現在、後悔中!
出現させられた交差点から、俺の装備した鎧の力で一瞬で400メートル位は上空に移動したらしい。
正直、自分の装備した鎧の本当の能力の高さを見誤った事を後悔した。俺は高所恐怖症なのだ。
異世界<アーシタ>でのモンスターとの戦いでは、鎧の力を使って風魔法を体の周囲に発生させて浮上しホバー状態になり、高速移動による斬撃で攻撃したり、モンスターの攻撃も高速移動で回避したり風の魔法障壁を作り出し攻撃を逸らしたりして、地上での戦いでは十分に鎧の性能を使いこなしていたと思っていた。ホバー状態でさらに鎧へ魔力を込めれば空中を移動できることは知っていたが、あまり高くは飛んでいなかった。モンスターの体長は10メートル以下だったので普通は10メートル位の高さで戦っていたし、最高でも15メートル位しか飛んだ事が無かったからだ。
今回は緊急事態なので本当は嫌であったが、通常の5倍の50メートル位まで上空に移動して、出現した交差点から逃走しようと思っていた。しかし実際は、通常の40倍の400メートル位まで上空に来てしまった。
足元に広がる光景はビル群が物凄く小さく見えて、体を強風が叩きつけた。今まで来た事の無い高さと寒さに体が震えていた。
(本当にすいません!”トト”様に”グレミー”様。<テッカード>の鎧の性能を舐めてました!!)
異世界<アーシタ>にいる、俺専用の鎧<テッカード>を製作してくれた、ドワーフ王”トト”様とエルフ王”グレミー”様に対して心の中で謝罪した。
「とりあえず地上に戻って、こっちの服に着替えないと。」そう呟くのが精一杯だった。
自分の足元に広がる風景が地元の群馬に比べて、圧倒的にビルの数が多かったのでここが群馬ではないと確信した。実家に帰るには、バスと電車に乗る必要が出てきたのだ。そうなると黒い鎧の<テッカード>と右手に握られた俺専用のバスターソード<ボルクドテッカー>の姿はバスや電車に乗るには目立ち過ぎるので、急いで現代日本の服装に着替える必要があった。
「マズイ、マズイ、マズイ!」自分が現在いる高さの恐怖と強風の寒さで焦りが増してくる。
前方の景色の中に、東西に流れる大きな河川が流れている事に気が付く。地元の烏川と同じ、大きな河川を中心に河原、グランド、サイクリングコースがある土手、土手の外側に桜並木の造りだ。
「桜並木があれば、遊歩道もあるはず!」焦る頭で唯一思いつく事が出来た、人目につかず着替えられる場所を目指してあまりビル開発されていない地点を探す。
前方の大きな河川の東側と西側の開発具合を見比べてみると、西側の方が自然が多く住宅群があり、反対にビルは小さく数が少なかったのを確認できたので、西側に着地する事に決めた。
「飛行高度が低くなると、地上の人に見られるかもしれんがしょうがない。ここでいるより遥かにマシだ。」一刻も早く地上に降りたい俺は、腹を決めた。
今度はコントロールできる位の魔力を<テッカード>の鎧に込める。体の周りに風魔法の球体の魔法障壁を作ると、着地する西側に体を向ける。
「よし!俺は群馬に帰る!!」叫ぶ事で気合を入れる。
俺は現在いる高度400メートルから逃げたくて、アタックされたバレーボールの様に土手の桜並木に向けて、高速移動で始めた。