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帰還したら平行世界(べつせかい)だった  作者: ネコバーンナックル!
34/45

現在、炎上中!

「来たか!」エルフの王”グレミー”は、報告を受けて玉座から立ち上がった。


「タケル殿!<イーフリット>が帰ったら、あなたも<シャングリーの街>へ帰りなさい。」

エルフの王”グレミー”は、決意をした顔で俺に言った。


「・・・接近戦で、<イーフリット>の炎を防ぐ方法は無いんですか?」

俺は、エルフの王”グレミー”に聞いた。


「これは、エルフの里の問題で、人間のあなたには関係ありません。<シャングリーの街>へ帰りなさい。」エルフの王”グレミー”が答えた。


「これは俺の自己満足ですから、気にしないで下さい。。もう一度聞きます、接近戦で、<イーフリット>の炎を防ぐ方法は無いんですか?」俺は再び、エルフの王”グレミー”に聞いた。


「・・・2度目の戦闘から、耐火の護符アミュレットのペンダントを装備して戦っていました。ただ、<イーフリット>の炎が強すぎて、戦いの途中で耐火の護符アミュレットのペンダントが砕けてしまって、戦士達は大火傷おおやけどを負って

しまい、戦闘後にその大火傷おおやけどに苦しみました。」エルフの王”グレミー”は、悔しそうに言った。


「その耐火の護符アミュレットのペンダントは、今は何個残っているんですか?」

俺は、エルフの王”グレミー”に聞いた。


「・・・5個残っています。ですが、それを聞いてどうするんですか、タケル殿。」

エルフの王”グレミー”が答えた。


「”殿どの”は止めて下さい。戦闘中に気が散る。”タケル”と呼んで下さい。俺が接近戦、”グレミー”様と

”プルーツ”さんが魔法で援護だから、俺が全部装備していも良いでしょう?」

俺は、そう提案した。


「こちらも、もう一度聞きます。何で、君は関係のないエルフの里の為に戦ってくれるのですか?」

”グレミー”様が、聞いて来た。


「俺の”心”を救ってくれた人との約束なんですよ。俺はその人に、認めてもらいたいだけなんです。」

俺は、素直に答えた。


「・・・今はその人に、感謝しかありませんね。”プルール”は、タケル君に耐火の護符アミュレットのペンダントを

持って来て下さい!」”グレミー”さまは、”プルール”さんに命じた。


”プルール”さんは、玉座の後ろにある部屋に入って行き、見事な彫刻がされている、四角い盆を持ってきた。


「どうぞ、この耐火の護符アミュレットのペンダントを、お持ちください。」

”プルール”さんがそう言い、俺に四角い盆を差し出したが、少し表情は暗かった。


自分の父親が死んだ原因の理由の1つである人間に、貴重なアイテムを渡すのは複雑な気持ちであろう。


「・・・スイマセン、ありがたく使わせてもらいます。」俺はそう言って、5個のペンダントを首にけた。


「お前!そのペンダントを持ち逃げしたら、私が後ろから魔法で撃ち抜くからな!」

”プルーツ”さんが、俺をにらみながら言った。


「”プルーツ”!めなさい、タケル君は、これから一緒に戦おうとする仲間ですよ!!」

”グレミー”様が、”プルーツ”さんを注意した。


「タケル君、<イーフリット>と戦う時に、気を付ける事を言います。<イーフリット>の体の周りの炎も

危険ですが、1番危険なのは<イーフリット>の血液です。普通の怪我なら、<ポーション>で治りますが、

<イーフリット>の血液の怪我は逆に悪化します。特に、目は入ったら失明するので気を付けて下さい。」

”グレミー”様が、俺に言った。


「何で、<ポーション>使うと、怪我が悪化するんですか?」俺は、”グレミー”様に聞いた。


「<ポーション>は、使った本人の身体の細胞を活性化させて、怪我を治療します。ですが、理屈は

分かりませんが、<イーフリット>の血液の怪我も活性化されて、怪我が広がってしまって大変な事になるのです。」”グレミー”様が、答えてくれた。


「タケル君、<イーフリット>に接近戦を挑むという事は、<イーフリット>の返り血を浴びるという事だ。これは、タケル君が思っている以上の激痛だが、それでもタケル君は接近戦を挑むのかな。」

”グレミー”様が、俺に聞いて来た。


「・・・治せるんですよね?<ポーション>は駄目でも、治す薬が存在するなら、俺は戦えます。」

俺は、少し間を置いたが答えた。


「・・・何で、アンタはエルフの為に戦うの?同じ人間の罪滅ぼし?お金?それともエルフの秘宝?」

”プルーツ”さんが、聞いて来た。


「”プルーツ”さん、俺はね”勇者”になりたいんだ。”勇者”とは、”勇気ある者”なんだ。だから、”戦士”の俺も、

困っている人達を助け続ければ、”勇者”になれると、あの人は言ってくれた。だから、俺は困っている人は

助ける。誰であろうと関係無く。」俺は、そう答えた。


「その人って、タケルの”心”を救ってくれた人?」”プルーツ”さんが、聞いて来た。


「そう、俺の”心”を救ってくれた、大恩人だよ。その人が居なければ、俺は絶対に、ここまで来れなかった。」

俺は、そう答えた。


「・・・・・」”プルーツ”さんは、無言だった。


「さて!<イーフリット>を迎え撃つ為、外周のとりでまで行きますよ!!」

”グレミー”様が、力強く俺達に言った。


”ディードリー”の木を出ると、”グレミー”様の風魔法で俺達の体は、地上から30センチほど浮き上がり、

ホバー状態になった。


「急ぎますので、このまま行きます!!」”グレミー”様がそう言うと、俺達はすべる様に外周のとりでまで

移動し始めた。


エルフの里のエルフ達が、地上をすべる様に移動する俺達を見ている。不安な表情で見ている者、俺に憎しみの視線を送る者、様々であった。


「あまり気にしないで下さい、タケル君。君は、<シャングリーの街>の人間では無い。君が気にむ事は

何も無い。それよりも、<イーフリット>の戦いに集中して下さい。本当に、血液による怪我が大変な事に

なりますから。」”グレミー”様が言った。


”ディードリー”の木から、”転移魔法”の切り株まで帰って来て、さらに奥の方に進むと、木製のとりでがあった。


俺達は、とりでの下まで来ると、”グレミー”様の風魔法で、10メートルの高さまで上昇して、とりでの上に

着地した。戦闘の為、”グレミー”様が中央、右に俺、左に”プルーツ”さんが陣取った。


とりでの上には、”ビチャール”達と10人位の若いエルフが居た。全員不安な表情をしていた。


木製のとりでの中央から、半径30メートルほど、広場がある。多分、最初の戦いで木が邪魔をして、上手く移動出来なかったり、魔法が使えなかったので、開拓したのだと思われる。そして、このとりでの材料にしたので

あろう。


「・・・!!”グレミー”様、<イーフリット>が来ました!!」

”ビチャール”が、<イーフリット>を指差しながら言う。


広場の奥の森から、オレンジ色の炎をまとった<イーフリット>が出て来た。

<イーフリット>の体高は、3メートル位の炎の狼である。

子供の頃、”どんどん焼き”で見た、内部からどんどん溢れ出てくる力強い炎に似ていた。


「今日は、私と”プルーツ”とタケル君で、<イーフリット>に引導を渡します!!激しい戦いになるでしょう、なので、みんなは、とりでやエルフの森が延焼しない様に、水魔法で消火して下さい。今回は絶対に、<イーフリット>との戦闘に参加しない様に!戦いに巻き込まれても、助ける事は出来ません!!」”グレミー”様が、

”ビチャール”達と10人位の若いエルフに言った。


<イーフリット>が、とりでにゆっくり近づき、15メートルほどで停まった。そして、顔を上げて、

とりでの上の”グレミー”様を見つけると、大きく吠えた。


”ヴォン!”と吠えると、目の前にバランスボール位の火球が発生し、”グレミー”様めがけて飛んで行った。


”グレミー”様は左手を前に出した。何か魔法を使うらしかった。


ドゴオオン!


俺達の2メートル位手前で、爆発が起こった。どうやら、無詠唱で魔法障壁を展開していたらしい。

爆発による熱も、爆風も感じられなかった。かなり高度の魔法障壁を無詠唱で展開できる”グレミー”様の実力を見せてもらった。


”ヴォン!ヴォン!ヴォン!ヴォン!ヴォン!”と5回連続で<イーフリット>が吠えた。


<イーフリット>の前に、5個のバランスボール位の火球が発生し、一気に”グレミー”様に撃ち出された。


ドゴゴゴゴゴオオオオオオン!!


5発の火球が魔法障壁で爆発したが、やはり、爆発による熱も、爆風も感じられなかった。


「無駄ですよ、<イーフリット>。あなたの攻撃を私が1人で、どれだけ防いでいたんだと思っているのですか。」冷静な声で、”グレミー”様が言った。


無駄だと分かったのか、<イーフリット>は走り出して、”グレミー”様の真下のとりでの城壁に”ドカン!”と、

体の右側面で体当たりして来た。体当たりされた箇所かしょに、炎が燃え移った。


「水魔法で、消火をお願いします!」”グレミー”様が、指示を出した。


<イーフリット>は、城壁から3メートル位離れると、こちらに振り返り座った。


ウオオオオオオオオオン!!


<イーフリット>が俺達を挑発するように、上を向いて”遠吠え”をした。


「あいつ!私達を馬鹿にしている!!」”プルーツ”さんが、挑発に乗って怒った。


「落ち着きなさい”プルーツ”!挑発に乗ってはいけません!タケル君もですよ!」

”グレミー”様が、俺達に言った。


「了解です。」俺は答えた。


<イーフリット>は立ち上がり、15メートル位まで戻り、もう1度同じ個所に体当たりをした。そして、城壁から3メートル位離れると、こちらに振り返り座り、また上を向いて”遠吠え”をした。


ウオオオオオオオオオオオオオオオン!!


「くそ!さっきよりも長く”遠吠え”している!!馬鹿にして!!」”プルーツ”さんが、激怒した。


「”プルーツ”、怒りを抑えなさい。怒っていては、連携が上手くいきません!タケル君も、タケル君?」

”グレミー”様が再び、俺達に言った。


俺は”グレミー”様に答えられなかった。何故なら俺はその時、とりでの上から飛び降りて、<イーフリット>の首の左側に、<ファストールの剣>を思いっきり叩き込んで、落下速度を殺していたから。


ザシュウウウ! タン! ザシュ! ザン!ザン!


俺は両手で握った<ファストールの剣>に、肉を切り裂くかなりの衝撃を感じながら、無事に地面に着地し、<イーフリット>の血が落ちて来る前に、前方へ飛んだ。


前方には、首を切り裂かれた激痛で、後ろ脚立ちをした<イーフリット>の右前脚があったので、

真向斬りで斬り落とし、さらに前方に飛ぶ。<イーフリット>の右側に出ると、反転して、返り血が付かない様に、<イーフリット>の右脇に一文字斬りし、右大腿みぎおおもも逆袈裟斬ぎゃくけさきりを流れるような動きで繰り出し、

<イーフリット>の身体を切り裂いた。


俺は、<イーフリット>の左側も切り裂こうと、<イーフリット>の尻尾の下をダッシュで移動していたが、突然、強烈な殺気を感じて、<ロ○クマン>の様に、スライディングをした。一瞬遅れて、俺の頭の上を、

オレンジ色の丸太が通り過ぎた。<イーフリット>の左後ろ脚だった。


スライディングをしていなければ、確実に俺の腹に<イーフリット>の後ろ蹴りが決まり、内臓破裂をしていただろう。俺は左手を地面に着き、スライディングにブレーキをける。次の瞬間、足元に再び強烈な殺気を感じて、両脚と左手を使って、かえるの様に前方に緊急ジャンプした。


俺の居た場所を、直径2メートル、高さ3メートルの火柱が発生していた。俺は飛び受け身をして、急いで

立ち上がり、大きくバックステップを5回して、<イーフリット>と距離を取った。


俺は<イーフリット>は、吠えると攻撃魔法をしてくると思っていたので、吠えずに攻撃魔法が使えたのは、内心かなり恐怖していた。


「タケル君!大丈夫ですか!!」”グレミー”様が、心配してくれた。


「何、勝手に攻撃しているんだ!タケル!!」”プルーツ”さんが、俺に怒鳴った。


少しは、俺の心配してくれよ”プルーツ”さん、と思いながら、<ファストールの剣>を<イーフリット>に

向けて、正眼に構える。


「大丈夫です!時間を稼ぐので、2人は魔法の援護をお願いします!」俺は、2人に言った。


「分かりました!”プルーツ”!!」”グレミー”様が、答えた。”プルーツ”さんはうなずいた。


右前脚を俺に斬り落とされた<イーフリット>が、”ヒョコヒョコ”と左前脚と使って俺の方に体を向けて来た。さっきよりも、体をおおう炎の勢いが増している。どうやら、かなり怒っているらしい。


”ヴォン!ヴォン!ヴォン!ヴォン!ヴォン!”と5回連続で<イーフリット>が吠えたが、1回1回を単発で

撃ち出して来た。火球をまとめて撃ち出したら、俺も避けられなかったが、単発なら余裕でかわせられる。

よっぽど頭に血が上っているのであろう。


「<いかづちの神、ラン・ティース!、いかづちいばらを我が敵に、いかづちやいばを我が敵に、神罰を与えたまえ!

”イグール・ラン・ティース・マブダ・チーサ”!!>」右手の杖を上に、左手を下に構えて、

”プルーツ”さんが呪文を唱えた。


<イーフリット>の上空に黒い雲が発生し、雷鳴がとどろき始める。<イーフリット>が上を見上げた瞬間、

足元から無数のいばらの様に、雷が<イーフリット>を捕らえて感電させた。


”ギャウウウウ!!”と感電している<イーフリット>に、上空から強烈ないなづまが落ちる。


”ギャウン!!”と悲鳴を上げて、感電して痙攣けいれんした<イーフリット>が地面にへたり込んだ。


「<風の王、ウイーン・ダーム!汝の偉大なる翼のはばたきを我が元に、螺旋らせんを描いて、我が敵に!!

”ユーミ・ガーウ・メヨ・フーウ・サーン”!!>」左手を突き出し、”グレミー”様が呪文を唱えた。


”グレミー”様の突き出した左手に、ビーチボール位の太さの竜巻が4本発生して、俺が切り裂いた

<イーフリット>の右脇と右大腿みぎおおももに、竜巻が2本ずつ傷口に突っ込み、傷口をえぐり広げた。


ギャウ!ギャウ!ギャウ!ギャウ!!


傷口をえぐられて、悲鳴を上げて悶絶している<イーフリット>にダッシュで接近し、へたり込んでいる

<イーフリット>の左前脚を袈裟斬けさぎりで斬り飛ばした。


ギャウウウウ!!一際ひときわ大きい悲鳴を<イーフリット>が上げた。そして、怒り狂った<イーフリット>が

血塗れの右前脚で反撃して来た。


俺はその攻撃に対して、左逆袈裟斬ひだりぎゃくけさぎりで応戦した。・・・!?右前脚?


「目!!」”グレミー”様の焦った声が聞こえた。


俺は、左逆袈裟斬ひだりぎゃくけさぎり中の左手を<ファストールの剣>から放し、手の甲と前腕で目と顔をガードした。

右手の<ファストールの剣>から、水を斬った様な感触があった。


次の瞬間、左の手の甲と前腕部、頭の頭頂部と右のほほと右の鎖骨に、熱湯をかけられた様な激痛に襲われた。血塗れの右前脚だと思っていたら、斬り飛ばされた右前脚を血液で作って攻撃して来たのだ。

俺は完全に<イーフリット>にだまされた。


「あああああああああ!!」俺は、激痛過ぎて動けなくなった。


<イーフリット>も両前足を失って動けなかったが、また斬り飛ばされた両前脚を血液で作ろうとしていた。


「”プルーツ”!援護を!!」そう言って、”グレミー”様が呪文を唱え始めた。


「<海の王、セ・レース!清廉せいれんなる水を我が元に、聖なる流れを持つ水を我が元に!!”アース・

コット・コクーテ・ドン・マイーン”!!>」俺の方に左手を向けて、”グレミー”様が呪文を唱えた。


激痛で動けない俺の横に、直径3メートル位の水の球が出現した。


「タケル君!その水の球に入って!早く!!」”グレミー”様が、焦りながら言った。


俺は倒れる様に、水の球に入った。水の球に入ると、球の中で水流が発生していて、<イーフリット>の血液を俺の身体から、洗い流そうとしていた。


「調子に乗るからだ!!」”プルーツ”さんは怒りながら、杖の頭に左手をえながら、呪文を唱え始めた。


「<いかづちの神、ラン・ティース!、いかづちくさびを我が敵に、いかづちの鎖を我が敵に、神罰を与えたまえ!

”ラン・ティース・エフティオ・ソージュ・ウ・メーナ”!!>」呪文を唱え終わると、”プルーツ”さんは

両腕を上げた。


再び<イーフリット>の上空に黒い雲が発生し、10本の片手剣位の雷のやいばが<イーフリット>の身体に

突き刺さる。


「<”プリ・メー・ラ”>!!」追加の呪文を唱えながら、”プルーツ”さんが両腕を振り下ろす。


ピシャアアアアアアアアアン!!!


10本の片手剣位の雷のやいば目掛めがけて、極太のいかづちが<イーフリット>を打ちえ続ける。


俺が水の球から血液を流し終わって出ると、血液で両脚を作ろうとしていた、<イーフリット>が両脚を作るのを中断して、のたうちまわっていた。


「大丈夫ですか!?タケル君!!」心配そうに、”グレミー”様が言って来た。


「・・・大丈夫です!!」俺は、嘘を言った。本当は、左腕と頭が物凄く痛かった。


<イーフリット>を見ると、”プルーツ”さんの魔法で瀕死状態ひんしじょうたいの<イーフリット>の後ろ姿が見えたので、俺は<イーフリット>の右側面にダッシュで移動し、右大腿みぎおおももを怒りを込めて一文字斬りで斬り落とした。


ギャウン!!悲鳴を上げた<イーフリット>だったが、即座に炎の尻尾で反撃して来た。攻撃が避けられないと判断した俺は、<ファストールの剣>の刀身を下に向け、刀身の腹に左腕の前腕部を付けて防御態勢を

取った。


ビシイ!!ギュルルルルル!!


<ファストールの剣>の刀身で、丸太で叩かれた様な衝撃の<イーフリット>の炎の尻尾の攻撃を受け切ったが、炎の尻尾が伸びて俺に巻き付いた。


「な!!」そう俺が叫んだ瞬間、炎の尻尾は俺をかなり高く持ち上げて、火力を増して巨大な火の玉になり、俺は全身が炎上した。


パリン!パリン!パリン!と耐火の護符アミュレットのペンダントが、俺の胸元で3個も一気に砕けた。


「タケルの馬鹿!!」俺を罵倒ばとうしながら、”プルーツ”さんが呪文を唱え始めた。


”グレミー”様も、少し遅れて呪文を唱え始めた。


「<いかづちの神、ラン・ティース!、いかづちやいばを我に、全てを斬り裂くいかづちつるぎを我に、稲妻招来いなずましょうらい!!

”ラン・ティース・ヒ・カールガ・スキナー・デス”!!>」右手の杖を上に向けて、”プルーツ”さんが

呪文を唱えた。


呪文を唱え終わると、”プルーツ”さんの右手の杖の先端に雷が落ちた。それは上空の黒い雲とつながった、、いかづちやいばだった。


”ブルーツ”さんが、とりでの上から<イーフリット>の炎の尻尾の付け根を狙って、いかづちやいばを振り下ろすと、

あっさり炎の尻尾は切断された。


切断された炎の尻尾と落下する俺の下に、先ほどの水の球が出現して、俺を焼き尽くそうとした炎は

消火された。俺は無事に水の球と共に地上に降りた。


「・・・よくもだましたな。それも、2度も!!」俺は、堪忍袋かんにんぶくろが切れた。


<ファストールの剣>を握り直し、<イーフリット>の左側面にダッシュで向かう。”アドレナリン”が大量に

出ているのか、走っても痛みを感じなくなっていた。<イーフリット>腹を目掛めがけて、下を向きながら

袈裟斬けさぎりをする。


ギャウン!!と<イーフリット>が悲鳴を上げ、俺にも返り血が大量にかったが構わない。


<イーフリット>の腹の傷を目掛めがけて、両手で<ファストールの剣>を突き刺す。<イーフリット>が激しく悲鳴を上げた。再び、俺に返り血が大量にかったが構わない。両手を放し、<ファストールの剣>の柄頭つかがしらに喧嘩キックを叩き込む。<イーフリット>が激しく悶絶した。


<イーフリット>の悶絶が収まるのを待って、俺は<ファストールの剣>のつかを下から思いっ切り蹴り

上げた。<ファストールの剣>の剣先が地面にめり込むのを足に感じた。


<イーフリット>が激しい悲鳴と悶絶をしているのを尻目しりめに、俺は、抜け落ちた<ファストールの剣>を右手で拾い上げた。


「左!顔面!ガード!!」悲鳴に近い声で、”プルーツ”さんが叫んだ。


俺は咄嗟とっさに、左手を握りこぶしにして耳をガードし、左前腕部で左顔面をガードした。

次の瞬間、俺の左肩と二の腕に衝撃が走り、爆発して右側に吹き飛ばされた。


ドコオオン!!ズザザザザザザ!!


俺は地面にうつ伏せに倒れていた。立ち上がろうと両手を使おうとしたが、左腕が動かない。どうやら、左肩と左の二の腕を爆発でやられたらしい。<ファストールの剣>を使って、何とか立ち上がると

パリン!と耐火の護符アミュレットのペンダントが、俺の胸元で砕けた。残りは1個になった。


「大丈夫か!タケル!!」”プルーツ”さんが、俺に聞いて来た。


「・・・・・」俺は無言だった。


俺は<ファストールの剣>を地面に着き刺し、右手で動かなくなった左手をつかむ。そのまま、<ファストールの兜>の右のこめかみ部分の兜の一部を左手でつかませた。左腕で顔面をガードして、左目だけ出ている状態になった。


俺は右手で、地面に刺さった<ファストールの剣>を引き抜き、大きく息を吸った。


「この!!くそオオカミがああああああ!!!!」俺は左目を血走らせ、<イーフリット>に突進した。


悶絶して、動けなくなっている<イーフリット>の左側の首の切り傷、俺が一番最初に付けた傷に、弾丸のように身体ごと<ファストールの剣>を突き立てた。下を向いていたが、頭頂部と右腕に返り血が大量にかったが、構わなかった。


ギャウウウウウウ!!!悲鳴を上げながら、<イーフリット>が俺をにらんでいるのが分かった。


不意に体が浮いたと思ったら、地面に叩き付けられた。何度も何度も地面に叩き付けられたが、俺は右手の

<ファストールの剣>を放さなかった。地面に叩き付けるたびに、<ファストールの剣>が<イーフリット>に深く刺さって行くのを感じたからだ。俺は両目を閉じ、口には笑みが浮かんでいた。


ボキャ!!俺の右耳の近くで、変な音がしたので見てみると、俺の右肘が変な方向に曲がっていた。

次の瞬間、俺の身体は空中に投げ出されて、地面に落ちた。そして、パリン!と最後の耐火の護符アミュレット

ペンダントが、俺の胸元で砕けた。


「・・・マズイな、これは。」俺はうつ伏せで倒れていた。体が動かないので、顔を動かすと、

<イーフリット>と目が合った。


「・・・ヤバイな、これは。」少し諦め気味に、俺は言った。<イーフリット>が俺に向かって、火球を撃ち出そうとしているのが見えたからだ。


「<風の王、ウイーン・ダーム!汝の偉大なる翼の旋風せんぷうを我が元に、死を呼ぶ疾風しっぷうを我が敵に!!

”フェーリ・オーガス・キナン・ダヨーネ・フーウ・サーン”!!>」両手を広げ、”グレミー”様が呪文を

唱えた。


”グレミー”様の前に、2メートル位の三日月形の風のやいばが5枚発生した。三日月形の風のやいばは高速回転し

始めて、<イーフリット>の右の腹に突撃して行った。


バシュ!バシュ!バシュ!バシュ!バスン!


<イーフリット>の右の腹を、高速回転した風のやいばが次々に斬り裂いて行った。

<イーフリット>は、激痛で痙攣けいれんをして動けなくなっていて、悲鳴すら上げられない状態だった。


最後の5枚目の風のやいばが、左の腹の傷とつながり<イーフリット>は、胴体から真っ二つになった。


ギャウ!それが、<イーフリット>の最後の叫び声だった。


俺は、<イーフリット>の最後の叫び声を聞き、<イーフリット>の体が黒くなってボロボロと崩れ去るのを見届けて、俺は安心して気絶した。



























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