん”って、祝勝会の時に言っていた麺料理ですよね!食べてみたいです。」
”プルール”さんが、嬉しそうに言った。
”プルール”さんに”うどん”作りに必要な道具を伝えると、それに近いものがすぐに揃った。
「それじゃあ、今夜の晩御飯は、俺が作りますね。」俺はそう言って、テーブルの上の”こね鉢”に小麦粉を
入れた。
「あの、作り方を見ていて良いですか?」”プルール”さんが、見学を申し出て来た。
「いいですよ。しっかり見ていて下さいね。」俺は笑いながら言った。
”こね鉢”に小麦粉を入れ、さらに塩水を入れてよく混ぜる。
「・・・あの、タケルさん。・・・何か生地を混ぜる手付きが変。」
少し顔を赤くしながら、”プルール”さんが言った。
「・・・”プルール”さん。水溶きした小麦粉って、女性の”胸の双丘”と同じ感触なんですよね。」
俺は真面目の顔で、”プルール”さんの”胸の双丘”をじっと見る。
「!!」俺が何をイメージして生地を混ぜているのかを察して、”プルール”さんが恥ずかしさで真っ赤に
なった。
床に綺麗で清潔な布を敷き、そこに生地を置き、その上に綺麗で清潔な布を2枚重ねる。そして、裸足に
なってゆっくりと踏む。生地の表面が”ツルツル”になるまで踏み、折りたたんでまた踏む。
「・・・あの、タケルさん。生地を踏む時に”殺気”を感じるのですが?」少し困惑したように、”プルール”さんが聞いて来た。
「いや、俺が死にそうな時も、塩谷の奴は高級娼館で姐様達とイチャイチャしていたのかと思うと、自然に
生地を踏む足に力が。」俺は真顔で、”プルール”さんに答えた。
「・・・今は、私が居ますよ。」真っ赤になってモジモジしながら、”プルール”さんが言った。
「ありがとう。いっぱい甘えさせて貰います。」真っ赤になっている”プルール”さんを、可愛いと思いながら俺は満面の笑みで言った。
生地の周囲を少しずつ折りたたみ、丸い形状に整えていく。そして、一時間ほど生地を寝かせる。
その間に、”うどんのつゆ”と”かきあげ”と”きんぴら”を作る。
”うどんのつゆ”は、水・”醤油”・”みりん”・”酒”・”だし”だが、今回は水・<なんちゃって”醤油”>・
<ミリリーの実>・”調理酒”の味がする<ジャパシュの実>・<コブダの実>・<ブシカオの実>で作る。
”かきあげ”は、”玉ねぎ”・”ニンジン”で作るが、今回は、”玉ねぎ”そっくりな<オニーニ>・”大根”の大きさに
なった”ニンジン”<キャロニー>で作る。
”きんぴら”は、”ごぼう”・”ニンジン”・”ごま油”・”トウガラシ”で作るが、”サツマイモ”の大きさと形の
”ごぼう”の<ボウボ>・<キャロニー>・<セサーユの実>・<チペパーの実>で作る
寝かせた生地を厚さ3ミリに麺棒で伸ばし、3つに折り畳む。生地を普通の”うどん”の幅3ミリに切っていく。
”うどん”の麺を茹でていると、”グレミー”様が来た。
「こんばんは、タケル君。調子はどうだい?」”グレミー”様が、笑顔で聞いて来た。
「大丈夫です!”特殊スキル”の”料理”<芸術>を発動しているので、美味しいはずです!!」
俺は、笑顔で答えた。
「いやいや、料理では無く、タケル君の体調だよ。今日は、”プルーツ”達とモンスター討伐に行ってくれた
でしょ。」苦笑しながら、”グレミー”様が言った。
「大丈夫です。<ディドリーの剣>の性能が凄かったので、疲れてませんね。」俺は笑顔で答えた。
「”プルール”に聞いたけど、その料理が祝勝会で言っていた”うどん”かい?美味しそうだね。」
鍋で茹でられている”うどん”を見て、”グレミー”様が言った。
「・・・”プルール”さん、”グレミー”様にも食べて貰っても良いかな?”プルーツ”さんが帰って来ても、大丈夫な量はあるけど。」俺は、”プルール”さんに聞いた。
「はい!”グレミー”様も一緒に”うどん”を食べて下さい。」”プルール”さんが、笑顔で言った。
「ありがとう、それでは御馳走になるよ。」”グレミー”様が、笑顔で答えた。
茹でた麺を”ざる”に空け、水で麺の”ヌメリ”を取り、”うどんのつゆ”に3人前を入れて少し煮込む。
煮込んだ物を深皿に入れて、”かきあげ”をいれて”きんぴら”を添え物で用意する。
俺は3人前の”かきあげうどん”と”きんぴら”をテーブルに置いた。”プルール”さんと”グレミー”様は箸が使え
ないので昔の日本で使われていた”古代箸”、木製の掌サイズの”トング”の様な箸を使って貰った。
「これが”うどん”か、実に美味しそうだ。」”かきあげ”を持ち上げながら、”グレミー”様が言った。
少し”つゆ”を吸った”かきあげ”を”サク!”と食べると、”グレミー”様が目を見開いた。
「!!美味い!!今まで感じた事の無い食感と味だ!!」”グレミー”様が、嬉しそうに言った。
”プルール”さんは、深皿の中の麺を”古代箸”を掴むと、”クルクルクル”と”パスタ”の様に巻き付けて、
”ふー、ふー”と息を吹きつけて冷まし、パクリと口に運んだ。どうやら、外国人同様に”プルール”さんも麺を
啜れ無い様子だった。
「!”モチモチ”して、とっても美味しいです。」口元を左手で隠し、両頬を膨らせながら、”モッモッモ”と
食べながら”プルール”さんが言った。どこか”小リス”みたいで可愛い。
俺達は無言で”うどん”を啜った。”ちらり”と2人を見ると、”プルール”さんは”小リス”状態で麺の食感を楽しんでいるようだ。”グレミー”様は、いつの間にか後ろで長い髪を1つに束ねて、物凄い勢いで”うどん”を食べていた。
俺は深皿の”うどんのつゆ”を飲み干し、”コトン”とテーブルに置くと視線を感じた。視線の先を見ると、
”グレミー”様が目を細めて、添え物の”きんぴら”を”ポリポリ”と音を立てて食べていた。
「えっと、”グレミー”様?」何故、そのような表情をしているのか分からず、俺は聞いてみた。
「美味しいね、”コレ”。”うどん”と一緒に食べたら、もっと美味しいと思うな”コレ”。」
”きんぴら”を食べながら、”グレミー”様が言った。
「!!スイマセン、気が付かなくて!お替わりは沢山ありますので、大盛りと普通盛りのどっちが良い
ですか?”グレミー”様。ちなみに、その添え物の名前は”きんぴら”です!!」
俺は、かなり慌てて答えた。
「そうかね!それでは、”うどん”大盛りでお願いするよ。しかし、この”きんぴら”も美味しいね。」
笑顔できんぴら”を”ポリポリ”させながら、”グレミー”様が言う。
「ありがとうございます。”プルール”さんも遠慮無くお替わりを言ってね。」
俺は笑顔で、”プルール”さんに言った。
”うどんのつゆ”の染み込んだ”かきあげ”を、”モッモッモ”と食べながら”プルール”さんが、”コクコク”と頷く。やっぱり”小リス”みたいで可愛い。
結局、”グレミー”様が3杯、”プルール”さんが2杯、俺が食後の事を考えて3杯を食べた。
「本当に美味しかったよ、タケル君。今度、”うどん”の作り方を教えてくれないかな?」
満足そうにお腹を摩りながら、”グレミー”様が言った。
「良いですよ。簡単だけど、奥が深いですよ”うどん”作りは、趣味でやっている人は多いですし。」
”グレミー”様のお腹の膨れ具合を見て、完全に胃袋の許容量を超えて、明日は胃もたれすると直感的に悟った。
「そうかね!”うどん”作りは奥が深いのか、楽しみだな!」そう言って、”グレミー”様は神殿に帰って行った。
俺がエルフの里を出て一年後、”ビチャール”さん達と出会った場所に<うどん・エルフ屋>を”グレミー”様が
出店し、大繁盛する事を俺はこの時、知る由も無かった。




