現在、エルフ達に失望され中!
俺と”葵”さんは、<(株)藤原モンスターバスター>へ向けて帰還していたが、”葵”さんの運転が上手いのか、”若本”社長に<虎屋>の”どら焼き”を御馳走して貰って満腹になった所為か、俺は眠くなってしまった。
「・・・”葵”さん、すいませんが少し疲れたので、会社まで寝ても良いですか?」俺は、”葵”さんに聞いた。
「良いですよ、会社に着いたら起こしますので、休んで下さい。」”葵”さんは、笑って答えてくれた。
「それでは、おやすみなさい。」そう言って、俺は両腕を組んで眠りに入った。
組んだ両腕が、”ピリピリ”と痛む。戦闘服から、白いジャージに着替えた時に見たが、両腕が<バニング・
ドック>の炎に包まれた所為で、真っ赤になっていた。まあ、エルフの森で戦った<イーフリット>の炎に
比べたら、全然弱い炎だったが。
俺は、エルフの王”グレミー”様とエルフの美人姉妹の”プルール”さんと”プルーツ”さんを思い出していた。
俺達、”勇者パーティー”は<シャングリーの街>の手前5kmの所で、フードを被った3人組に声を
掛けられた。”大”、”中”、”小”の3人組だった。
「何だ?お前らは。」”勇者”の塩谷が、面倒臭そうに3人組に言った。
「”勇者”様!我らの里を助けてくれませんか?凶悪なモンスターに狙われ続けているのです。」
”中”のフードの男が、塩谷に懇願した。
「金!一体いくら払うんだ?お前達。」塩谷は、いきなり報酬の話を切り出した。
「えっと、少しですが、謝礼は払えると思います。」”中”のフードの男が、答えた。
「はあ!?魔王討伐を中断して、戦うのに謝礼が少し?お前ら、世の中舐めているのか?」
塩谷が、呆れた顔と声で言った。
「・・・・・」フードを蚊ぶった3人組は、困って無言になってしまった。
「・・・話くらい聞いてやれよ、お前は”勇者”だろ。」俺は、フードの男達に助け舟を出した。
「うるせえなあ!リーダーは俺だぞ!!リーダーの俺に指図してくんじゃねえよ!!」
塩谷が発狂しながら、怒鳴って来た。
「リーダーの役目ってのは、国から貰った支援金や、俺に支給されるはずだった、武器や防具を売り払った
お金で、”高級娼館”で路銀が尽きるまで、姐様達と遊ぶ事か?」
俺は冷めた目で、塩谷を見ながら言った。
「・・・くう・・・」図星を突かれたのか、言い返せない塩谷。
「それに、お前には元の世界には、彼女さんが居るんだろ?それは物凄い裏切り行為なんじゃないか?」
俺は冷めた目で、塩谷に追撃の言葉を放った。
「う、うるせえなあ!!テメエには、関係ねえだろが!!」塩谷が再び発狂しながら、怒鳴って来た。
「・・・はあ、だったら、”勇者パーティー名”<金の耳飾り>って、変更してくれないか?なんか・・・恰好悪い。なんか、もう少し恰好良い名前にしないか?」
俺は溜息をつき、”勇者パーティー名”の変更を提案した。
俺達の”勇者パーティー名”<金の耳飾り>の由来は、塩谷の彼女が誕生日プレゼントに送った、左耳に付けているイヤリングからである。このイヤリングがあるので、塩谷は異世界<アーシタ>で、1度も兜を被った事が無い。
「真下!平本!!お前達は、<金の耳飾り>ってパーティー名をどう思う?」
塩谷が、”魔法使い”の真下と”僧侶”の平本に聞いた。
「僕は、良いと思いますよ、<金の耳飾り>って名前。」平本の腰に、左手を回しつつ真下が言った。
「私も、良いと思いま~す。」真下の左肩に右頬を寄せながら、平本が言った。
「そう言う事で、3対1でお前の意見は却下だ!!」2人の答えを聞き、笑顔で塩谷が言って来た。
大事な事を決める時は、いつも多数決になる。真下と平本は、塩谷からお金を分けて貰っているので、塩谷を裏切る事は無い。その結果、いつも俺の意見は却下される。
「・・・はあ、じゃあ、パーティー名は良いとして、せめて人助けはしろよ。支援金の中には、こんな
トラブルを解決する代金も入っているんだからさ。そしてお前、そんな弱くて、魔王の首を斬り落とせるの?自分の世界に帰った時、<アズナブル>に就職できるの?」俺は、塩谷に言った。
「うるせえなあ!俺は忙しいんだよ!!それに、”三種の神器”があれば、魔王なんて余裕だろ!”三種の神器”を手土産に、俺は<アズナブル>に就職するさ!」塩谷は、得意そうに言った。
「・・・はあ、お前馬鹿だろ?魔王はラスボスだぜ。”三種の神器”があっても苦戦するのは分かっている
だろう?それに、”三種の神器”は<アーシタ>の人々の物だから、お前は持って帰れないよ。」
おれは、正論を言った。
「・・・・・」言い返す事が出来ずに、塩谷が俺を無言で睨んでいる。
睨んでいる塩谷と馬鹿を見ている目をしている俺を見て、フードを被った3人組が困っていた。
「・・・はあ、もういいよ。お前ら3人<シャングリーの街>へ行っていろ。俺はこの3人の話を
聞くから。」俺は、フードを被った3人組が困っているのを察して、塩谷達を先に行かせる事にした。
塩谷は怒りながら、真下と平本はイチャつきながら、<シャングリーの街>へ向かって行った。多分、
<シャングリーの街>に着くまで、俺の悪口祭りが開催されている事だろう。
「スイマセン、要件は俺が聞きます。・・・あなた達、普通の人じゃありませんよね?普通の人より、
魔力が大きい。」俺は、3人を見ながら言った。
フードを被った3人組は、お互いを見合って頷き、フードを取った。
俺が予想していた通り、3人とも耳の尖ったエルフだった。3人共、俺より年下に見えた。
俺は異世界<アーシタ>で、初めて人間以外の種族に出会って、少し興奮していた。
「あの、”勇者”様を先に行かせて良いのですか?俺達、”勇者”様にモンスターを討伐して欲しいのですが。」
鼻の頭に、”そばかす”がある”中”のエルフが、俺に言って来た。
「スイマセン、”勇者”塩谷は、あなた達3人の中1人と戦っても、絶対に負ける弱さの持ち主です。残りの2人と協力しても、絶対に負けます。」俺は断言した。
「!!!」3人のエルフ達は絶句した。まあ、当然だろう。
「嘘だ!”勇者”が弱いはずがない!!」早口で、甲高い声の”小”エルフが叫んだ。
「・・・普通、そうですよね。俺もそうなって欲しいのですが、行く先々の”高級娼館”で路銀が尽きるまで、姐様達と遊んでいるので、本当に弱いんです。」
俺は、自分で言っていて悲しくなった。
「あの、あなた達、”勇者パーティー”はどうやって、この<シャングリーの街>付近まで来れたんですか?
この付近のモンスターだって、かなり強いし。」おとなしそうな、”大”エルフが聞いて来た。
「最初の城<ホワイトベス城>から、ずっと俺1人で戦って来ました。」俺は、素直に答えた。
「あの、あなたは、”魔法剣士”なのですか?」再び、”大”エルフが聞いて来た。
「いえ、俺は魔法が使えないので、ただの”戦士”です。」俺は再び、素直に答えた。
エルフ達は相談し、時折、俺を”チラチラ”見て来た。そして頷き、俺の方に向き直った。
「俺は、”ビチャール”って言います。名前を聞いて良いですか?」”中”のエルフ、”ビチャール”が少し怒った様に名乗った。
「俺の名前は、本田 猛。”タケル”って呼んで下さい。」俺はエルフの態度が変わった事に、
戸惑いつつ名乗った。
「・・・俺は、”モドン”。」”小”のエルフ、”モドン”が少し拗ねた様に名乗った。
「僕は、”イノー”です。よろしく、タケルさん。」”大”のエルフ、”イノー”さんが、まともな挨拶を
してくれて、俺は少し安心した。
「あの!タケルさん。僕達の里に来て、エルフの王に会ってくれませんか?僕達だけでは、判断できないので、お願いします!!」”イノー”さんが、まともにお願いして来た。残り2人は、不貞腐れていた。
「・・・まあ、いいですけど。」俺は一応、エルフの里に行く事を了承した。
「!!ありがとうございます!!」”イノー”さんが、俺に礼を言った。残り2人は、不貞腐れていた。
「それじゃあ、俺達に付いて来て下さい、タケルさん。」そう言って、リーダーなのか、”ビチャール”が街道
から森に向かって歩き出した。
”ビチャール”の後に付いて森に行き、森の奥に行くと巨大な1本の木の前に着いた。
”ビチャール”が、巨大な木の幹に右手を向ける。
「<”ヤー・マノッテ・ノガーコ”>!」”ビチャール”が呪文を唱えると、木の幹が左右に分かれて、巨大な六芒星の魔法陣が見えた。
「さあ!全員、魔法陣の中に入ってくれ。」”ビチャール”が、俺達を魔法陣に入る様に促した。
”ヒカリゴケ”が木の幹の内部に生えている所為か、木の幹が閉じられても中は明るかった。
”ビチャール”が、懐から、透明で中に六芒星の入った掌サイズの宝玉を取り出した。
「<”ヤー・テ・ヤルーゼ”>!!」”ビチャール”が呪文を唱えると、足元の巨大な魔法陣が光り出して、
俺達は光に包まれた。
光が収まると、俺達は巨大な切り株の上に居た。足元には、巨大な六芒星の魔法陣が見えた。どうやら森の中の巨大な木と、この切り株は”転移魔法”で繋がっているらしい。
俺は周りを見てみた。森の中の巨大な木と同じ位の巨大な木が大量にあり、それがエルフの家になっていた。奥の方に、桁違いに大きい木があるのに、俺は気付いた。
「あれは、”ディードリー”の木ですよ。エルフの里の”御神木”であり、歴代エルフの王の住処でもあります。現エルフ王”グレミー”様は、あそこにいらっしゃいます。」
”イノー”さんが、俺に教えてくれた。
俺達は、”ディードリー”の木を目指して歩き出したが、俺は妙な視線を感じていた。
歩きながら、エルフの里の住民を見ると、女性と子供達だけだった。そして、子供からは物珍しさの視線が、女性からは憎しみの視線が感じられた。
「・・・あの、”イノー”さん。女性から俺に対して、憎しみの視線が感じられるんですけど?」
俺は、”イノー”さんに聞いてみた。
「・・・スイマセン、タケルさんが悪い訳じゃ無いので、気にしないで下さい。」
”イノー”さんが、済まなさそうに俺に言った。
俺は、エルフ達の憎しみの視線を受けつつ、”ディードリー”の木に到着した。
”ディードリー”の木には、扉や窓が付いていた。どうやら、内部が宮殿になっているらしい。
「タケルさん、少しここで待っていてくれますか?俺達、”グレミー”様に到着を知らせて来ますので。」
”ビチャール”はそう言って、3人で”ディードリー”の木に入って行ってしまった。
俺は、”ディードリー”の木の前で待っていると、エルフの小さな女の子が俺を見ているのに気付いた。
俺は、エルフの小さな女の子に手を振ると、女の子も手を振って来た。だが、女の子の母親と思われる
女性エルフが、女の子を抱きかかえて逃げて行ってしまった。
「・・・もう、帰りたい。」精神面が弱い俺は、本気で帰りたくなって来ていた。
俺が意気消沈していると、”ビチャール”達が帰って来て、”ディードリー”の木に招いた。
”ディードリー”の木の内部は、やはり宮殿の様になっていた。
廊下を通っていると、”ビチャール”達と同じ位の歳のエルフと何人かとすれ違った。やはり、俺を睨んでいる。
エルフはとても長寿なので、見た目で年齢は分からなかったが、”ビチャール”達と同様に、俺より年下に
見えて、気配からして戦闘経験はあまり無さそうだった。
「”イノー”さん、戦闘経験のある大人のエルフを見かけないのだけれど、大人のエルフはどこにいるの?」
俺は、”イノー”さんに聞いた。
「・・・それは、”グレミー”様が答えるので、僕には何とも。」困った様に、”イノー”さんが言った。
廊下を進むと、大きな扉に到着した。どうやら、この先に大広間があり、エルフの王がいるらしい。
大きな扉を開けて大広間に入ると、左右には年老いたエルフ達が並んでいて、中央奥には玉座があり、
エルフの王が座っていた。
俺は”ビチャール”達と一緒に、エルフの王の前に進んで行った。
エルフの王”グレミー”は、長い金髪をして、白いローブに身を包み、細身の体格をしていた。そして、かなりの魔力の持ち主だと、すぐに理解した。
「よく来てくれた、”勇者パーティー”の”戦士”、タケル殿。」エルフの王”グレミー”は、歓迎の言葉を
口にしたが、顔は落胆していた。
「・・・嫌なら帰りますけど。」俺は、即答した。
「!!!!!!」大広間が凍りついた。
「”イノー”さん、俺は<シャングリーの街>に行くので、”転移魔法”を起動して下さい。」
俺は、”イノー”さんの方を向き、そう言った。
「ちょっと待ちたまえ!」エルフの王”グレミー”が、焦って言った。
「嫌です。」俺は再び、即答した。
「エルフの王に無礼だぞ!人間!!」玉座の横に立っていた、エルフの女性が怒鳴りつけて来た。
エルフの女性は、白い肌・金髪・蒼い目をして身長は170センチ位、ストレートのミディアムヘアーで
丸目・”Cの胸の双丘”の持ち主。見た目は、20か21歳位だと思う。
軽戦士なのか、白い上着・白いズボン・皮のベルト・木の皮の籠手・木の皮の脛当て・木の皮の胸当てを
装備していた。
「落ち着きなさい!”プルーツ”!」”ブルーツ”と呼ばれた女性と、瓜二つな女性が言った。
そのエルフの女性は、白い肌・金髪・蒼い目をして身長は170センチ位、腰まであるストレートヘアーで
丸目・”Cの胸の双丘”の持ち主。見た目は”プルーツ”と同じ、20か21歳位だと思う。
こちらの女性エルフは、白いローブを装備していた。顔がそっくりなのは、双子だからだろうか?
「こんな時まで、良い子ぶるな!”プルール”!!」”プルーツ”が、”プルール”に怒鳴った。
「私は、そんなつもりじゃない。」”プルール”が、少し怯えて言った。
「はいはい!”プルール”は、良い子で華奢な女の子だもんね!」
”プルーツ”が、怒ったように言った。
「・・・・・」”プルール”は、下を向いて黙ってしまった。
「・・・もう、帰っていい?」俺は、”プルーツ”と”プルール”に聞いた。
「待ちたまえ!」”プルーツ”と”プルール”ではなく、エルフの王”グレミー”が言った。
「嫌です。あなた達エルフは、俺を必要としていません。それどころか、初対面の俺に対して、恨みや憎しみをぶつけて来ます。なので、俺は帰ります。」俺は、そう答えた。
「・・・スイマセン、エルフの里は<シャングリーの街>の人間に、酷い裏切りを受けてしまって、人間不信になっているんです。」悲しそうに、”プルール”が言った。
「私と”プルール”の父さんは、<シャングリーの街>の人間の”欲”に殺されたんだ。」
怒りを抑えながら、”プルーツ”が言った。
「今から二年前です。エルフの里に<イーフリット>という、炎に包まれた巨大な狼のモンスターが
現れたのは。」エルフの王”グレミー”が、過去の出来事を話しだした。
「私とエルフの里の勇敢な戦士は、<イーフリット>と戦い、討伐は出来ませんでしたが、撃退は
出来ました。ですが、問題が起こりました。<イーフリット>の炎で出来た怪我は、我らエルフの
作った薬では、治せませんでした。しかたなく、人間の作った高価な薬を購入して、何とか怪我を
治しました。」エルフの王”グレミー”が、話を続ける。
「<イーフリット>は、数か月後に再び、エルフの里を襲撃してきました。私達も再び戦いましたが、
前回よりも<イーフリット>は強くなっていました。なんとか迎撃は出来ましたが、前回よりも
多くの怪我人を出してしまいました。私はお金を集めて、薬を購入しようとしましたが、足元を
見られて値段を1.5倍にされてしまいました。」エルフの王”グレミー”が、悔しそうに言う。
「私は人間に、薬の値段を下げてくれるように頼みましたが、却下されました。途方に暮れた私は、
苦渋の決断をしました。エルフの森にしか生えない、”霊薬”の原料になる植物を売る事にしました。
エルフの里の勇敢な戦士の命の方が、私には大切でしたからね。」
エルフの王”グレミー”が、悲しそうに言う。
「なんとか、全員分の薬のお金を集めて、その時は全員の命を救う事が出来ました。ですが、また数か月後に、<イーフリット>がエルフの里を襲撃してきました。やはり前回よりも<イーフリット>は強くなっていました。私達も戦いましたが、多くの怪我人を出してしまい、やもなく撤退して我々は敗北しました。私は、エルフの里に風の魔法防御壁を作り、<イーフリット>の攻撃に耐え続けました。やがて、<イーフリット>は攻撃が効かない事が分かり、エルフの里を後にしました。」
エルフの王”グレミー”が、疲れたそうに言う。
「私は再び、エルフの森にしか生えない、”霊薬”の原料になる植物を売りに行きましたが、今度からは
半額の値段でしか買い取らないと言われました。私は途方に暮れて何も売らずに、エルフの里に戻りました。私はエルフの里の怪我をした戦士達に、この事を話しました。すると、”もう何も売らなくて良い、何も
買わなくて良い”と戦士達が言ってくれました。」
エルフの王”グレミー”が、泣きながら言った。
「・・・この意味が分かりますか。”負担になる自分達を切り捨てろ”という意味です。そして、一人また一人と力尽きて行きました。その中には、”プルール”と”プルーツ”の父親もいました。今でも苦しんでいる戦士も
います。私は本当に、無力で愚かな王です。死んでいった戦士達に顔向け出来ない。」
エルフの王”グレミー”が、下を向き頭を抱えながら言った。
「エルフの里で、<イーフリット>にダメージを与える事で出来る者は、私と父親譲りの雷魔法を得意と
する、”プルーツ”の2人だけになってしまいました。ですから、<イーフリット>が襲撃して来たら、
私が風の魔法防御壁を作り、<イーフリット>が諦めるまで、ただひたすら耐え続けました。そんな時、
異世界から”勇者”達が召喚されたと聞きました。私達は喜びました、”勇者パーティー”と協力して、戦士達の
無念を晴らせると思いました。だが、来てくれたのは、魔法を使えない”戦士”のタケル殿でした。接近戦では、駄目なんです。エルフの戦士達の様に死んでしまう。」
そう言うと、エルフの王”グレミー”は黙ってしまった。
”プルール”と”プルーツ”の姉妹を見ると、”プルーツ”は後ろを向いて、小さく震えていた。”プルール”はその場にしゃがみ込み、泣いていた。
酷過ぎる。お金の大切さは、異世界<アーシタ>に来て嫌というほど思い知らされた。だが、大切な人の命が懸っている者に対して、命を盾にした、この値上げ交渉は酷過ぎる。
”プルーツ”が、人間の”欲”に父親を殺されたと言ったが、正にその通りだった。返す言葉もない。
”プルール”と”プルーツ”は、苦しみながら死んでいった父親を見ていたのだろう。
”プルーツ”が俺に対して、怒りをぶつけるのも理解し納得した。
エルフの里の者が人間の俺に対して、怒りや憎しみの視線をぶつけてくるのも当然だと思った。
もしかしたら、外で手を振った女の子の父親も、人間の”欲”で犠牲になったかも知れない。
母親エルフが、女の子を抱えて逃げたのは、”欲”まみれの人間に近づけさせたくなかったかも知れない。
そう思うと、罪悪感で胸が押し潰されそうになる。
「・・・スイマセン、<シャングリーの街>の人間がした事は、絶対に許される事ではありませんが、大変申し訳ありませんでした。」俺は、エルフの王”グレミー”・”プルール”・”プルーツ”に頭を下げた。
「・・・・・」沈黙が大広間を支配した。
しばらくして、慌ただしい足音と、勢い良く大広間の扉を開ける音が響いた。
「”グレミー”様!<イーフリット>が、エルフの里に接近して来ています!!」
大広間に、慌てて飛び込んで来たエルフが報告して来た。




