現在、夢の中で再会中!
気が付くと、木の天井が見えた。頭が少し、”ぼー”っとしているので、木の天井を眺めていた。
右腕が少し、日向にいる様に温かかったので、視線を動かすと”プルール”さんが居た。
ベットで横になっている俺の包帯ぐるぐる巻きの右肘に、回復魔法らしき事をしてくれているみたいだ。
ベッドの隣で床に膝をついて、回復魔法をしている”プルール“さんを見る。
エルフは美男美女が多いが、”プルール”さんはその中でも美女だと思う。双子である”プルーツ”さんも。
その2人の美人に恨まれていると思うと、気が滅入る。まあ、2人の父親の亡くなった原因は、人間の”欲”の所為なので、俺は恨まれても当然だと思う。
”プルール”さんを見ると俺の右肘に左手をかざして、ビーチボール位の淡いピンク色の光の球で右肘を包んでいるが、感覚が無い。先程から、左手で指を開け閉めしたり、握り拳を作ろうとしたが、上手く力が入らない。どうしたものかと”プルール”さんを見ていると、”プルール”さんと目が合った。
「目が覚めたんですね!タケルさん!!」”プルール”さんが、嬉しそうに言った。
「えっと、はい、お陰様で。」”プルール”さんの好感的な言葉に、困惑しマヌケな答えをする俺。
「痛い所はありませんか?気分は大丈夫ですか?」心配そうに、”プルール”さんが聞いて来た。
「痛い所は無くて、気分も大丈夫ですけど、体が動きづらくて力が余り入りません。」
俺は、自分の体の状態を報告した。
「タケルさんは、<イーフリット>の血液を大量に浴びました。今まで誰も浴びた事の無い量を浴びたので、普通の人の何倍も多く、薬を処方したのが原因だと思います。」
”プルール”さんが、顔を曇らせて言った。
「そうなんですか、戦いの後遺症でなければ良いです。ところで、”グレミー”様と”プルーツ”さんは?」
俺は、一緒に戦った2人の所在が気になった。
「・・・”プルーツ”は疲れて寝ています。」すまなそうに、”プルール”さんが言った。
「・・・そうですか。」やっぱり、嫌われているなと俺は思った。
「あの!”プルーツ”は解熱作用の”パブロ茸”と鎮痛作用の”モルネ草”を採りに行ってくれたんです。以前は、
そんなに珍しくなく近場で採れていたのですが、<イーフリット>の血を浴びた戦士達の為に採っていたら、だんだん近場が無くなって、モンスターの居る場所しか採れなくなりました。”プルーツ”がモンスターと戦っている間に、”ビチャール”さん達が”パブロ茸”と”モルネ草”を採取する感じになっています。」何かを察して、
”プルール”さんが説明した。
「・・・そうですか、頑張って採って来てくれたんですね。”プルーツ”さんと”ビチャール”さん達。後でお礼を言わないと。」顔に出ていたかと思いながら、俺は言った。
「”グレミー”様は、どうしているんです?」俺は、”プルール”さんに質問した。
「”グレミー”様は、・・・”グレミー”様達は、モンスター達と戦っています。」
言いにくそうに、”プルール”さんが答えた。
「何で!<イーフリット>を倒したから、エルフの森は平和になったんじゃ無いんですか?」
俺は再び、”プルール”さんに質問した。
「<イーフリット>を倒したので、<イーフリット>が追い払ったモンスター達が帰って来たんです。エルフの森は自然豊かなので、エサも豊富なので動物達が食べに来ます。その動物達を狙って、モンスター達も来てしまいました。でも、<イーフリット>と違って、私達でもそのモンスター達は倒せるので、”グレミー”様は”外貨を獲得するチャンスだ!”って張り切っていました。」
苦笑するように、”プルール”さんが言った。
「・・・外貨って事は、例の薬を買う為にですか?」俺は、”プルール”さんに聞いた。
「・・・そうです。1回で大量に買わないと、次の買う時はもっと値段が上がっているので。」
”プルール”さんが、悲しそうに言った。
「・・・スイマセン、”欲”が深い人間が多くて、迷惑かけます。」
俺は謝罪したが、自分のパーティーの3人もかなり”欲”深いので、余計に気が滅入った。
俺と”プルール”さんの会話が途切れてしまった。非常に気まずい時間が流れた。
「タケルさん、お腹減っていませんか?目が覚めたら、ご飯を食べさせる様に、”グレミー”様に言われたのを
忘れていました。」微笑みながら、”プルール”さんが言った。
「えっと、かなり減っていますね。俺はどれ位寝ていたんですか?」
俺も微笑みながら、”プルール”さんに聞いた。
「丸二日間、意識が戻りませんでした。皆、心配していたんですよ。」
”プルール”さんが、答えてくれた。
「丸二日か、6食も食べ損ねたか。」場を和ませるように、俺は冗談を言った。
「ふふふ、今すぐ作ってきますね。」微笑みながら、”プルール”さんは台所に行った。
俺は、”プルール”さんがご飯を作ってくれている間、両手を開け閉めしていたが、やっぱり力が入らなかった。
少しして、”プルール”さんが消化の良い”パン粥”を作って来てくれた。
パンを”ミギューム”のミルクで煮たものに、少量のハチミツが入っていて、ほんのり甘くて美味かった。
「これは、何です?」
”パン粥”の中に小さい白い物体があったので、スプーンで掬って見せた。
「えっと、それは”ビタミ茸”の塩漬けです。食べると、傷の治りが早くなるので、美味しくありません
でしたか?」不安そうに、”プルール”さんが言った。
「いや、とても美味しいです。少し塩味が効いて甘味が引き立ちますね。俺の世界の”ナタデココ”に触感が
似ていたので、気になりまして。」俺は、”ビタミ茸”食べながら言った。
「”ナタデココ”とは、どんな味がするんですか?」”プルール”さんが、聞いて来た。
「ほんのり甘い感じですかね、飲むヨーグルトの中に入っていて、食感を楽しむんですよ。」
俺は友好的に話してくれる事が嬉しくて、微笑みながら言った。
「タケルさんの世界には、不思議な食べ物があるんですね。」感心しながら、”プルール”さんが言った。
「異世界<アーシタ>にも、不思議で美味しい物が多いですよ。」俺は、”パン粥”を食べながら言った。
他愛ない会話をして、”パン粥”を3杯食べてお替わりをしていると、”グレミー”様が来た。
「タケル君!目が覚めたのかい!!」嬉しそうに、”グレミー”さまが聞いて来た。
「はい、お陰様で、なんとか生き残れました。俺的には、ギリギリの戦いでしたね!」
右手に持ったスプーンを”フリフリ”しながら、笑いながら俺は答えた。
「・・・タケル君、私は君に謝らなければならない。」
笑ってくれると思っていたが、真剣な顔で”グレミー”様が言って来た。
「えっと、何でしょう?」思い当たる節が無いので、俺は聞いてみた。
「<イーフリット>と戦う前、私はタケル君に耐火の護符のペンダントを5個渡した。でも、本当は耐火の護符のペンダントは10個あったんだ。私はタケル君を完全には信用していなかったんだ。本当に
すまない!!」”グレミー”様が、俺に向かって頭を下げた。
「・・・あの、”グレミー”様。何か勘違いしていませんか?<イーフリット>と戦う前、”グレミー”様は、
”プルール”さんに耐火の護符のペンダントを10個持って来るように言って、ちゃんと”プルール“さんは
持って来て、俺は10個ちゃんと受け取りましたよ?ね!”プルール”さん。」
俺はそう言って、”プルール“さんを見た。
俺に話を振られて”プルール“は動揺していたが、”グレミー”様の見えない所で、右手のスプーンを”ビコビコ”
振っている俺の意途に気付いて微笑んだ。
「そうですね、私は”グレミー”様に言われて、耐火の護符のペンダントを10個、ちゃんとタケルさんに
渡しました。」微笑みながら、”プルール”さんが言った。
「”プルール”!君まで!!」動揺しながら、”グレミー”様が言った。
「俺と”プルール“さんが10個、”グレミー”様が5個。2対1で10個渡した事が、正解になりました。」
俺がいつも塩谷達に悪い方に使われている多数決が、今回は良い方に使われた。
「・・・ありがとう、タケル君、”プルール”。」”グレミー”様が、苦笑しながら言った。
「タケル君、君の怪我は絶対に私が治す。エルフの王の名に懸けて。だから、生きる事を諦めないでくれ、
どんなに辛く、苦しくても絶対に私が助けるから生きる希望を捨てないでくれ。」
”グレミー”様が、真剣な顔で言った。
「・・・えっと、実は俺の身体って、かなり危険な状態?」”グレミー”様の真剣な顔と話で、危機感を感じて
聞いてみた。
「・・・実はかなり危険だ。今は、薬が効いているから大丈夫だが、薬が切れると、・・・・・その、
大変な事になる。」”グレミー”様が、言葉を濁した。
「・・・なるほど、かなり危険という事は理解しました。俺はどうしたら良いのでしょう?」
”グレミー”様の反応に、俺はかなり不安に成り始めた。
「ご飯をいっぱい食べて寝る事だね。体力を回復して、温存するしか方法が無い。エルフの戦士達もそうしている。出来るだけ早く、タケル君やエルフの戦士達に薬を買える様に努力するよ。」
悲しそうに、”グレミー”様が言った。
そう言い残すと”グレミー”様は、外貨を獲得する為にまたモンスターを倒しに行ってしまった。
「・・・食べて、寝ろか。とりあえず、”プルール”さんお替わりお願いします。」
俺は、右手のスプーンを”ピコピコ”振りながら言った。
「はい!分かりました。いっぱい食べて元気になって下さいね!」そう笑いながら、”プルール”さんは台所に
行った。
合計、俺は5杯の”パン粥”を食べていた。1杯目から徐々に、”ビタミ茸”の塩漬けの量を増やしていき、食欲を増していった結局、俺は5杯も食べられた。”プルール”さんが料理が上手なのに、俺は感心した。
「さて、寝る前にお手洗いに行きますかね!」そう言って、俺はベッドを降りた。
先程まで力が入りにくかったが、”パン粥”を大量に食べたお蔭か、”ビタミ茸”の塩漬けの影響か分からないが、思った以上に力が入って立つ事が出来た。
「こちらです。」”プルール”さんが付き添って、部屋を出ようとした時にドアの横の鏡が目に入った。
上半身が包帯ぐるぐる巻きの男がいた。<るろう○剣心>の”志○雄 真実”状態の俺が写っていた。俺は全身が固まってしまった。
「えっと、その、ごめんなさい!」半泣き状態で、”プルール”さんが俺に謝って来た。
「・・・えっと、これは薬で治るのかな?」不安になって、”プルール”さんに聞いた。
「!大丈夫です。エルフの戦士達は綺麗に治りましたから、大丈夫です!!」力強く、”プルール”さんが
言った。
「なら良いか。しっかし、見事に”志○雄 真実”状態だな。」苦笑しながら、俺が言う。
「”シシオ マコト”ってなんですか?」”プルール”さんが、聞いて来た。
「”志○雄 真実”は、俺の世界の物語の悪のボスですよ。主人公と仲間が共闘して、やっと互角位の強い
悪役です。」俺はそう言いながら、部屋のドアを開けた。
”プルール”さんと”プルーツ”さんの家は巨大な木の中にあった。1本の木に1家族が住んでいるらしい。
高さ10メートルの高さに家がある。これは敵が襲撃してきた時に、防御しやすいからだそうだ。
俺が寝ていた部屋は、”プルール”さんと”プルーツ”さんの両親の部屋だそうだ。この家で一番大きく、家の入口の反対に位置している。現在の部屋の右隣り部屋には風呂場があり、さらに部屋の右隣りには台所があった。現在の部屋の左隣り部屋には順に、”プルール”さんの部屋、”プルーツ”さんの部屋、物置、トイレの順に
なっている。その他はリビングである。
木をくりぬいた様な状態なので、部屋は切られたバームクーヘンの様な扇型である。
トイレに入ると、和式の様な段差があり、段の上には蓋があった。蓋を開けると、長方形の穴が開いていた。ここで用をするのであろう。長方形の穴の近くに、トレイに入ったキッチンペーバーの様な、四角い紙が
トレーに積まれていた。
入り口のドアの横には、手を洗う物もあった。サラダボール位の木のくぼみに水の出る穴とたまった水が出ていく穴がある、木製の手洗いカウンターが付いていた。
俺はトイレで用を済ませると、部屋に戻り大人しく寝た。
どれくらい時間が経ったのであろう、急に上半身が熱くなって来た。
何というか、とても熱い風呂に入っているような感覚だった。そして、とても熱い風呂に入った後の
”ビリビリ”した状態の肌を”ピシャピシャ”叩かれる様な痛みが同時に襲って来た。
「熱い!痛い!」俺はそう言ったつもりだったが、声が出なかった。もしかしたら、俺の声は出ていたかもしれなかったが、俺の耳は聞こえなかった。
目を開けてみると、景色が滲んでいた。俺の周りにいる人が誰かも判断出来ない状態になっていた。ただ、
緊迫した状態で何か言い合っているのは分かった。
「熱い!痛い!助けて!」俺はその言葉を連呼していたと思うが、自分の声が出ていたか良く分からな
かった。そのうち、緊迫した現場の状態から明るい現場の状態になった。少しして、口の端に管が入れられ、変な匂いの液体が口の中に入って来た。例えるなら、ガ○プラを作る時の接着剤とパテを混ぜたような匂いの液体だった。
俺はあまりの酷い匂いの液体に咽て、液体を吐き出してしまう。同時に、咽た事で身体に激痛が走った。
口の周りを何かで拭かれたと思ったら、鼻と口を押えられた。そして、再び、口の端に管が入れられ、変な
匂いの液体が口の中に入って来た。吐き出そうと思ったが、鼻と口を押えられていて吐き出せず、飲み込んでしまった。
変な匂いの液体を飲み込んだ胃から、徐々に痛みが引いて行った。”プルール”さんが言っていた、解熱作用の”パブロ茸”と鎮痛作用の”モルネ草”の薬だったのであろう、俺は薬が早く体に行き渡るのを祈った。
やがて、薬が体に行き渡ると、俺は安心して、眠りに落ちた。
目を開けると、真っ白い世界と逆さになった黒い山が2つあった。
「・・・黒い山?”W”?」俺はそう呟いた。
「ん!?目が覚めた?」女性の声がして、黒い山の上に淡い水色の髪が見えた。
俺は一瞬で意識が覚醒して、仰向けから身体を反転し、その女性の前に正座した。
「”パラーヤ”さん!」俺は正座しながら、女性の名を呼んだ。
”パラーヤ”さん、俺が異世界<アーシタ>で出会った、初恋の女性、初めての女性だった。
「久しぶりだね、タケル君。」俺を<モクバースの街>から、送り出した時と同じ笑顔で言った。
半年前に俺を、<モクバースの街>から送り出した時と同じ白いブラウスと黒いチョッキ、水色のスカートと腰用エプロンに茶色い皮靴を履いて、ペタン座りをしていた。どうやら俺は、膝枕をして貰っていたらしい。
「お久しぶりです、”パラーヤ”さん!」
俺は<モクバースの街>を出発する前夜の事を思い出し、正座のまま物凄く緊張していた。
「元気にしてた?」笑顔で、”パラーヤ”さんが質問を続けた。
「・・・はい、元気です。」俺は、そう答えた。
「・・・嘘ね、タケル君は嘘を言っている。タケル君、また1人で悩みを抱えているんじゃないの?」
少し、ムッとして”パラーヤ”さんが言った。
「・・・・・・」俺は無言だった。
「前にも言ったでしょう、1人で悩んでいないで誰かに相談しなさいって。私に今、相談しなさい!」
”パラーヤ”さんは両膝立になり、正座して膝の上にある俺の両の掌を、”パラーヤ”さんの両の掌が持ち上げて繋いだ。
「・・・塩谷と真下と平本が、相変わらず全然戦ってくれません。俺としては、”グレミー”様や”プルーツ“さんの様に、魔法で援護や回復して貰いたいのに全然戦ってくれません。」
俺は俯きながら、”パラーヤ“さんに言った。
「・・・ふう、あの3人は相変わらずなのか。タケル君も大変ね。王様には相談したの?」
ため息をつきながら、”パラーヤ”さんが言った。
「王様は駄目です。城に行くと、途中から王様や大臣、そして貴族達が俺の事をあからさまに馬鹿にして
来ます。塩谷の嘘の情報を鵜呑みして、戦闘では魔法が使えずに足手まとい、そのくせ金遣いが荒く、
パーティー内では足並みを乱す存在として、白い目で見られます。いくら反論しても、誰も信じてくれ
ません。城の歓迎パーティーに行くのも嫌です。」
俺は俯いたまま、”パラーヤ”さんに言った。
「そんな人達は無視しなさい。どちらが本当の事を言っているかも分からない馬鹿な人達の事は無視しなさい。それでもタケル君が気になるなら、タケル君が助けた人達の笑顔を思い出しなさい。その笑顔は、困っていた人をタケル君が実力で笑顔に変えたもの。タケル君が足手まといじゃないと言う証拠なの。自信を持って良いんだよ、タケル君。」
繋いだ両手を上下に振りながら、”パラーヤ”さんが言ってくれた。
「・・・でも、俺は悔しいです。俺が1人で血塗れになって戦って、アイツ等は全く戦わないのに、城では、俺が全く戦わなくて、アイツ等が戦っている事になっている。それで城の皆が俺を嫌っている。俺はそんな
雰囲気が死ぬほど嫌なんです!」
”パラーヤ”さんと繋いでいる両手が滲みだした。俺は少し泣いていた。
「・・・タケル君、前にも言ったけど”勇者”とは、”勇気ある者”の事なの。”勇者”とは困難に立ち向かえる人、口先だけの人は”勇者”ではないわ。口先だけの人間に騙される人達の言う事なんか気にしちゃダメ!困っている人達を見捨てずに、助けている自分を誇りに思いなさい。貴方は、私が認めた”勇者”なんだから。」
”パラーヤ”さんは、そう言って微笑んだ。
「!!・・・ありがとうございます。」俺は、”パラーヤ”さんが認めてくれた事が、本当に嬉しかった。
「・・・まだ、何か悩みがあるわね?」”パラーヤ”さんが、言って来た。
「・・・エルフの里。」俺は、そう呟いた。
「・・・エルフの里が、何?」”パラーヤ”さんが言った。
「<シャングリーの街>の人間が、<イーフリット>の血液の怪我を治す薬を足元を見て、かなりの高額に
したんです。その結果、薬が買えなくて亡くなったエルフの戦士が居るんです。”プルール”さんと”プルーツ”さんのお父さんの様に!自分で<イーフリット>の血液の怪我をしてみて分かりました。あれは地獄です。
俺の想像以上の痛みと苦しみでした。エルフの戦士達はずっと痛みと苦しみに耐えてきた、中には力尽きた
戦士もいた。無念だったと思う、それを見守る事しか出来なかった家族も無念だったと思う。
<シャングリーの街>の人間が、適正価格で売っていれば、命が懸っているのだから安く売ってくれたら、
あの地獄から解放されたのに!」俺は、声を荒げていた。
「・・・・・」”パラーヤ”さんは、無言だった。
「エルフの里の者の恨みや憎しみの視線の意味が、自分で<イーフリット>の血液の怪我をしてみて分かり
ました。<シャングリーの街>の人間の”欲”の為に、大切な人がずっと痛みと苦しみに耐える事になって
しまって、本当に人間を恨み、憎んでいる事を。俺は”プルール”さんと”プルーツ”さん、それに”グレミー”様に会わす顔がありません。罪滅ぼしの為に<イーフリット>と戦いましたが、全然足りません、エルフの里の者は、絶対に許してくれません。俺はもう、どうしたら良いか分かりません!!」
俺は、泣きながら”パラーヤ”さんに言った。
”パラーヤ”さんは繋いだ両の掌を放し、俺の後頭部に回して自分の”Dの双丘”に俺の顔を押し当てた。
そして、右の掌で俺の頭を撫で始めた。
「タケル君は、<シャングリーの街>の人間とは違う。困っていたエルフの里を助けた”勇者”だよ。
感謝する者は居ても、タケル君を恨んだり憎んだりしている者は居ないから安心して。私が保証するよ。」
俺の頭を撫でながら、”パラーヤ”さんが優しく言った。
俺は”パラーヤ”さんの胸で号泣した。<モクバースの街>を出発する前夜も、”パラーヤ”さんに悩みを
言って、”パラーヤ”さんの胸で号泣していたのを覚えている。
「落ち着いた?」俺が泣き止むのを待って、俺の頭を撫でながら”パラーヤ”さんが言った。
「はい、お騒がせしてスイマセン。」
俺は、”パラーヤ”さんの胸に顔を押し当て、背中に両腕を回したまま答えた。
「ふふふ、タケル君は、私の胸が大好きだね。」俺の頭を撫でながら”パラーヤ”さんが言った。
「・・・はい、俺は”パラーヤ”さんの胸が大好きです。」俺はそう答えた。
「ふふふ、ありがとう。」笑いながら、俺の頭を撫でながら”パラーヤ”さんが言った。
「”パラーヤ”さん、1つだけ聞いても良いですか?」俺は、”パラーヤ”さんに聞いた。
「ん~、何かな?」俺の頭を撫でながら”パラーヤ”さんが答えた。
「貴方は、誰です?」俺は、”パラーヤ”さんに言った。
「・・・えっと、”パラーヤ”なんだけど。」俺の頭を撫でる手を止めて、”パラーヤ”さんが言った。
「”パラーヤ”さん並みに優しくて、”パラーヤ”さん並みに俺の事を心配してくれて、甘えさせてくれた貴方の
本当の名前と姿が知りたいです。ちゃんとお礼を言いたいです。」
俺は”パラーヤ”さんから身体を離し、正座で待機した。
「えっと、私は本当に”パラーヤ”なんだけど。」
右手の人差し指で、右の頬を掻きながら”パラーヤ”さんが言う。
「その右の頬を掻く癖、俺の記憶を見て知りましたね。」俺は、”パラーヤ”さんに言った。
「えっと、言っている意味が分からないんだけど。」目を細めて、”パラーヤ”さんが言った。
「先程、”パラーヤ”さんなら絶対に言わない台詞を言ったので、別人だと気づきました。」
俺は、”パラーヤ”さんに言った。
「・・・どんな台詞?」”パラーヤ”さんが、聞いて来た。
「”タケル君は、私の胸が大好きだね”です。」俺は答えた。
「・・・私の胸は嫌いなの?」”パラーヤ”さんが、聞いて来た。
「いや、物凄く”パラーヤ”さんの胸は大好きです!!」俺は、力強く即答した。
「・・・じゃあ、何で?」”パラーヤ”さんが再び、聞いて来た。
「”パラーヤ”さんは、俺の心の弱さを知っています。”タケル君は、私の胸が大好きだね”なんて言ったら、俺が恥ずかしくて硬直する事を知っているので、絶対に言いません。”パラーヤ”さんなら、微笑みながら俺の
頭を撫でてくれています。」俺は答えた。
「・・・・・」”パラーヤ”さんは、無言だった。
「それに、2つ目の相談の時、”エルフの里”と言った時に、一瞬だけど”パラーヤ”さんの気配が消えて、別人の気配がしたので、何かおかしいと思ったんです。」俺は、続けて答えた。
「・・・・・」”パラーヤ”さんは、まだ無言だった。
「俺は”パラーヤ”さん以来、こんなに優しくして貰った事はありませんでした。どうか、お礼を直接言いたい
ので、本当の名前と姿を教えて下さい。」俺は、正座から土下座状態になった。
「タケル君は、意外に鋭いんだね。」”パラーヤ”さんの元気な声ではなく、涼やかな女性の声がした。
俺が土下座状態から顔を上げると、”パラーヤ”さんの姿は無く、ペタン座りをした全裸のエルフの女性が居た。
「え!?あ!?え!?」目の前のエルフの女性が、全裸だった事に俺は動揺した。
ペタン座りをしていたので、長い金髪が地面に着いていた。白い肌に蒼い目をして、”Cの胸の双丘”の持ち主。見た目は、25か26歳位だと思う。
「ふふふ、タケル君は、女性の胸が大好きだね。」
”Cの胸の双丘”を注視していた俺に、エルフの女性が言った。
「スイマセン!」思わずエルフの女性の、”Cの胸の双丘”を注視していた事を謝罪した。
「私の名前は、”ディードリー”。エルフの里で”御神木”と言われている木になったエルフです。」
”ディードリー”さんが、自己紹介した。
「えっと、”ディードリー”さんは何で、俺に優しくしてくれるんですか?俺は人間ですよ。」
俺は、”ディードリー”さんに聞いた。
「タケル君が私と一緒で、物凄く淋しがり屋で頑固だから助けたの。」
少し淋しそうに、”ディードリー”さんが言った。
「私はね、人間の男性を好きになったエルフなの。好きになった男性は、騎士”パーソン”。私は”パーソン”が
好きで好きで堪らなくて、エルフの森の掟を破って、駆け落ちして”パーソン”と夫婦になったの。そして、
娘の”ディーリット”も生まれて幸せだった。でも、人間とエルフでは寿命が違った。
”パーソン”は50年位で、ハーフエルフの娘の”ディーリット”も300年位で、私より先に寿命で亡くなってしまった。」”ディードリー”さんが、悲しそうに言った。
「私は2人のお墓の横でずっと泣いていた。エルフの森の仲間が私を見つけ出して、エルフの森に帰ろうと
言ってくれたけど、私は丁寧に断った。私は2人のお墓から離れたくなかったから。
私は2人のお墓の横でずっと泣き続けていた。そして、私の心は壊れてしまった。心が壊れた私が思った事は、2人とずっと一緒に居たい。そう心が壊れても思っていた。そして、私は1本の木になった。私は2人のお墓を飲み込むほどの巨木に変化していた。そして、周りの木々を吸収して、今の御神木サイズまで巨大化した。私は巨大化した後に、私の魔力で周りの木々も巨大化させてた。エルフが住める位にして、この地に
エルフを住ませようとしたの。そして出来たのがエルフの里。」
”ディードリー”さんが、少し笑いながら言った。
「数年前に<イーフリット>が来て、エルフの里は壊滅状態になってしまって、そんな困っている時に、
タケル君が来た。タケル君が、”グレミー“君と”プルーツ”ちゃんと共に戦ってくれたお蔭で、<イーフリット>を倒す事が出来た。。その恩人のタケル君が、”心”と”身体”が死にかけていたので、生きる気力を見出して貰う為に、記憶を見せて貰ったの。そうしたら、”パラーヤ”さんだけがタケル君を元気にすることが分かって、
”パラーヤ”さんの姿で現れたの。」
”ディードリー”さんが、優しい表情で言った。
「えっと、心配かけてすいません。俺はそんなに危険な状態だったのですか?」
俺は、”ディードリー”さんに聞いてみた。
「”心”が危篤状態だったわよ。特に、エルフの里に対する罪悪感が強すぎて”心”が死にかけていたわよ。」
”ディードリー”さんが、困った様に言った。
「タケル君、”パラーヤ”さんが以前に言った様に、誰かに悩みを相談したり、女性に甘えたりした?」
”ディードリー”さんが、聞いて来た。
俺は首を横に振った。
「タケル君が助けた人達の中に、タケル君を甘えさせてくれる女性はいなかったの?」
”ディードリー”さんが再び、聞いて来た。
俺は再び、首を横に振った。
「もしかして、”パラーヤ”さん以外の女性の前で大泣きするのが恥ずかしい?」
少し呆れた感じで、”ディードリー”さんが聞いて来た。
俺は恥ずかしそうに、首を縦に振った。
「なるほど、まったくタケル君は、しょうがない子だね。」
”ディードリー”さんが少し笑いながら、両膝立をして両の掌で俺の頬を軽く挟み、それから両の掌で俺の両目を目隠しした。
「”ディードリー”さん?」意味が分からなかったので、”ディードリー”さんに問いかけてみる。
俺の問いかけに答える様に、両の掌での俺の両目の目隠しが外された。
そこに”ディードリー”さんの姿は無く、両膝立をした全裸の”パラーヤ”さんが居た。
淡い水色の髪を両サイドでツインテールにしていて、白い肌に蒼い目の持ち主の”パラーヤ”さん。
”Dの胸の双丘”の持ち主で、<モクバースの街>を出発する前夜に、俺に男の自信を持たせてくれた
”パラーヤ”さん。
「どう?これなら、タケル君も甘えられるでしょ?」笑いながら、”パラーヤ”さんが言った。
”パラーヤ”さんの両の掌が、正座状態で膝に置かれている俺の左の掌を取り、
”パラーヤ”さんの”Dの胸の双丘”の右側に押し当てられた。
柔らかい、物凄く柔らかくて温かい。無意識のうちに左手の指が動き、左の指が”Dの胸の双丘”の右側に
ゆっくり沈んだ。
例えるなら、少し硬めのプリンが、ぱんぱんに入った人肌の温度の風船を掴んだ感じ。指が沈む・指が埋まると表現したくなる柔らかさだった。
「どう?柔らかい?タケル君。」クスクス笑いながら、”パラーヤ”さんが言った。
俺は無言で何度も頷いた。左指を動かしながら、左手首をゆっくり右回転させていく、それに伴い”Dの胸の双丘”の右側は、色々な形に変化した。半年前と同じ光景があった。
「どう?気持ち良い?タケル君。生きていれば何度でも、女性に甘えられるよ。」
そう言うと、”パラーヤ”さんの両の掌が、”Dの胸の双丘”の右側を注視している俺の顔に近づき、俺の頬を
軽く挟み、”Dの胸の双丘”の左側へと導いた。
”Dの胸の双丘”の左側の頂上には、淡い桜色の蕾があった。これも半年前と同じ光景だ。
「どうしたの?タケル君の記憶と同じだと思うのだけれど。甘えないの?私とタケル君しか居ないよ。」
優しく微笑みながら、”パラーヤ”さんが言った。
俺は右腕を”パラーヤ”さんの背中に回し、”Dの胸の双丘”の左側に甘えさせて貰った。
「タケル君、たった1人で戦うのは、本当に辛くて苦しいと思う。でも、頑張った人には、神様がちゃんと
ご褒美を用意してくれるから、頑張って生きてみよう。タケル君は本当に”心”と”身体”が危険な状態なの、
”グレミー“君が薬を用意して”身体”を治しても、”心”が死んでしまったら、タケル君は死んでしまう。生きる事を諦めたら、もう女性に甘えられないよ。”プルール”ちゃんと”プルーツ”ちゃんが甘えさせてくれる可能性
だってあるんだよ。だから頑張って生きよう、タケル君。」
”Dの胸の双丘”の左側に甘えさせて貰って赤子状態の俺の頭を、”パラーヤ”さんは優しく抱きしめて言った。
俺は徐々に心地よい眠気に包まれていった。そして、絶対に魔王”ジュドー”を倒して、”パラーヤ”さんに大人のご褒美を貰うと決意し、深い眠りに落ちた。




